ひとり山歩き215(今回はパーティ) : 田代山峠から栃木/福島県境尾根伝いに枯木山を二日がかりで目指しました。重い荷物と予想以上の深い笹薮の連続に足がはかどらず枯木山を目前にして時間切れで途中退却となりました。栃木県側は樹木切れの区間が多く、展望と山腹の紅葉を楽しむことができたのは幸いでした。
田代山峠から枯木山(途中退却)
2005年10月29日(土)曇り一時雨 ー 30日(日)晴れ
1 行程  山部・ノラさんパーティに同行       山部さんの報告                      (行程時間は一部記憶による)
ルートマップ   
10月29日 自宅(5:20) = 田代山峠(7:30/8:00) − 三角点1663.3峰(8:50/9:00) − 1620峰(9:30) − 幕場(12:15/12:45) − 1706峰(13:50) − 退却点(1660峰)(14:30/14:50) − 幕場(16:40)
10月30日 幕場(7:30) − 1620峰(9:25/9:35) − 三角点1663.3峰(10:15/10:35) − 田代山峠(11:15/11:40) = 自宅(15:10)

2 自宅 − 田代山峠
 今年は福島県境尾根を重点的に歩くことにして、山王峠から安ケ森山の間を5月から6月に歩いてきた(一部未踏区間あり)。これから前記の残りの部分と男鹿岳〜山王峠そして安ケ森〜田代山峠間をと思っていた矢先に帯状疱疹にかかり、計画は頓挫してしまった。
 来年に再挑戦するにしても、安ケ森峠〜田代山峠の間は、得意とする日帰りで細切れにつなぐのは難しい。といってテント泊の経験もなくどうすべきか考えていた。山部さんとノラさんが二日行程で田代山峠から福島/栃木県境尾根を辿って枯木山を目指しているのを知った。この計画に便乗してテント泊の経験を積みたいと考えたが、二人の足手まといになることは必死で逡巡していた。これを知った山部さんとノラさんが快く誘って下さったので、計画に便乗させて頂くことにした。
 テントから車まで山部さんにおんぶに抱っこで自宅付近まで迎えに来ていただく。栗山村の黒部・土呂部経由で県道栗山舘岩線(田代山林道)で県境の田代山峠を目指した。林道は10月5日に全線開通(11月20日閉鎖、7時から17時の間通行可))になったばかりで、路面状況はよい。この林道の栃木側は比較的カーブも少なく登り勾配も緩やかで、途中ずっと紅葉を楽しんいる(自分で運転していたらそうは行かない)うちに県境の田代山峠に到着した。峠から南東方面が見晴らしよく、高原山、明神ケ岳、高倉山あたりが見通せる。

3 第一日(田代山峠 − 幕場)  深い笹薮と重荷に悩まされる  栃木側は展望が開け遠望と周辺の紅葉を楽しむ高原山(左奥) 明神ケ岳(右)  (三角点峰から)
 このところ連続して土曜日は天気が崩れている。今日も午後は雨の予報で、先が心配である。パーティには自称雨男とこれまた自称晴男が混ざっている。果たして山の神はどちらに軍配を上げるやら。
 閑話休題、峠で付近の紅葉をしばし楽しんで、切通しから県境尾根に取付く。尾根の栃木側は切れ落ちているので油断できない。稜線の中央を通れば笹薮が深いので、薄い獣道のある幕場から1706Pを望む栃木側を歩くことが多い。このような場所では笹薮に掴りながらの歩行となる。今回のコースは栃木側の切れ落ちは随所にあらわれるので嫌らしいが、反面樹木がないので展望は楽しめる。南東に高原山、明神ケ岳方面はいうに及ばず、南には日光連山が見えている。同じ県境尾根でも荒海山あたりになると、男体山は女峰山に隠れて見えないのだが、台形の男体山が大真名子山と太郎山の間に見えている。何より素晴らしいのは周辺の山腹の紅葉で今が見ごろである。
 クマイザサの藪は押しなべて腰ないし肩高で密である。下に薄い踏跡が通っているので助かる。最初は元気だったが、普段の日帰り尾根歩きに比べて荷物は倍以上の15kgを担いでいるので足取りは捗らなくなる。最初の1670峰で小休止で日光連山を楽しむ。田代峠の左手に白根山が頭を出している。晴天なら周辺の紅葉と相まって遠望も更に素晴らしいだろうに。笹薮は深いがザックに引っかかる潅木が少ないのが助かる。1670峰から下って登り返すと角点峰である。四つの石で囲まれた三角点からは今まで楽しんできた景色が堪能できる。ここまでは思ったよりは短時間でたどり着けた。このま退却か前進か  (ノラさんと山部さん)まのペースで進めたら枯木山は十分往復できるのだが、荷物の重さが徐々にボディブローとして効いてくるし、待ち受けている藪もどうなるやら皆目検討がつかない。【今回のルート情報は、上野信弥氏の「関東ぐるり一周山歩き」(白山書房)が唯一で、単行本の一項目であるため詳細な情報の記載がないのは止むを得ない。】
 三角点峰からは尾根左側(福島側)にはやや藪が薄く獣道も通っている。無雪期に通った人がつけたと思われる赤リボンも何箇所かで見つけた。尾根上に出るとやはり笹は深い。背丈を越すところは少ないが常時腰よりは深く、笹はクマイザサで部分的に僅かにネマガリダケが混ざる。ひとつの小峰を越して胸高笹の1620峰に2時間で到着し、自分の予想時間と偶然一致した。
 1620峰からは方向を北東から南東に変えて、右手に田代山林道を目の高さに見ながら下る。途中で主稜線は東に向きを変えるので注意が必要。鞍部で栃木側の周辺斜面の紅葉が美しい。鞍部からの登りになると小雨が連続的になったので、雨具を着用した。獣道もなく笹薮は相変わらずで、重荷に耐えかねて歩みが遅くなってきた。例によって山部さんとノラさんが交互で露払いと太刀持ち(ごめんなさい!! お荷物のくせに横綱気取りで!?)をしてくれる上に、歩行速度まで調整してくれる。それでもついてゆくのがやっとで、15分ほどの休憩をとらせもらう。勾配が緩やかになると今までなかった針葉樹を見かけるようになり1660峰に達した。この峰の北東に下り始めると針葉樹林で幕場に適した場所を見つけた。昼食をここで摂り、テントを張って身軽にして枯木山を往復することにした。山部さんとノラさんが笹を刈りテントを張るのを見ているだけで何を手伝ってよいのか分からず、ただボッサと見ているだけ。あっという間に今夜の宿所ができてしまった。

