ひとり山歩き55 : 浄土平から西吾妻・一切経縦走路を西吾妻小屋泊まりで往復してきました。縦走路は樹林帯・ヤブ・湿原等変化に富んでいる上、吾妻連峰のほぼ全貌を見渡せました。更には、磐梯山、安達太良山、飯豊連峰、朝日連峰、月山、蔵王山等が処々で楽しめました。
吾妻山縦走(一切経山〜西吾妻山)
2002年7月29(月)−30(火) 晴れ
1 行程
第一日(7/29)
自宅(1:35) − 浄土平(5:10/5:30) − 一切経山(6:40/6:50) − 家形山(7:40) − 烏帽子山(9:00/9:15) − 東大巓(11:10) − 中大巓(12:55/13:20) − 西吾妻山(14:45/14:50) − 西吾妻小屋(15:05/泊)
第二日(7/30)
西吾妻小屋(5:00) − 天狗岩(5:15) − 中大巓(6:15) − 東大巓(7:50/8:00) − 烏帽子山(9:40/9:50) − 家形山(11:15/1125) − 一切教山(12:20/12:45) −浄土平(13:35/14:10) − 自宅(17:20)
2 自宅 − 浄土平  
 今年は、山小屋泊まりの山歩きを前々から考えていた。最初から3000m級の山というのではなめすぎなので、2000m級の吾妻連峰で一切経山から西吾妻山への縦走を選んだ。このコースは浄土平からスタートし弥兵衛平小屋(明月荘)に泊まって、翌日西吾妻山から白布温泉に下るのが普通である。これだと前後に公共の交通手段を使わねばならない。せっかちな私にはとても無理な話。そこで考えたのが、自動車で浄土平まで行き、一切経山から西吾妻山を西吾妻小屋泊まりで往復することである。
 宇都宮ICから東北道に乗り、二本松ICで降りて、R459、R115号とつないで磐梯吾妻スカイラインで浄土平を目指す。順調に土湯温泉付近まで来たが、間違えてR115号を逆走して福島市方向に進んでしまった。ここでの時間ロス30分以上。猪苗代湖方面に戻り、途中から磐梯吾妻スカイラインに乗り継ぐ。広い浄土平の駐車場にはたったの2台しか停まっていなかった。そのうちの1台からは単独行者が一切教山に向かうところであった。
3 浄土平 − 烏帽子山  一切経山の下りで下半身びしょ濡れ 烏帽子山から吾妻連峰の大部一切経山と五色沼 (家形山と一切経山の鞍部から)分が見える
 無人の駐車場からレストハウス横を通り抜けて、登山道に向かう。登山道の入口で登山カードを投入して、いよいよ今日の長い行程が始まる。風は強く、山頂部はガスがかっているが、今日は晴れ渡り暑くなることを覚悟する。登山道に入るとすぐにガレ場で、右手には噴火口が不気味に口をあけている。足元の悪さと強風に周囲の景色を楽しむ状況にない。黙々と足元に気をつけて登るだけ。一切教山頂直下で先行した単独行者が下山してきた。これからどこへ行くのだろうか。
 一切経山頂は東京ドームの屋根のような広がりのガレ場で、何もない。山頂からは360度見渡せるが、強風のため落ち着いて景色を楽しむ余裕はない。これから進む方向を確認して、家形山目指して出発する。山頂の北側に進むと、眼下のコバルトブルーの五色沼に感動する。強風と足元に注意しながらガレ場を下る。不安定な姿をさらした大岩群を過ぎると、樹林帯の中に入る。風はなくなるが、足元の悪さと露を含んだ笹に悩まされる。こんなに早く下半身がびしょ濡れになるとは思ってもいなかった。鞍部は右横に五色沼を見ながら通過する。やっと笹が無くなったと思いきや、家形山への登りでまたまた露の洗礼を受ける。家形山の山頂はどのあたりか分り難い。高湯温泉からの道を右に合わせ、ガレ場を登りきったあたりを家形山の山頂通過とする。
