ひとり山歩き255 : 山中テント泊で鬼怒沼に隣接する物見山から県境尾根を燕巣山まで歩いてきました。この稜線は栃木県境では有数のネマガリダケとシャクナゲ密藪です。燕巣山からは登山道を辿り、丸沼温泉・湯沢峠経由でスタート地点の女夫渕温泉に戻りました。
女夫渕温泉から物見山(2113)燕巣山(2222)(泊丸沼温泉〜湯沢峠〜女夫渕温泉
2006年9月29日(金)/30日(土) 曇り/晴れ
1 行程
ルートマップ  
9/29 : 自宅(1:05) = 女夫渕温泉(3:25/3:45) − 日光沢温泉(5:30/5:40) − 丸沼分岐(5:55) − オロオソロシ滝展望台(6:35) − 鬼怒沼(8:00/8:15) − 物見山(8:40/8:55) − 2091ピーク(11:00/11:10) − 三角点2098.7ピーク(12:20/12:30) − 2100ピーク(13:35) − 2130ピーク(14:35) − 鞍部(14:45) − 燕巣山(15:30、テント泊)
9/30 : 湯沢峠への尾根トライ(5:50/6:25) − 燕巣山(6:25) − 四郎峠(7:15) − 丸沼温泉(8:15/8:30) − 湯沢峠(10:35/10:45) − 根名草沢渡渉(11:20) − オロオソロシ沢渡渉(12:20) − ヒナタオソロシ滝展望台(12:35/12:40) − 登山道出合(丸沼分岐)(12:50) − 日光沢温泉(13:05) − 女夫渕温泉(14:25/14:40) = 自宅(17:15)

2 自宅 − 女夫渕温泉
 03年11月にナスノガルーダさんと常吉さんが女夫渕温泉から物見山〜燕巣山〜湯沢峠〜女夫渕温泉を一泊で歩かれた。当時は深田久弥の百名山を追っていた自分には、この紀行文をniftyの山フォーラム(正式名は失念)で読んだ時には驚きとともに、心に残るものがあった。その翌年から藪山をやるようになり、登山道のある山歩きよりはルーファンしながら歩く藪山にはまり込んでしまった。藪漕ぎに慣れるにつれて、物見山〜燕巣山間を歩いてみたいとの思いが高まってきた。このルートを歩くには山中泊が必要だが、自分にはその経験も装備もなく実行にいたらなかった。今年になって最低限の装備を整え、最近になってやっと山中泊もできる自信がついた。
 暑くも寒くもない今の時期は、装備と飲料水を最小限に抑えられる絶好のチャンス。二日続きの好天はなかなかやってこない。天気をあまり選んでいると、時期を外してしまう可能性があったので、好天ではないが降水確率の低い29・30日に実行することにした。ツェルト泊で準備していたが、雨の可能性もあったので急遽テント泊用にザックを詰めなおした。飲料水は二日目の後半には得らるが、万一を考えて3.5リットル持参、そのために重量は11kgで日帰りの8kgより3kg重くなってしまった。これだけの荷物を収容できるデイバックはないので、40リットルのアッタクザックを担ぐことになってしまった。重量よりもこのアッタクザックの天蓋が藪漕ぎでは邪魔になるのだがしかたない。
 初日は燕巣山山頂でテント泊するつもり。万一の降雨も考えて自分のスタイルにしたがって、明るくなったら登り始める(日光沢温泉の先)べく、いつものごとく深夜出勤。24時を過ぎたら朝だと思っているので、早出は全然苦痛でない。今もって眼鏡の世話になっていないが、最近は視力は大部弱まり、暗いときの運転は苦痛になってきた。最近はノロノロ運転になり、同じ所に行くにも所要時間が以前に比べ長くかかる。女夫渕温泉の駐車場は三分の一くらいが埋まっていた。ぼちぼち紅葉シーズン到来、ということか。

3 女夫渕温泉 − 物見山  鬼怒沼は草紅葉   物見山は大清水〜尾瀬沼への単なる通り道鬼怒沼の草紅葉
 日光沢温泉までは、鬼怒川沿いの遊歩道を通る方が2・30分は早いが、早朝の沢沿いは熊(この地域にいるかは不明だが)に遭遇する危険がある。ここは安全策をとり暗闇で何度か歩いたスーパ林道を経由する。加仁湯を通過するときには充分明るくなり消灯する。更に10分で日光沢温泉に到着。ニギリメシを食べて、蛇口から流れ出る水をたらふく飲んで、鬼怒沼への登りに備える。
