ひとり山歩き233 : 湯西川の木ノ沢林道から枯木山を目指しましたが、枯木山手前のピーク直下10メートルが登れず敗退となりました。尾根筋は疎らな落葉樹林帯で日光連山、高原山、男鹿山塊、荒海山周辺、明神ケ岳周辺等の展望が素晴らしかったです。尾根には新雪がついていましたので途中からワカンを着用しました。
湯西川木ノ沢林道から枯木山(1755)(敗退)
2006年3月15日(水)
1 行程
ルートマップ 
自宅(1:45) = 湯西川(伴久ホテル付近)(3:50/4:10) − 木ノ沢林道口(4:20/4:25) − 尾根取付き(4:50) − 木ノ沢左岸尾根出合(5:55) − 1220ピーク(7:15/7:25) − 三角点1467.1ピーク(8:45/8:55) − アサズマ沢左岸尾根合流ピーク(9:15) − 県境1692ピーク(10:30/10:45) − 退却点(県境枯木山分岐ピーク直下)(11:10/11:15) − 1692ピーク(11:45/12:00) − アサズマ沢左岸尾根合流ピーク(12:55) − 三角点1467.1ピーク(13:15) −1220ピーク(14:15) − 枝尾根下山開始(14:50) − 下山(木ノ沢林道終点付近)(15:25) − 木ノ沢林道口(16:05) − 駐車地(16:20/16:30) = 自宅(18:55)

2 自宅 −湯西川
 昨年の10月29−30日に田代山峠から枯木山を目指したが、時間切れで失敗した。このルートは無雪期に再チャレンジすることにしている。それとは別に残雪期に湯西川から枯木山を日帰りピストンを今月末か来月上旬に考えていた。高原山探訪のHPでお馴染みのYoshiさんが11日に湯西川から枯木山の日帰りピストンを成功させた。この情報に基づき計画を早めて実行することにした。
 限界ギリギリの山行になるので、荷物の軽量化のためにピッケル、12本爪アイゼン、スノーシューは諦め、6本爪アイゼンとワカンを持参することにした。Yoshiさんは安らぎの森付近から白滝沢右岸尾根に取付いたが、自分は以前から考えていた木ノ沢林道から尾根に取付くことにした。Yohsiさんの行程時間から割り出すと明るいうちに下山するには湯西川を4時スタートと決めて、家を出た。湯の郷トンネルを抜けて県道249号を湯西川方面に向かうと道路にはごく僅かだが雪が付いていたので慎重運転となり、予定よりやや遅れた。湯西川温泉伴久ホテル手前を右折して200メートルほど進むと、道路は雪でブロックされていた。仕方なしに雪ブロック手前に駐車した。メッシュ天気予報によると前日は土呂部や舘岩は降雪があったので心配していたが、星と雲が半々の空模様で今日は好天が約束されたと安心して準備にかかる。

3 木ノ沢林道 − 県境尾根(退却点)  疎らな落葉樹林帯の尾根筋からは好展望  枯木山を目前に10メートルが登れず退却
 雪ブロックを乗り越えて、除雪された舗装道を北上し木ノ沢林道口に向かう。ウツルギ(移木)沢にかかる二つ目の橋「仲石橋」を渡った左手が木ノ沢林道口で、ここからは木ノ沢左岸の雪を被った林道を進む(軽アイゼン着用)。林道終点付近から枝尾根を登る予定だったが、植林の尾根が目に付いたので急遽ここを尾根取付きとした。
 こんな急斜面に植林できるものだと感心するような急登が暫くは続き、30分ほどで尾根形が明瞭になって多少は歩きやすくなった。植1280Pにし鞍部の雪庇林なのに尾根上の凹凸が多いのは、枯枝や倒木の上に積雪するためと推測した。雪の表面が締まっていたので、足がもぐることがなく助かった。約1時間で登りついた木ノ沢左岸尾根は南側がカラマツ植林で、地形図を読めるようになったので消灯した。当初計画していたところよりも700メートルほど東側の小ピークに登りついたのが、その後の歩きで判明した。左岸尾根上は薄く新雪がついていたが、締まっていて歩きやすかった。方向を西から北西に変えるとミズナラやブナの雑木となり緩やかな登リが続き、後方に明神ケ岳や日光連山が展望できた。右から白滝沢右岸尾根が合流する1220ピークからは荒海山や県境1692ピークへの稜線が窺える。