 五色温泉への道を右に見送って、北向から西向に方向を転換する。このあたりからオオシラビソ林の緩やかな泥濘道を歩くことになる。ガイドブックに泥濘道と書いてあったが、先週の苗場山に比べたら泥濘道というのが失礼なくらいだ。雨が降るとぬかるのかもしれないが。堀田林道分岐を過ぎると、3人が泥濘道の踏み石を整備していた。この先はずっと踏み石を敷設してありますとのことであった。確かに処々に踏み石が敷かれていた。石は余り汚れておらず、未だ馴染んでいないので最近整備されたものと思われる。今日歩いている限りでは、踏み石が必要と思われるようなところは見当たらなかったが・・・
 兵子分岐を過ぎて、ほんの僅か登ると前方に十数人の学生グループが規律正しく休憩していた。挨拶をしながら通り過ぎたときに、ニセ烏帽子山の標識が見えた。最後尾の学生によると、今日は明月荘から浄土平に抜けるとのことであった。リーダーの出発1分前の声に邪魔してはいけないと先に進む。ニセ烏帽子山から一旦下って登り返すと、烏帽子山に着く。山頂の東側は樹林で覆われているが、西側は完全に開けている。ここからの眺めは絶景である。西前方にこれから進む昭元山、東大巓、中大巓、西吾妻山がくっきりと見える。南西に中吾妻山、南に東吾妻山と吾妻連峰の大部分が見通せるといっても過言ではない。
4 烏帽子山 − 西吾妻山  登り返しに辟易するも、好眺望に救われる吾妻連峰の東部分 (東大巓から)
 昭元山は烏帽子山からすぐ先にある。距離的には近いが、烏帽子山からゴツゴツ岩の中を下って登り返さねばならない。約100mの登り返しだが、岩やブッシュで足場が悪い上、急なので結構てこずる。昭元山の頂きはコメツガ林の中で、辛うじて中吾妻山が見えるだけ。昭元山を一旦下って、次の小さなピークを越すと前方に東大巓が見え出す。このあたりも踏み石で補修されている。やがて、左から谷地平からの道を合わせると東大巓はすぐそこである。この辺にはワタスゲが目に付く。大巓山頂付近に3人組が憩っていた。明月荘の先の立岩から来て、戻るところであった。山頂は樹林の中だが、直下からは今朝から歩いてきた山々が全部見通せた。
 東大巓を巻くようにコメツガ林を10分も下ると、明月荘への分岐を右に見送る。このあたりから木道歩きとなり、弥兵衛平の湿原が広がっている。木道があたかも前方の中大巓までつながっているように錯覚する。弥兵衛平には白、紫、黄色と色々な花が咲いている。残念ながら名前を知らない。後学のため写真に撮っておく。飯豊連峰、朝日連峰、月山、蔵王連峰等が見えるが、先が長いので景色を楽しむ余裕なし。明日の復路に期待しよう。
 弥兵衛平の湿西吾妻山 (中大巓から)原から少し登ると藤十郎である。ピークを巻くように登ると、池塘が多数見かけられる。このあたりをいろは沼というらしい。池塘群を過ぎると、中大巓の人形石に着く。ここからの眺めも素晴らしい。今朝から通って来た峰が全部見える。これから登る西吾妻山も言うまでもないが、蔵王連峰、安達太良山、磐梯山と見える。ここで昼飯を兼ねて休憩をとる。
 今まで通過してきた各峰の標高差は精々100m。登り返しも最大で150mであり、個々に見るとどうということはない。しかし、数が多いのでボデーブローのように段々足に効いて来る。バテバテであったが、エネルギー補給と休憩で疲れもかなり回復する。元気を出して、最後のピークである西吾妻山を目指して出発する。
 中大巓から下りきって木道を歩いていると、前方から6名の年配の女性グループとすれ違う。この先の大凹清水で給水して、岩ゴロの道を登りはじめると、下山者とどんどんすれ違う。梵天岩までの30分の間に約30名とすれ違う。丁度下山のラッシュなのだ。今日は平日、矢張り中高年が断然多い。梵天岩、天狗岩と岩の多いところを相次いで通過するも素通りする。
 もう西吾妻山は目の前、最後の力を振り絞って山頂を目指す。西吾妻山の頂きはコメツガ林の中で、標識があるだけ何も展望はない。吾妻連峰でここが最高峰ということで、登ってくる人が多いのであろうが、ガッカリする人は多いであろう。他の峰からの展望が素晴らしいので救われるが。