 日光沢温泉から鬼怒沼へは02年8月04年7月に往復で通っているので大体は記憶している。いつもは丸沼分岐で左の橋を見て素通りだが、明日はこの橋を渡って戻ってくるぞ、と気合を入れて登りにかかる。木階段が要所に設置してあるが、前二回の山行では記憶に残っていない。オロオソロシの滝展望台の先、標高1750辺りまではアスナロ、トウヒ等の針葉樹林の急登が続く。普段より3kgの重さが堪えてくる。これで物見山からの藪漕ぎは大丈夫かと心配になる。今度は抉れた沢状の道には岩あり、根っこあり、木道ありで変化しているが、勾配が緩いだけに鬼怒沼に辿りつくまでに時間がかかる。シラビソ林になって何箇所かの木道を歩くと、前方が開けて鬼怒沼の南端に達した。湿原の草は紅葉しているが、ガスで見通しは悪い。中央のベンチで先刻追い抜いた人がひとり休んでいた。すぐに下山するとのこと。多少の言葉を交わして先を急ぐ。
 木道を歩いて鬼怒沼の北端に達すると、大清水から黒岩山方面に至る登山道が通じている。抉れたじめじめした道を西に辿ると、小さな沢を二つ(三つだったかも)を渡る。その先は、明瞭な踏跡を辿て大した苦労もなく物見山山頂に達した。山頂は樹林のなかで展望はなく、登山道を除くと笹に覆われている。山名板は山部さん、栃木の山紀行さん、M大等の数枚が認められる。樹木の一部が紅葉しているのを見ながら、これからの藪漕ぎに備えてエネルギーを補給。

4 物見山 − 燕巣山  ネマガリダケとシャクナゲの密藪   
 物見山山頂の笹薮は膝程度で深くはないが、これから進む尾根筋は見えないので、磁石を南東にあわせて斜面を下り始める。すぐにネマガリダケは胸ないし背丈ほどになるが、下りのため頭は笹から出ていて方向は取りやすい。尾根に乗りそこなうと復帰に手間取るので、磁石を見ながら慎重に下る。5・60メートル下ると方向が南向きになり、どうやら尾根にうまく載れた。尾根筋は平坦になり、緩やかにアップダウンを重ねながら笹薮を漕ぎ、倒木を避けながら進まざるを得な大嵐山と根名草山 (2091Pto2098Pの中間かra)い。下り勾配になると前方に2091ピークを認める。笹が幾分薄くなると鞍部で、赤テープを見つけた。これと同じものは燕巣山までに数箇所で見かけた。何のためにテープをつけるのだろうか。自分のためよりかは他人のため? それとも万一の退却に備える? このような枝尾根のない尾根につけても意味がないように思うのだが、未だに理解できない。尾根の分岐等の要所につけるのなら分かるのだが。鞍部まで65分。笹薮はシャクナゲと針葉樹藪に比べて苦手としないのでまずまずの速度だ。
 鞍部からの登りは笹が幾分薄くなった。倒木は相変わらず多く、シャクナゲも予告編程度に姿を現す。尾根の西(群馬)側には時々鹿道が現れるので利用する。左前方に大嵐山から根名草山が見え隠れするが、山頂部はガスっている。登るにつれて笹薮が断続的に濃くなるが大した苦労もなく、物見山から約2時間で2091ピークに辿りついた。シャクナゲも針葉樹藪もなかったので、予定よりは30分短縮。山頂は低い笹が少々。細長い山頂部からは北東に鬼怒沼の一部と南東に根名草山が認知できる程度。
 2091ピークからの下りは藪が薄いが、シラビソ樹林の中で枝がザックの天蓋に引っかかり、これを振りほどくのが意外に労力を要する。お辞儀をして枝を避けているつもりだが、いつものデイバックと間隔が異なり引っかかるのだ。ヘルメットをかぶって狭い所で仕事をしていると、しばしばヘルメットをぶっつけるのと同じ現象。充分にお辞儀をすればよいのは分かっているが、身体の柔軟性が追いつかなくなったのでどうしようもない。倒木をまたぐのはそれ程の苦労はないが、潜るのが一番シンドイ!! 小さなコブをを越す頃になると、シャクナゲが賑わってきたが、まだ余裕はある。藪よりも倒木の方がこのあたりでは煩わしい。群馬側の斜面が多少色づいているのを確認するだけの余裕はまだ残っている。勾配が緩み三角点ピークが近づくと後方に再び鬼怒沼の南端が見えた。シャクナゲと針葉樹の平坦な尾根を進むと、東側が開けた三角点2098.7ピークに到着。苦手のシャクナゲと針葉樹藪が出だしたので、予定よりは若干の遅れ。このピークの東斜面は崩落しているのか三角点が傾いている。南東に大嵐山〜根名草山が見えるのだが、曇よりしていてカメラ写りが悪い。青空も幾分見えるので、今日一日は天気はもち傾いた三角点そう。