4 第一日(幕場 − 退却点 − 幕場)  時間切れで枯木山を目前に退却  初体験のテント泊は思ったよりは快適退却点から県境尾根と枯木山稜線を望む
 幕場からは60mほど下って100m登り返すと1706峰で、その稜線が完全に見通せる。栃木側は切れ落ちていて、尾根上には笹のグリーンベルトが連続している。グリーンベルトがミヤコザサなら気持ちよく歩けるのだがという淡い期待も、すぐに現実の世界に戻され相変わらずの深藪歩きを強いられる。荷物を幕場におろしたので、暫くは軽やかに下ったが、鞍部からの登り返しは切れ落ちが迫り、笹に掴りながらの登りで歩行は捗らない。登りつめたところが1706峰だがあまり印象に残っていない。この峰からは緩やかな下りで、今までなかったシャクナゲに前途を塞がれれた。このあたりの記録は曖昧さが残る。ICレコーダに吹き込んでおいたのだが幕場以後の記録が残っていない(雨濡れ防止のためにポリエチシートを被せておいたので操作ミスに気づかなかった)。如何に普段の山歩きでICレコーダーに頼りきっているかが露呈してしまった。歳をとると記憶力が弱まるので仕方がないのだ、と自分を慰める。
 シャクナゲ藪から再び笹薮になると、小コブの1650峰に達した。この峰の先は鞍部から登り返し、そして県境尾根の左手に目的の枯木山まで見通せる。既に時刻も14時半を過ぎた。ここで進むか退却するかを検討した。推定では枯木山まで往復で3時間。そうするとこの地点に戻ったときには薄暗く山部さん撮影なる。更に幕場まで2時間で暗闇の藪尾根歩きとなる。目的の枯木山を目前に退却するのは残念だが、安全には変えられない。ここをもって退却(1650峰)することにした。
 幕場には辛うじて明るいうちに戻れた。着替えたり荷物収納のツェルトを張ったりしていたら暗闇になってしまった。絶妙のタイミングで戻ってきたと改めて感心する。着替えをしている間に山部さんは全員の夕食の支度を整えてくれた。キビキビした動作には感心するばかり。白飯とカレースープに舌づつみ、更にコーヒと暖かいものに疲れも癒される。単独行では冷たいものばかり食べているので感激も一入。
 18時半ごろにテントにもぐり込む。テント泊とシュラフは初経験、心配した寒さも全然感じることなく、思ったよりは快適な夜を過ごせた。夜間は強風が吹き荒れていたようだが、幸い雨は降らなかったようだ。

5 第二日(下山)  何度も振り返っては枯木山に未練を残す  晴天に山腹の紅葉が映える県境尾根と枯木山(最奥中央よりやや左))
 6時過ぎに起床し、暖かいスープで朝食を摂る。ガスは出ているが幸い風も雨もなく、今日は好天が期待できる。昨日と替われば良かったのにと思うが、こればかりはどうしようもない。小雨が一時降った程度収まったことでよしとすべきか。
 第二日目に再度枯木山を目指す考えもあったが、無理は止めて他日を期すことにして下山することにした。幕場から下り始めると、すぐにガスは切れて青空が見えるようになった。復路の難所は1620峰への100mの登り返しで、その他に三角点峰を含めて三峰あるが、登り返しが少ないので助かる。昨日に比べて荷物の重さが半分になったのも大きい。時々振り返ってみると、昨日歩いた稜線と枯木山から大嵐山に連なる稜線がクッキリ見える。枯木山は目前退却しただけに未練が残る。山腹の紅葉は日光を受けて昨日にもまして鮮やかに映える。
 田代山峠目指して最後の下りになると、林道を遅い車を先頭に十台くらいがコンボイを組んで峠目指しているのが目に入った。紅葉見物の車はひっきりなしに通過する。峠の切通の上部に二人の姿を認めると、あっという間に二人の姿は大きくなり田代山峠に無事下山できた。

6 あとが
 今回の行程時間から判断すると、もう少し昼時間の長い時期に、夜明けとともに田代山峠を出発すれば一泊での枯木山往復は十分可能と思う。第二日目は時間的余裕があったので、幕場をもっと先にすることも考えられるが、今回の退却点までの間には適当な場所は見つからなかった。重荷を担いで更に進んだほうがよいか、夜間の風雨等に備えて幕場を選ぶかの選択は難しい。今回は天候を考量すれば幕場は最適だったと判断する。
 最後に、テント泊の経験のない自分を快く誘って下さった山部さんとノラさんに感謝します。今回の山中泊の経験を今後の山行に生かしたいと思います。
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