 山頂標識だけ撮影して、今晩泊まる西吾妻小屋目指して下る。15分の下りで、西大巓に向かう木道の先に西吾妻小屋があった。二階建てで最高40名くらいは泊まれそう。無人の小屋にどかっと荷物を降ろして、しばし大の字と化す。 
5 西吾妻小屋泊  室温は夜中に17度 シュラフカバーとゴアテックス雨具で快適な一夜を過ごす
 一休みして、水汲みに出かける。西大巓と西吾妻山の鞍部を流れる沢から水を汲むことになる。約20分下ると、水場がある。この先100m登ると西大巓山頂で、景色がよいらしい。登ってみたい気もあるが、とても身体がいうことを聞いてくれない。諦めて水を汲んで小屋に戻る。
 18時頃食事を済ませ、横になってラヂオを楽しんでいたら、いつの間にか寝込んでしまった。夜中に寒くなり目を覚ます。気温は17度に下がっていた。シュラフカバーだけでは肌寒いので、ゴアテックスの雨具を着用してカバーにもぐりこむ。その後は快適に眠れたようで、4時前に目を覚まし、軽く朝食をとって荷造りをする。
6 西吾妻小屋 − 浄土平  往路に比べ復路は楽 景色も充分楽しめた磐梯山 (西吾妻小屋から)
 復路は山の上からのスタートであるのと、途中の道筋を知っているので、心に余裕がる。昨夜はグッスリ眠れたので疲れも取れた。気のせいか足取りが軽い。
 途中で、往路では目に入らなかった景色がどんどん飛び込んでくる。処々で安達太良山磐梯山、飯豊連峰、朝日連峰、月山、蔵王連峰が目に焼き付くほど眺められた。吾妻連峰の全容もつかめた。これが往復するメリットだ。
 東大巓への登りで、数名の女性を含む20名位の学生グループに出会う。すれ違うと各人が元気に挨拶してくれる。とても気持ちが良かった。昨夜は明月荘に泊まったのであろうか。
 西大巓を下ったところに、家形山まで工事中の看板を見かけた。内容は読まなかったが、泥濘に踏み石を設置するためなのであろう。この縦走路はよく手入れされている。ちょっとやり過ぎという気もしないでないが・・・
 スタート時は足取りも軽かったが、峰を越すたびに疲れが出てきた。特に、昭元山から烏帽吾妻小富士 (一切経山頂から)子山の登りは堪えた。家形山を下り、五色沼から一切経山への登り約150mには参った。山頂直下のガレ場では、疲れで踏ん張りが利かずスリップばかりしていてなかなか進まない。
 やっとの思いで一切経山頂にたどり着くと、2組しか見当たらない。五色沼からは山頂で大勢の人が動いているのが見えたのに、と思いながら荷物を降ろす。吾妻小富士を写真に撮ろうと山頂を南西の方向に進むと、大勢があちこちに座り込んで食事を取っていた。山頂はドーム状になっているので、隅の方で座り込むと中央からは見えなかったのだ。
 昨日は強風のため山頂で景色を楽しむところではなかったが、今日は素晴らしい。吾妻連峰の全容、東北の百名山の数々をまとめて眺望できた。山頂で最も印象に残ったのは、吾妻小富士である。円錐の切断面がなんともいえない。一切経山から内部を覗き込めるような向きになっているのだ。切断面が反対を向いていたら興ざめだ。
 山頂で昼食を取り、景色を充分堪能して、浄土平目指して下山する。
7 浄土平 − 自宅
 浄土平はかなりの人出である。しかし、車の数の割には登山者は少ない。この近辺の観光が目的の人が多いのであろうか。
 往路は道に迷ったが約3時間半、帰りは1時間は余分にかかるだろう、とスカイラインを下る。観光バスが3台のろのろ運転している。こんな調子では1時間どころか2時間は余分にかかってしまうと、諦める。幸い途中でバスがそれてくれたので、以後は極めて順調。東北道まで渋滞はなし。東北道も西那須野付近で工事渋滞があったが順調。往路より逆に短時間で家に帰れた。こんなことも珍しい。復路は高速道の流れに乗ったことが幸いしたようだ。 
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