ひとり山歩き278 : 善知鳥沢の右岸尾根中腹に明治17年に敷設された三島街道跡の一部を歩いてきました。斜面崩落地で危険を感じたので途中で中止し、以降は尾根歩きに変えて、白倉山から若見山を歩ました。三島街道はかなりの部分で往時の面影を残していますが、一部に危険箇所もあります。
三島街道から白倉山(1460)〜若見山(1126)
2007年5月8日(火) 晴れ
1 行程
ルートマップ
自宅(2:35) = 若見山登山口(4:20/4:30) − 善知鳥沢林道ゲート(5:30) − 善知鳥沢林道終点(6:00/6:05) − 三島街道出合(6:40) − 石垣積み(7:50/8:00) − 大崩落地(8:20/8:30) − エスケープ − 1415ピーク(10:35) − 縦走予定尾根出合(10:50) − 1463ピーク(11:25) − 白倉山(12:40/12:55) − 斜面下り開始(13:20) − 標高1000(尾根出合)(14:15) − 1030ピーク(14:55) − 若見山(15:55/16:20) − 塩原線18号鉄塔(16:55) − 若見山登山口(17:30/17:40) = 自宅(19:35)

2 自宅 − 若見山登山口
 塩原付近を車で走るたびに若見山を思い出すが、単発で登るほどの山ではない。若見山から白倉山へのルートを検討したこともあるが、別途白倉山は歩いていしまった(ひとり山歩き175)ので、そのままになってしまった。善知鳥沢右岸尾根の中腹に三島街道が敷設され明治17年から数年間利用されたということを最近知った。webで調べてみると塩原から桃の木峠経由で横川に抜ける区間のうち、横川〜桃の木峠間は「三島街道を復元する会」によって復元が進んでいるらしい。桃の木峠〜塩原間は道筋は確認されていて、かなりの部分で面影を留めるらしい。 三島街道の概要は「三島街道を復元する会」のブログ(http://blogs.yahoo.co.jp/iwanasennin2006)に詳しい。
 旧道に特別の興味をもっているわけではないが、調べているうちに三島街道を桃の木峠まで辿り、塩原と藤原の境界尾根を白倉山まで薮を漕ぎ、かつて検討したルートとは逆に若見山へと急斜面を下り尾根をつなぐアイデアが浮かんだ。三島街道が見つからない場合は、薮を漕いでも白倉山に登り若見山に下る意志標示をこめて車は国道400号を塩原から尾頭トンネル方面に進めて、スノーシェッドの直ぐ先の左手の空き地に駐めた。今日はなんとしても道路対面の若見山登山口に戻るぞと誓いながら準備をする。