 1220ピークからは再び西に向きを変えて進む。一本の枯木の大木を数本のワイヤーで支えているのを見たが、どんな意味があるのか分からなかった。次の1280級の小ピークを越した鞍部は長さにしたら20メートルくらいだが、嫌らしい雪庇が待ち受けていた。この雪庇についてはYoshiの報告を読んで知っていたが、高所恐怖症の自分には渡れそうもない。ここで退却して念のために準備してきた横瀬山にでも登ろうか。ここまで来て引き返すのは癪だ。暫くは雪庇を眺めながら逡巡する。上から眺めると周りとの兼ね合いで雪庇は狭く見える。雪庇に乗って足元だけを見て歩けば案外広く見えるのかも知れない、と自分自身に暗示をかけて雪庇に向かう。両手のストックを雪に刺し込み、足を確実にもぐらせてソロリ枯木山稜線(左) 退却ピーク=左写真の左端(中央)  退却ピーク直下10m(右)ソロリ歩く。ほんの僅かな時間だったが、とてつもなく長く感じた。渡り終えて振り返ると見事に雪庇の上に足跡が残っている。今日の最大難所のひとつは突破できた。復路でまた通過せねばとの思いは残るが、多少足取りは軽くなった。尾根筋は疎らな落葉樹林で左手には女峰山〜太郎山と明神ケ岳周辺、右手には荒海山方面が展望できる。新雪は浅く、坪足でも沈みは小さく気持ちよく歩ける。先に難所が待っているので立ち止まって景色を堪能できないのが残念!! 数本のダケカンバが目立つ三角点1467.1ピークに到着した。計画よりも30分ほどの遅れが生じている。これから遅れも累積することが考えられるので早めにワカンを着用して先を急ぐ。
 次の1480級の小ピークから左手の日光連山、明神ケ岳、高倉山の展望がよい。その先も好展望が続き、左(南)からアサズマ沢左岸尾を合わせる。ここからは方向を北北西に変えて平坦な尾根歩きが暫く続く。時たま針葉樹林が現れると、日蔭ができるのでよく雪が締まっていて、ワカン跡らしきものが見受けられる。今日は気温が高いので日蔭歩きを続けたいが、針葉樹林はほんの僅かしかないのが残念。いよいよ県境の1692ピークへの登りが始まった。高度が上がってくると新雪も深くなりワカンでももぐるようになってきた。不思議なのは同じ尾根上でもさざなみ状になったところは雪が締まっている。「さざなみ」をめがけて歩くのだが長くは日光連山 (1692Pから)続かない。1692ピークの頂上が近づくにつれ厳しくなり、ジグザグ気味に登る。Yoshiさんすら腿が痙攣した難所をどうにか突破して県境の1692ピークに達した。ここからの展望は今まで登りながら見てきた景色の集大成ともいえるほど素晴らしい。南の明神ケ岳から時計回りに日光の山々、県境尾根、枯木山稜線、荒海山、男鹿山塊、高原山と360度のパノラマが広がる。今日登ってきた稜線もかなりの部分が見える。このピークからは肝心の枯木山はすぐにも手の届きそうな距離に見える。昨年の10月に田代山から歩いて来て退却した付近の雪庇の厳しさを見ると、これは自分とは別世界。ここはまさに「関東ぐるり一周山歩き」(白山書房)の著者上野信弥氏の世界だ。
