ひとり山歩き473 : 湯西川の安らぎの森から県境尾根経由で枯木山に登り、白滝沢右岸を周回してきました。気温が高く軟雪に苦労しましたが、好天に恵まれ展望を楽しむことができました。
枯木山 (県境尾根〜白滝沢右岸尾根周回)
2012年4月10日(火) 晴れ
1 行程   写真
ルートマップ(GPS)   ウォッちず : 枯木山  安らぎの森  県境への尾根  県境尾根 白滝沢右岸尾根
自宅(1:00) = 安らぎの森(3:00/3:15) − もちづけ橋(3:45/3:55) − ワカン装着(4:50/5:05) − 標高点1253(5:55) − 標高点1549(県境)(7:20/7:30) − 標高点1692(県境)(9:45/10:00) − 枯木山分岐(県境)(10:30) − 枯木山(11:00/11:20) − 標高点1692(12:15/12:30) − アサズマ左岸尾根分岐(13:25/13:30) − 三角点1467(13:55) − 標高点1220(15:20) − 標高点(1077) − 標高点948(16:50) − 安らぎの森(17:35/17:45) − 自宅(20:00)

2 自宅 − 湯西川・やすらぎの森
 栃木/福島県境から少しばかり福島側の枯木山には、残雪期の06年3月25日に二回目の挑戦で到達した。無雪期には07年5月14日に三回目の挑戦で山頂に到達した。その後、雪山歩きの経験を増すに連れて、県境尾根経由で枯木山に登ってみたいと思うようになった。そろそろ雪も締まって県境の雪庇歩きも容易なったものと推測して、チャレンジしてみることにした。コースは無雪時(標高点1692付近にごく僅か残雪あり)の07年5月14日と同じく、往路は安らぎの森・もちづけ橋・県境1549・県境1692・枯木山とし、復路は県境1692・白滝沢右岸尾根・もちづけ橋・安らぎの森とした。直近の二日ほどは降雨と気温上昇で雪が緩んでいるのが心配、気温が下がってくれれば雪が締まって歩きやすいのだが、天気予報では期待はできない。他に計画があるので、気温低下を待ってはいられない。無理筋でも一縷の望みを託して実行することにした。
 零時に起きると室温は20度で今シーズンで一番高い。がっかりするも、計画通りスタート。スタート時に車の温度計は16度、湯西川に向かうに連れて温度は下がっても安らぎの森駐車場に到着した時には6度。

3 往路(もちづけ橋−県境尾根・枯木山)  期待に反して雪は締まっていなかった  県境尾根は好展望の連続
ゴア雨着のズボンだけ着用して、もちづけ橋に向かう。すぐ先のゲート手前からは除雪してなく、以降は残雪歩きとなる。ズボズボと踝まで足が沈む。この時点で今日は苦しい一日になると覚悟する。もちづけ橋を渡った地点で尾根に取り付くことにする。取付き部は急斜面で雪はついていない。アイゼンとピッケルを利用して、この急斜面を登ることにした。地肌はゆるく、潅木がすくないのでアイゼンとピッケルは効果的であった。20分強奮闘すると、雪島が現れ勾配が幾分緩やかになり一息つく。前日の雨と気温が高いせいで雪に締まりはなく踝ないし向う脛まで足が沈む。尾根に取次いてちょうど一時間の標高1030地点で我慢できずにワカンを装着した。合わせてヘッデンを格納する。
 ワカン装着後は楽になったが、場所によっては脹脛までの沈みとなる。風が吹き出したので、汗をかいた身体が冷えないようにゴア上着を着用した。この尾根は過去二回無雪期に歩いたときは、藪でブナの印象が残っていなかった。今日は藪は完全に雪の下で歩くには快適。標高点1253付近の平坦部にはブナに照葉樹が混ざったが、すぐにブナだけになった。展望はなく、左手に復路で辿る尾根筋が見えるだけ。ブナ林は相変わらず続き、標高1400付近からはアスナロの大木が混ざる。これもすぐに消えて再びブナ林歩きとなる。アスナロが消えると勾配はきつくなり、県境尾根直下では樹木はまばらとなり、吹き溜まりで膝下のラッセルとなる。標高点1549に喘ぎながら登りつめると、素晴らしい展望が待っていた。360度の全展望だが、春霞のせいか遠方はぼやけている。山座同定は後の楽しみにし枯木山(右奥) 1692ピーク(左の三角錐  (1549ピークから)て、所要時間をチェックすると、計画に比べて30分遅れ、無雪期の登りに比べると30分ばかり早かった。その時は同じコース取りで14時間半要したが、軟雪に悪戦したとしても明るいうちには周回できるだろうと判断し、進行方向の尾根筋を観察する。標高点1692への県境尾根、更には県境尾根から枯木山までのルートが見通せる。鞍部付近は雪庇が発達しているのも展望できた。枯木山までは直線で1.5km程度だが、尾根なりに進むと約2.5km。覚悟を決めて前進開始。