3 善知鳥沢林道 − 三島街道  三島街道は道路跡の名残りあり 途中の大崩落部でエスケープ
 三島街道を復元する会のブログに記載されたルート図によると、白戸付近で善知鳥沢を渡り善知鳥沢右岸尾根の中腹を桃の木峠そして横川へ通じている。道筋がどの程度名残りを留めているか分からないので、善知鳥沢林道を歩きながら適当な場所で善知鳥沢を渡渉して右岸尾根に取付くことにした。
 先ずは、国道400号を塩原方面に戻り、日留賀岳登山口のある白戸集落方面に向かう。善知鳥沢橋を渡り、木の葉化石園付近からの道に出合う。そこからは一本道で比津羅山を見ながら善知鳥沢林道へと歩を進める。善知鳥沢林道は舗装の道路で気持ちよく歩ける。右に日留賀岳登山口(小山氏宅)への小道を見送ると、左手に水処理設備がありその先からは砂利道となる。更に数分歩くとゲートが設置してありここからは一般車は通行止めとなる。三島街道跡
 ゲート先で送電線下を通過して振り返ると高原山が見えている。若見山は尾根の陰で見えないようだ。林道は勾配が緩やかで、しかもよく管理されているので快調な歩きができる。右にシラン沢林道を見送って善知鳥沢の左岸をドンドン進む。地形図で予想していた通り、今までの所では林道から沢床までは深くてとても渡渉するような所はない。シラン沢林道分岐を過ぎると勾配は更に緩み沢床が浅くなってきた。地形図の林道終点には橋が架かっているので、林道終点まで詰めることにした。ゲートから30分で狭い広場のある林道終点に達した。
 善知鳥沢に架かる「うとうさわはし」を渡り沢筋を詰めて適当な所から枝尾根に取付くつもりだったが、橋の20m先の左手に踏跡が見えたの石垣積みでこれを追うことにした。多少薮化しているが踏跡は明瞭で、途中で広場を通過して更に進むと小さな枝沢に出合った。対岸にも踏跡が続くので、これを利用しながら高度を上げた。踏跡沿いのピンクのリボンは林業関係者が取り付けたものであろうか。植林の踏跡はジグザグに北北東に登って行く。webで探したルートマップによると標高1000mあたりに三島街道は敷設してあるらしい。見逃さないように注意しながら登ってゆくと、高度計で1000mで、平坦部が左から右に続いている。どうやらこれが三島街道跡らしい。念のために少しばかり左(南)へ戻ってみると明らかに道路跡らしい平坦部が確認できた。明治17年(1882年)に県令(知事)の三島通庸によって敷設され、10年足らずで利用されなくなってしまった三島街道(塩原新道)に立つことができたのだ。旧道にはあまり関心がないので感激するということはなかった。この時点では、これで桃の木峠までは楽して行けると喜んだのだが・・・
 桃の木峠(日留賀岳の西、塩原・藤原の境界上)は標高約1200で、三島街道出合から標高差200mである。三島街道は人力車も通ったというから、なだらかに山腹を巻いているであろう。道路跡が薮化していても、多少の崩壊部があっても容易にその先を見つけられるはず、と先へ進むことにした。薮化あり、岩石の崩落あり、斜面の崩壊ありだが、かなりの部分(50%以上?)は、道路の面影を残し、容易に歩くことができた。4・5箇所で幅数メートルの崩壊箇所があり、浮石や軟らかい地面で多少気を使ったが、特に危険箇所もなく進むことができた。三島街道出合から70分、標高で100m登った時点で道路が石垣積みになっている場所に達した。この区間は50〜60メートルで道路上に樹木が生えているが平坦で道路の面影をもっとも残している部分である。素通りしてしまうには勿体ないので、石垣を見たり日留賀岳を眺めたりしながらエネルギー補給をする。
 石垣積みの先からは左斜面の谷が深くなりだし、ルートマップによると道筋は折り返したりするから、あと1時間半もあれば桃の木峠に達するものと推測して足取りも軽く北上した。20分ほど進むと、大崩落部に達した。今までの崩落部はせいぜい数メートル幅だったが、ここは30〜40m幅の崩落で道筋は跡形もない。崩落部の前方には道筋が見えているのだが・・・ 高所恐怖症の身にとってはこんな所を渡る勇気はない。高巻きを考えたが、足場が悪い・・・ 考えてしまう。来た道を戻るか、左斜面を登って塩原・藤原境界尾根を目指すか。標高差300mで急勾配だが、こんなこともあると覚悟してきたので、当然のごとく急斜面を登りだした。冷静さを欠いていたのか、大崩落部の写真を撮るのを忘れてしまった!!

4 境界尾根へエスケープ − 白倉山  縦走尾根への急斜面登りで消耗
 エスケープ区間は地形図で見ると尾根形になっているが、急斜面を登る感じ。ラッキーというかアンラッキーというか薮は殆どない。障害物がないという面ではラッキーだったが、急斜面を登るのに掴むものがないという面ではアンラッキーだった。山行では有酸素運動を心がけているのだが、これほどの急斜面を登ると無酸素運動に近くなる。無酸素運動をすると後々スタミナ切れとなるので、最終目的地の若見山まで行けるか心配になる。少し登っては振り返り日留賀岳を眺めては脈拍の上昇を抑える。エスケープの場合どこを歩いているか不明だと心理的に疲れるが、1415ピーク目指している確信がもてたので不安はなかった。高度が上が左 : 白倉山頂  右 : 若見山頂ると背丈ほどの笹薮の中を進み北北東からの尾根に合流して西から南西に少しばかり登ると笹薮の中のブーメラン型の415ピークに達した。標高差300mに約2時間要した。この4カ月は雪山ばかりで、薮山復帰初戦にしてはハードな登りだった。
 薮の中を西北西に進むと薮が切れて縦走予定尾根に出合った。ここから白倉山・尾頭峠の間はひとり山歩き175で歩いているので一安心。ここから白倉山までは笹薮の連続だが、それ程強烈ではなくしかも緩やかな登りで、たいした苦労なく歩いた記憶が蘇る。1463ピーク越えは多少複雑だが、境界線の右手をショートカット。右前方には白倉山も見え出した。1450ピークから下った鞍部では高原山と弥太郎山等を眺めて、白倉山への登りに備える。尾根の右手の方が薮は少ない。前回は白倉山の山頂部では背丈をはるかに超すネマガリダケに苦しんだが、今日は幸いにも僅かな残雪が笹を押さえ込んでいたので楽して白倉山三角点に達した。1463ピークから山頂まで前回は50分だったが、今日は75分も要した。エスケープでの急斜面登りでスタミナを消耗してしまったようだ。
 山部さんと栃木の山紀行さんの山名板の傍でエネルギーを補給しながら、尾頭トンネル上経由にするか予定通り若見山へと足を伸ばすか考える。時間的には若見山経由で問題なし。おにぎりが水なしで喉を通るから大丈夫と判断した。