 もっとゆっくりしていたい気分だが、先にも難所が待っているのでエネルギーを補給して南南西の枯木山分岐ピークを目指して、一旦緩やかに下る。鞍部から枯木山分岐ピークを見ると、勾配がきつくかなり厳しそうだ。50メートルほど登れば、枯木山到達は間違いなし。遅くても12時には到着できるぞ、と勇んで登りにかかる。傾斜はだんだん急になってきたが、ワカンを履いていても脛くらいまで沈むので先刻の1692ピークへの登りよりも容易だった。一歩一歩確実に歩を進める。枯木山到達が頭にチラつきだした。頂上まで10メートル程度のところで前途を雪の段差に塞がれた。大した段差(1メートルもない)ではないが雪が崩れて登れない!! ストックを段差の上に差しても雪が薄く体を引き上げるほど深くは刺さらない。昨年も残雪歩きで同じようなことがあったので、今年はピッケルと12本爪のアイゼンを購入したのだが、今日は限界ギリギリの長時間歩きということで、荷物の軽量化を図りピッケルも12本爪アイゼンも持参しなかった。悔やまれるが、今さらどうしようもない。ストックと軽アイゼンで頑張ったがどうしても前に進めなかった。左右のどちらかに回り込めば突破の可能性があったかも知れない。万一の滑落を考えてこれはやめた。生きて戻れば(チョット大げさだが)、他日を期すこともできる。11時15分、時間的には余裕もありここで退却するのは癪だが、これが自分の実力。

4 下山  景色を楽しみながらユックリ下山  新雪が腐るも体力的に問題なし
 計画よりも早く下山することになったので、明るいうちに駐車地に戻れるのは確実。復路は展望を楽しみながら荒海山(中央) (1220Pから 復路で)ユックリ下ることにした。Yohsiさんはシリセードを活用した、と書いてあった。真似をしてみたが、新雪の斜面では滑るどころか、尻がスッポリと雪に埋まり全然動かない。仕方なしに両手を櫂のようにして漕ぐとどうにか進んだが、雪の抵抗が大きくて遅遅として進まない。シリセードは諦めて一歩一歩確実に歩くしかなかった。
 県境の1692ピークで、テルモスに詰めてきたコーヒーを飲みながら、エネルギー補給と写真撮影(レンズの中央部が汚れていたようで今日の写真はすべて影ができてしまった)。単独行でコーヒーを飲むなんて、初めての経験。歩行速度が遅いくせに、ロングウォークをするのでユックリ休憩をとっている時間がないのが自分の山行スタイル。登りで苦労した1692斜面も下りは楽だった。平端部歩きで紐が緩んだのを機にワカンを脱いで軽アイゼンのみで下った。途中で立ち止まっては景色を眺め、写真を撮っては歩くを続ける。尾根筋は日当たりがよく、時刻も12時を過ぎて新雪が腐りだした。それでも積雪が浅いので、脛程度のもぐりで時たま膝までもぐることもあった。三角点ピークを越すと益々雪は軟らかくなってきたが、下りだったのでそれほどの苦痛にはならなかった。いよいよ例の雪庇の上に来た。往路の足跡がクッキリ残っているのが見えた。往路ほどビクつくこともなく、雪庇を無事渡り終えた。
 1220ピークから南東に下ってゆくと標高1130付近のコブから右(南南西)に枝尾根が派生している。これを下りると木ノ沢林道終点(地形図実線)よりやや西に下ることになる。沢筋が分からないので、このコブのすぐ先で、尾根が東に向く地点(標高1100)から南南東に伸びる植林の枝尾根を下りることにした。杉(一部カラマツ)植林の尾根は締まった雪が全体についていた。急勾配のところもあり、登るには骨が折れそう。下山地点は雪が付いているのではっきりしないが、林道終点付近と思われた。早朝に取付いた地点を確認しながら林道を戻る木ノ沢林道口から駐車地に戻る途中に、休止している焼却場を見た。焼却場なら冬でも稼動するはずだが、廃止になってしまったのかなど考えながら歩いていると目の前に雪ブロックが現れ、乗り越えると駐車地であった。
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