ひとり山歩き173 : 朝日岳(那須岳)と北温泉の間に位置する飯盛山と鬼面山に登ってきました。飯盛山の西鞍部から鬼面山にかけては3メートル超のチシマザサと潅木のヤブこぎは強烈でした。その反面、山頂部は草原状で那須岳(茶臼山、朝日岳)を始め周辺の展望が楽しめました。
強烈なヤブの飯盛山(1364)と鬼面山(1616)
2004年11月5日(金) 晴れ
1 行程
自宅(3:50) = 北温泉駐車場(5:40/5:50) − 北温泉(5:55) − 林道出合(6:25) − 毘沙門沢渡渉(6:40/6:45) − 飯盛山(7:30/7:45) − 鞍部の溝(8:00) − 方向転換(標高1380)(9:00) − 南東尾根取付き(標高1400)(9:30) − 大岩(10:40) − 鬼面山(10:55/11:25) − 大岩(11:35) − 南東尾根取付き(標高1380)(12:35) − 鞍部の溝(13:00) − 飯盛山(13:25/13:35) − 毘沙門沢渡渉(14:00) − 林道出合(14:25) − 北温泉(14:45) − 北温泉駐車場(14:55/15:10) = 自宅(16:50)

2 自宅 −北温泉鬼面山(奥左)と盛山(奥右) 北温泉(下)
 尾根歩きを最上の楽しみとしている。ヤブはないに越したことはないが、尾根歩きには避けて通れない。鬼面山はヤブの深さで栃木県でも有数の山と聞いている。尾根歩きを通じて養ったヤブこぎ技量の腕試し(脚試し)にチャレンジしてみることにした。残雪期なら楽かもしれないがそれでは意味がない。低い山でのヤブこぎは暑くてはかなわない。気温が下がった今がチャンス、とこのところ好天の続く金曜日を選ん実行に移す。 
 県内の山に出かけるときは原則として高速道は使わないことにしている。使い残しのハイウェイカードがあったので利用する。鹿沼IC−那須IC(61kmで1750円)を利用したが、たったの15分しか短縮できない。高速を使う意味なし。今後も原則として普通道を利用することにする。北温泉駐車場に着いた時には、やっと明るくなりはじめたところ、20台程度の駐車場は満杯であった。紅葉の時期は過ぎたように思うが、泊りがけで温泉を利用する人は結構多いようだ。

3 北温泉 − 盛山  盛山取付きを間違え時間ロス その他は思ったより容易
 駐車場から舗装道を下ってゆくと、北温泉奥の谷間に飯盛山と鬼面山がみえる。山容をよく頭に記憶させながら、温泉プール(露天風呂盛山(手前) 鬼面山(中央後)  (林道終点から))の横を通り、川を渡って中の大倉尾根に踏み込む。10月7日にこの尾根を歩いて三本槍岳に登ったので、道筋はよく覚えている。土留め階段をジグザグに登って行くとすぐに汗をかいた。晴天の割には気温は高いようである。ヤブこぎにはもっと気温が低い方がよいのだが、先が思いやられる。北温泉から30分で林道出合に達する。ここを左に折れて飯盛山と鬼面山を見ながら、ゆっくり歩いて3分で林道終点に達した。ここからは崩壊した飯盛山の東斜面が目の前に見える。
 盛山の観察をして、林道先の樹林の中の踏跡に入り込んだ。最初は尾根の左を緩やかに下り、途中からジグザグに急下降する。角材の階段も残っていって、砂防ダム工事に盛んに使われた名残りであろうか。盛山と鬼面山にでも登ったのか比較的新しい足跡もみとめられた。予想以上に簡単に毘沙門沢に下れた。対岸の支流が流れ込む所に水パイプが見える。
 水パイプ付近で沢を渡渉して取付きを探す。崩壊斜面の右脇から尾根に取付くには急なので、支流を少し遡り低い所から尾根に取付こうとした。これが間違いの元で、背丈をはるかに越すチシマザサの藪に捉まってしまった。十数分は余分な労力を使ってしまった。復路で確認したのだが、水パイプ付近から尾根に取付くのが正解である。尾根に取付いて暫くは笹薮との戦いで、幸い高度を上げると藪は薄くなった。こんな所で労力を使ってしまったら、あとに控えるチシマザサの密藪に耐えられない。飯盛山の山頂には山部さんの山名板があるだけ。樹林で囲まれた山頂からは鬼面山と茶臼岳が枝越しに見える程度。先刻通過した林道終点付近はよく見えた。