 三角点ピークからはシャクナゲと針葉樹の混合藪の痩せ尾根を下る。鞍部は大嫌いな針葉樹の細木藪でザックが引っかかりイライラが募る。鞍部からの登りも、2100ピークからの下りもシャクナゲ藪が続く。時々は群馬側に鹿道を利用できるが、大した助けにはならない。2100ピークからはシャクナゲ主の灌木密藪で、しかも痩せ尾根ときているから始末が悪い。窪みがあると身体ごともぐってしまうので、足元を探りながらの下り。悪いことにはこの痩せ尾根は岩っぽくて避けるのに難儀する。物見山の下りと、この痩せ尾根の下りが最も梃子摺る。鞍部からの登りはいくぶん藪が緩むが相変わらず倒木は多い。2130ピークが近づくと再び笹薮となる。ここまで来ると燕巣山がすぐ傍に見えるようになる。元気百倍といいたいところだが、シャクナゲと灌木藪がボディーブローのように効いて来て足取りが重くなる。幸い2130ピークからの下りは藪が比較的薄いので助かる。
 燕巣山手前の鞍部は針葉樹林で藪が少なく、幕場に適しているようだ。時間的に余裕があれば、燕巣山山頂に幕を張るよりは適地。ナスノガルーダさんと常吉さんがここにビバークしたのは正解。針葉樹林を暫く登ると、樹木は疎らになり笹が密になり始める。胸程度だが登りと疲労が相まって難儀する。群馬側の樹林の中を登ればもう少し楽だったかもしれないが、笹藪の大海に漂流し始めてしまった。山頂の樹木がすぐ上に見えるのに、笹の中でもがいているだけ。左手には明朝、湯沢峠に下る尾根が明瞭に見えて、このときは楽に下れると思ったのだが・・・  もがきながら見覚えのある燕巣山の山頂に辿りついた。
 付近はガスが立ち込めていて展望は全くなし。何もすることがないので、早めに食事(握り飯とパン)を済ませて、山頂西側の針葉樹の下にテントを張る。アンダーシャツだけを着替えて、16時半にシュラフに潜り込む。ラジオを聴いているうちに眠り込んでしまった。何度も目を覚ますが、すぐに寝込むの繰り返し。夜半に雨がテントにあたる音が聞こえる。ツェルトでなくて正解だった。緊急ビバーク用に購入した150gのダウンシュラフで寒さは感じなかった。テント内の温度は17度程度。荷物軽量化のためにフライシートもシュラフカバーも持参しなかったが快適なテント泊の経験ができた。

5 燕巣山 − 丸沼温泉  ガスで先が見えないことと濡れた笹が滑りやすいので湯沢峠への下りは諦める燕巣山山頂
 雨が止んでいるのを確認して4時半に起床し、アンパンで軽く朝食を摂る。荷物を片付けて最後にテントをたたむと、まだ5時半。明るくはなったが、ガスっていて30メートル先までしか見えない。しかも夜半の雨で笹は露含みの最悪のコンディション。濡れ鼠になるのが嫌で、四郎峠・丸沼峠経由で湯沢峠を越して女夫渕温泉に帰ろうか、と一瞬頭に浮かぶ。ここまで計画通りにやってきて湯沢峠へ直接くだらない手はないと、雨具着用の完全武装で果敢に南東尾根を下ることにした。大木に打ち付けた湯沢峠の小さな標識とリボンの所から、磁石の方向を定めて笹の急斜面を下りだす。数歩進まないうちに濡れた笹で滑り尻餅をつく。歩いているよりも尻餅をついているほうが多い感じ。しかも山頂直下の斜面は広く、尾根筋は全然見えない。このまま下って尾根にうまく載れないと、軌道修正に非常な労力を要する。これだけ笹が濡れていると、その軌道修正で力尽きてしまうかも知れない。物見山〜燕巣山間を歩けただけで充分。今日はこの尾根下りを諦めて、四郎峠経由で丸沼温泉に下ろう、と決めて悪戦苦闘しながら山頂に戻る。