5 白倉山 − 若見山  急斜面を下って枝尾根に乗る・・・ルファンの醍醐
 白倉山から尾頭峠方面にも背丈程度の笹薮があるが、特別に密でもなく下り勾配でもあり今までに比べたら楽な歩きができる。25分下った標高1370付近から磁石を南東に合わせて笹薮の斜面を下りだした。最初は緩やかだったが、勾配が急になるにつれて薮はなくなる。目指すは地形図に1000の文字のある枝尾根の開始点である。地形図で見ると尾根上を下っているのだが、幅が広いので単なる急斜面を下っている感じである。勾配が急で片手に磁石を持ってというわけには行かない。時々立ち止っては下方の特徴ある樹木に見当をつけて下ってゆく。標高1200くらいになると前向きでは下ることができなくなる。蟹歩きで下ると落葉で滑り易く何度も転倒した。その都度シリセードの体制にすると、残雪歩きでも体験できなかったシリセードを楽しむことができた!? これなら早く下れると思いきや尻に熱を感じ始めた。このままシリセードを続けるとズボンに穴が開いてしまう!! まだまだ使用に耐えるズボンで残念ながらシリセードを諦めてシングルスットクを活用しながら下る。こういうときは薮があったほうがよいのだが、急斜面で薮もつかないようだ。
 標高1050くらいから多少勾配が緩んだが、斜面は洗濯板のように低い尾根と浅い谷が現れ始めた。右手の尾根のほうが若干高いので、数メートル深さの谷を横切って隣の低い尾根を進むことにした。これが正解で、標高1000m付近で明瞭な尾根に乗ることができた。少しばかり南東に下って東へ登ると1030ピークに達した。尾根のこの区間はシノダケと灌木が多く悩まされた。勾配が緩やかなのが救い。
 若見山へは1030ピークから南東に下って登り返すことになる。樹木間が狭いが薮はないので助かった。でも最後の若見山直下の急斜面登りは堪えた。イワウチワの群落があったが、時期的に早いのか遅いのか花は僅かしか見れなかった。やっとの思いで若見山山頂に達した。休憩は地べたに座り込むことは滅多にないのだが、今日は久々の薮山で急斜面の登下降と異常な暑さで完全にばててしまったようだ。下山に備えて握り飯をほお張るが水を飲んでも通らない。こんなことは珍しい。
 山頂からは展望はない。山部、RK、栃木の山紀行、黒羽山の会、その他2枚の山名板を確認する。消耗はしてしまったが、懸案の白倉山〜若見山を歩くことができて大満足。急斜面を下ってうまく尾根筋を捕まえることができたのは、なんとも言いようのない喜びだ。これがあるから薮山歩きは止められない。一方、三島街道経由で桃の木峠へは行けなかったが、自分好みの尾根歩きではないので、それ程残念という感じはない。

6 下山
 明るいうちに登山口に戻れることは確実なので、ユックリと登山道を下る。塩原線18号鉄塔への僅かな登り返しがきつかった。以降はジグザグの下りで転倒に注意しながらくだる。だんだん国道400号を通る自動車やバイクの音が大きくなる。下山に70分もかかったが、登山口の対面の広場に自分の自動車を見て元気回復。
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