4 盛山 − 鬼面山  高さ3m以上の笹地獄を突破  山頂には天国が待っていた
 磁石を鬼面山に合わせて、藪の薄いところを選んで斜面を下る。時にはチシマザサの藪に突入するが、密度は高くないので特に問題なく鞍部に下れた。溝に下りる前に前方の様子を偵察した。鞍部の溝は両サイドの斜面から流れ込む雨水や雪解け水が明礬沢に流れるうちにできたものであろうか。溝中には背丈を優に越すチシマザサが密生している。前方が全く見えなくなってしまたので、仕方なしに笹に捉まりながら溝から脱出した。茶臼岳  (鬼面山山頂直下から)
 鬼面山の南東尾根に取付くには、西北西に直線にして300メートル以上は進む必要がある。鬼面山の斜面は北西から南東に勾配をつけている。そのために西北西に進むには3メートル以上もある密集したチシマザサを横切って登りながら進まねばならない。悪いことには細い沢状の溝が何本も放射状に斜面についている。こんな処を長時間ヤブこぎを続けると途中で消耗してしまうかもしれない。労力を少なくするために、溝と溝の間にある尾根状の小高い所を北西に向かって進む。この小尾根に沿って進むと笹を正面からこぐ格好になるので、なんとか前進できる。途中で赤リボンを3回見たので、意を強くして前進した。前方の様子は全くわからないので、疎らにあるダケカンバに上っては様子を探りながら進む。このまま進んでも南東尾根には近づかず、鬼面山の東斜面に向かっている。この東斜面は急勾配で直登は難しい。小尾根の上で岩に出合った。岩の正面にまたもやリボンを見かけた。岩の上に乗って様子を探った。南東尾根に鬼面山山頂から朝日岳方面を望む取付くには西に進まねばならないが、笹を横切るには密度が高すぎる。リボンに促され、もう少し前進することにした。前方に東斜面のダケカンバ林が見え出した。ダケカンバに攀じ登り様子を探ると、左手に南東尾根が近くに見えて、笹密度が小さくなっているのが認識できた。高度計を見ると、1380であった。ここを方向転換点と決めた。
 コンパスを今までの北西(320度)から西(270度)に設定して笹原を横切ることにした。笹密度はかなり低くなっているが、コンパス通りに進むよう心がけたが、どうしても下る方向に進んでしまう。やっと南東尾根に取付き高度計を見ると1400であった。目標点より50メートルほど低い所ではあったが、方向転換点からなんとか高度を保って笹原を横切ることができた。鞍部の尾根から方向転換点まで1時間、そこから南東尾根まで30分要したが、この時点で鬼面山にタイムリミットの12時には悠々たどり着けると、余裕ができた。
 南東尾根は急勾配で笹薮はあったが、今までに比べようもなく楽になった。一番辛い所は脱したので、あとは一歩一歩確実に山頂を目指した。途中から笹薮に変わってツツジを主体とする潅木が増えてきた。時には通過するのに苦労するほど密であったが、この程度の潅木のヤブは尾根歩きでしばしば経験しているので大した苦痛にはならない。左手から茶臼岳ロープウェイの案内放送が時々聞こえてくる。那須岳の紅葉はもう過ぎたので客数が少ないのでは、と余裕がでてきた。先刻の笹薮こぎでは、こんなこと考える余裕は全くなかった。前方20メートルほど上に大岩がチラット見えた。暫くしてこの大岩を左に巻いて通過して尾根に戻ると潅木と笹だけになり、左手に茶臼岳から南下が見え出した。前方に五葉松が密生している。この密生地が鬼面山の東ピークで、潅木の西ピークの方が極わずか高い。その中間に低い笹原が横たわっている。あたかも地獄から天国に飛び出した感じがする。
 先ずはザックを降ろして眺望を楽しむ。北から赤面山・中の大倉尾根のピーク・熊見曽根分岐・朝日岳・剣ヶ峰・茶臼岳が楽しめる。特に鬼面山から朝日岳につらなる稜線は緑の絨毯を敷き詰めたように見え、簡単に歩いてゆけるのではと錯覚する。山頂の植生は背の低いものばかりで、冬の厳しさが偲ばれる。ゆっくりしていたいが、復路の笹薮こぎも安心できない。山部さんの山名板を撮影して下山にかかる。  

5 下山  方向を定めて笹原を横切るように突破  途中で愛用のICレーコーダーを紛失
 鬼面山から鞍部までは往路をそのまま戻ることは困難。南東尾根を取付き点付近まで下り、東南東の飯盛山にコンパスを合わせ、鞍部めがけて笹原を横切ることにした。下り方向だからなんとか3メートル以上の密度の高いチシマザサチシマザサも横切れる。何度もスリップして尻餅をつく。更に笹先端の葉が脚に絡みつき身動きが出来なくなる。往路と同じように時々はダケカンバに攀じ登り方向修正しながら下ってゆく。こんな深いヤブのなかで倒れてしまったら、永久に発見されることはないであろう。こんな広い密集した笹原では探しようがない。先日、塩那道路のひょうたん峠付近で同年配者2名が遭難死したので、そんなことまで考えてしまう。登りではこのようなことも考える余裕すらなかった。やはり下りは体力的には楽だ。なんとか鞍部の溝に滑り込んだ。ここまできたら安心と、ICレコーダーを取り出し記録しようとしたら、ICレコーダーがない。溝に滑り込む直前に2メートルほど滑り落ちた。どうやらその時にポケットからこぼれたらしい。こんな密薮の中で回収は不可能と諦める。記録はレコーダーに任せきりにしていたので途中の記録が残っていない。チェックポイントの到達時刻と標高だけは紙に記録していたのが救い。
 盛山への登りではチシマザサの薮も突破したが、今までこいできた笹に比べたら、これがチシマザサという程度に感じる。笹密度の低いこともあるが、体力的に余裕が未だ残っていることも知る。盛山で小休止しながら復路の予習をする。尾根を北東に下り、崩壊斜面に沿って東に下りることにした。思っていた所で赤リボンを見て、笹に捉まりながら急下降する。途中で背丈以上の笹薮を突破して下りつづけると、見覚えのある毘沙門沢渡渉地点に下れた。
 ここからは踏跡を辿り林道に戻る。栃木県で三本指に数えられる薮山に登れた充足感からか、心も脚取りも軽い。林道から中の大倉尾根に戻り、あとは北温泉までノンビリと下る。駐車場への登りの途中で振り返って飯盛山と鬼面山を写真に撮って無事駐車場に戻った。
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