 未練を残しながら、四郎峠へ下る。このルートは一度通ったことがあり、明瞭な道があるので、全然問題ない。鞍部に近づくにつれて瞬間的にガスが切れて、丸沼や白根山を見るようになった。2時間遅く起きれば、ガスも切れて計画通りに湯沢峠を目指せたのに、と頭の中でチラつく。普段の習慣で早起きしてしまった。早起きは三文の得、なんてとんでもない嘘、とほざく始末。鞍部から一旦登り返して1891ピークを通過して、下ったところが四郎峠。ここまで来ると青空が見え出す。
 四郎峠からも踏跡は比較的明瞭で、エスケープ用に用意していた地形図のコピーは殆ど見る必要がない。ロープを伝って沢を渡って進み、二俣を二回通過し、砂防ダムを四回越すと、踏跡は林道状に広くなる。幅広道を進み沢を渡ると、右後方の三段の砂防ダムを横目に林道を進むと丸沼温泉の駐車場が見えてくる。最後に沢を渡ると、湯沢峠への入口に達する。このルートについては「ひとり山歩き156」を参照願う。四郎岳を眺めながら、後半戦に備え腹ごしらえ。

6 丸沼温泉 − 湯沢峠 − 日光沢温泉 − 女夫渕温泉  丸沼温泉側は踏跡険しい 日光沢側は広く明瞭
 ゲートを潜り広い道を湯沢の左岸を進む。道幅が狭くなると最初の砂防ダム、左岸の踏跡を進み三番目の砂防ダムから踏跡は沢から離れてジグザグに山腹を登ってゆく。所々で「湯沢峠」の古い標識を見かけるし、踏跡も苦労せずに辿れる。特に障害物もなく高度を上げることができる。標高1700を過ぎて尾根の左手をトラバースしていると踏跡周辺は草付になる。やがて「湯沢峠」の小さな標識の設置してある涸れ沢を渡り、尾根を乗り換える。尾根を乗り換えて左手を巻くようになると笹が目に付きだす。それとともに踏跡は薄くなり湯沢峠、消えかけている所もあるが何とか追う事はできる。地形図では尾根上を破線が走っているが、実際は左手をトラバース気味に踏跡はついている。最後にジグザグに登りつめると、突然前方が開けて湯沢峠に達した。出かける前にWebを検索していたら、丸沼温泉から湯沢峠経由で日光沢温泉まで、自転車を乗ったり・押したり・担いだりして通過した侍がいた。世の中にはいろいろな超人がいるものだ。こちらはたった10kg程度の荷物を背負っただけ、ヒイヒイ言っているのに。峠から燕巣山に登るにしても、念仏平方面に登るにしても背丈ほどの笹が密で難儀しそう。でもいつかは今日のリベンジをせねばならないだろう。
 峠から日光沢方面への下りは、丸沼温泉から峠までの踏跡とはことなり、広い明瞭なしかも藪も危険な所もない道が続いている。針葉樹林の中をジグザグに急勾配で35分で根名草沢まで下ってしまった。根名草沢に出合ったら、30メートルほど上流に対岸の道が続くので注意が必要。よく見れば赤リボンが目に付く。
 根名草沢を渡渉すると、6・70メートルの登り返しになる。疲労のたまった脚には堪える。やっと登りつめると、今度はダラダラと平坦地が続き嫌になる。道筋は相変わらず明瞭で迷うことは先ずないであろう。いい加減嫌になると、方向を北から東に変えて急降下となる。鬼怒沼へ行くときに見かけるオロオソロシの滝の上流でオロオソロシ沢を渡渉。再び方向を北に変えて下ってゆくと、ヒナタオソロシの滝展望経由の道標を見て、僅かな歩きで観瀑台に達する。オロオソロシの滝よりは落差は小さいが幅は広いように見える。
 展望台からは再び東に向きを変えて進み、すぐ先でジグザグに下って橋を渡ると、鬼怒沼登山道(丸沼分岐)に無事戻れた。ここからは日光沢温泉・加仁湯・八丁の湯経由で鬼怒川沿いに遊歩道を帰ることにした。今日は土曜日、奥鬼怒温泉群に行く人が多い。20人以上の団体も二組出合った。これほどの人が全員泊まれるのか、と要らぬ心配までする始末。案の定、女夫渕温泉の駐車場は車が溢れていた。 
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