 次の1560級ピークへの雪庇登りは急でしかも雪がやわらく、上滑りが生じた。よく言えば慎重な性格、端的に言うと臆病な性格で、雪庇歩きは樹木のないところが歩けず、樹木沿いあるいは樹木部を進むので慣れた人に比べて時間がかかる。次の1620級ピーク目指しての下りはさしたる苦労はなかった。問題は鞍部からの約100メートルの登り返しである。左手の栃木側は切れ落ちていて、無雪期には獣道を藪を掴みながら登ったのだが、今の時期は雪庇幅は狭く、とてもじゃないが樹木のない場所は歩けない。仕方なしに福島側の樹木の中を登ることになる。雪の表面は軟らかく、2、30cmの上滑りが生じてなかなか前進できない。今になって思うと往路での最大の難所だった。たった100メートル登るのに一時間強かかってしまった。相変わらず展望は良いのだが、楽しんでいる余裕はない。
 1620級ピークからは方向を西から南南西に下る。緩やかな下りで、特に厳しい場所はない。鞍部からは尾根幅が広く、ノンビリ歩いていると薄いトレースが目に入った。今までに全然目に入らなかった。ひょっとしたら白滝沢の中尾根を登ってきたのかもしれない。この先もトレースは標高点1692まで続いていた。ここまでに計画よりも1時間半遅れてしまった。でも無雪期の時よりは2時間早い。この先と復路は残雪期に歩いているので、見通しが立つ。心に余裕ができて、エネルギーを補給しながら360度の展望を楽しむ。今日のコースでもっとも展望のよい場所で今までの疲れも吹き飛んでしまいそう。春霞と太陽の位置関係で男鹿山塊、高原山、日光連山等がぼんやりしているのが惜しまれる。ここでワカンを外し、ザックをデポすることにした(原則として、遭難時のことを考えてデポしないことにしているのだが)。
 このピークには復路で辿る南尾根から薄い踏跡は枯木山方面に残っていた。これをたどって下ってゆく。トレースを追っている限りは踝程度の沈みである。外すと脹脛程度の沈みとなる。鞍部からの登りは日当たりがよく表面は緩んでいるが上滑りすることもなく、ピッケルを利用して着実に登ってゆく。問題の枯木分岐直下の急登部は、最初にチャレンジしたときは軽アイゼンとストックで残り10メートルが登り切れずに涙を飲んだ場所(その10日後に、ピッケルとアイゼンでリベンジ)。それ以後に経験を積んだせいか、難所というほどの場所ではなかった。思ったよりも簡単に枯木山分岐に達した。ここからも展望は良い。
 この先は福島県で立派な雪庇が発達しているが、樹木ラインは雪庇先端からかなり左下(西)になっている。雪庇先端部を歩ければ東側の展望が楽しめるのだが、そんな度胸はない。薄いトレースも樹木ラインよりも左手に付いている。これを追っている限りは足の沈みは踝ないし脹脛程度で安心して歩ける。小さなコブを越して鞍部から登り返すと、吹き溜まりでこんもりと膨らんだ見覚えの場所に達した。ここが枯木山山頂で3度目(残雪期2度、無雪期1度)の訪問、もうここに来ることはないだろう。プレートは文字の消えた小さいのが一枚だけで、山部3Dプレートは所定の位置には残っていなかった。山頂からは樹木に邪魔されて西側の展望がない。
枯木山周辺からの展望




4 復路(白滝沢右岸尾根経由)   薄い踏跡をおうことができた  最後の詰めは計画外のルートをたどり失敗
 往路を正確にトレースして県境の枯木山分岐に戻る。気温は更に上昇しているが、特に足の沈みが大きくなってはない。田代山方面への尾根筋を眺めて、急斜面を下る。足元が踝ないし脹脛まで沈むので、滑落の心配はない。鞍部から登り返して標高点1692に戻って、景色を見納める。先刻よりは太陽が南寄りになったせいか、遠方の霞は幾分和らいでいた。展望を楽しみながらエネルギーを補給し、ゴア上着を脱ぎ、ワカンを収納してザックを担ぐ。
 南の急斜面に薄い踏跡をたどって下ってゆく。ダケカンバ林で尾根筋は見通しが利くので、ルーファンの心配がないから適当にトレースを追ったり外したりしながら下ってゆく。足の沈みは脹脛程度だが下りだから特に問題はない。のちのちボクシングのボディブローのようにスタミナを消耗するのはわかっているが、ワカンを装着するのが面倒くさい。県境から100メートルほど下ると勾配はどんどん緩くなって、やがて平坦部歩きとなる。低い二重尾根地点が標高点1502で、ここから少しばかり登り返した小ピークがアサズマ沢左岸尾根分岐で、ここで尾根は南(アサズマ沢左岸)と東(白滝沢右岸)に分かれる。無雪期には白滝沢右岸尾根よりも、平家狩人村付近に下山するアサズマ沢左岸尾根のほうが藪が少なく歩きやすい。 アサズマ沢左岸尾根も雪の付いている時に歩いてみたいが、下山後に、安らぎの森まで数キロメートル舗装道歩くのは容易でなく諦める。
 東へと薄い踏跡を追って下ってゆく。三角点1467を通って東へと進むのだが、栃木側から登る人の大多数はこのルートを通り特に問題とするほどの場所はない。今日に関しては大体は踝ないし脹脛の沈みだが、何度も膝まで踏み抜く。ラッセルと違って突然ズボッとくるから始末が悪い。幸い今の時期は右手に日光連山等を楽しみながら歩ける(言うまでもないが無雪期には藪の中で展望はなし)。標高点西手前の痩せた雪庇は06年3月の頃は雪山歩きの経験が少なく、怖くて渡るのに逡巡したが、経験を積んだ今では、何の変哲もない少しばかり痩せた雪庇という感じで渡る。何本もワイヤーがかかった立木を過ぎると、すぐに標高点1220となる。
 この小ピークで尾根は北東と南東に分かれる。南東尾根をたどれば最終的に仲石橋に下山できる。北東に進めば最終的には安らぎの森に下山できる。どちら側にも薄いトレースは残っていた。今日はもちづけ橋付近に下る計画なので、北東尾根に進む。勾配は緩やかでなかなか高度が下がらない。標高点1220から20分ほど下った標高1170で、トレースは東に方向が変わった。今日はこのまま北東に下り、もちづけ橋付近に下山の計画で無雪期に2度も歩いている。このまま下れば30分もあれば白滝沢林道に下れるだろう。まだ3時40分、時間的には充分余裕があるので、このトレースを追って東尾根に進むことにした。勾配は緩やかな細尾根で歩きづらいということはないが、なかなか高度が下がらないでイライラする。標高点1077を経由し、鞍部まで下ると藪が出始めてトレースが途切れる。尾根筋が明瞭だから全然問題ない。登り返すと標高点948でテーブルとベンチが設置してある。
 テーブルとベンチが設置してあるのだから、何らかの標識があっても良いのだが何もなかった。この先は雪がないのでトレースを追うことはできない。地形図で方向確認して北東尾根を下る。獣道よりはましな踏跡が付いているようだ。ほとん歩く人がいないのか、藪化してしまっている。標高870あたりで尾根筋が二手に分かれる。右側の尾根をたどれば安らぎの森ロッジ方面に続いている。左側の尾根筋はより急だが、駐車場に近いように見たので、こちらを選んだ。急斜面と藪で足元は悪くなる。お得意の藪こぎを楽しみながら下ると、間伐材を土留めにした場所に突き当たってしまった、しかもこのまま下ると白滝沢を渡渉して駐車場に戻らねばならない。地形図をよく確認しなかった不注意を責めてもどうしようもない。どこかに橋があるはずと様子を探ると右手に道標が見えた。雪の残る斜面をトラバースしていってみると、すぐそばに木橋がかかり、これを渡ると無事に駐車場に戻れた。計画通りにもちづき橋付近に下山したのに比べると一時間以上は余分にかかってしまった。
 思ったよりも雪に締まりがなく苦戦した。計画にたいして3時間も余分にかかったが、念願の県境尾根の雪庇歩きができたのはおおきな喜び。
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