ひとり山歩き6 : 積雪前の鳥海山を目指して、天気予報を確認して家を出ました。鉾立に着くと生憎のガス模様。山頂付近で降雪とガスで道に迷い、一晩ツエルトでビバークしてしまいました。翌朝、大物忌神社まで自力下山し、神社からの下山は山形県警のヘリのお世話になりました。
鳥海山(2236.0m)登山
2002年10月10日(木) 曇り 11日(金) 晴れ
1 行
自宅(0:45) − 鉾立(6:20/6:40) − 賽の河原(7:35) − 御浜小屋(8:10) − 七五三掛(9:00) − 大物忌神社(10:20) − 新山山頂(10:45) − ツエルト待避(12:30/14:30) − ツエルトビバーク(15:00/翌朝6:00) − 大物忌神社(10/11,6:40) − 下山(大物忌神社-大平山荘・山形県警ヘリによる)(8:30/8:37) − 鉾立(9:20) − 遊佐町役場(10:30) − 自宅(15:35)
2 自宅 − 鉾立  紅葉を求めて東北の名山を目指す酒田市内から望む鳥海山(10/11 11時)
 紅葉を求めて、鳥海山、月山、蔵王山を登るべく準備を進めました。問題となるのは、鳥海山の積雪です。インターネットで調べた結果、例年の初冠雪は10日過ぎが多い。天気予報を確認して、鳥海山を目指して自宅(栃木県、国分寺町)を早朝に出発する。
 鹿沼ICから東北道、村田JCTで山形道を経由し、一旦月山ICで高速を下りて約20km国道112号を走り、再び湯殿山ICで山形道に乗り酒田みなとICで下りる。早朝でもあり交通量は少ない。特に、山形道は片側一車線区間が多いが、追いつくことも追いつかれることもない。時々、対向車を見かけるだけ。遊佐町から鳥海ブルーライン(無料)で鉾立を目指す。途中で国民宿舎「大平山荘」をみかける。帰りはここで温泉に入って次の月山へ移ろうなど考えているうちに、鉾立駐車場に到着する。車は10台位止まっていて、出発しようとしている人を何人か見かける。
 駐車場付近の紅葉がかなり進んでいて美しい。問題は天気である。予報では山形は晴れの筈だが、山形道に入ると降ったり止んだりで心配していたが、駐車場から鳥海山を見上げると7合目位から上はガスで隠れている。一方、海側は晴れている。ガスが晴れるのを期待して登山口に向かう。 
3 鉾立 − 大物忌神社  ガスのため途中の展望は全くなし 標高が上が鉾立駐車場と周辺の紅葉るに連れて白くなる
 石段混じりの舗装した登山道に入ってゆく。前方はガスで霞んでいるが、後方の海側は晴れていて海岸線が美しい。この時点ではこのような海に近い山に登る期待感でいっぱいであった。途中で左手に白糸の滝が見え、右手の樹林の紅葉を楽しめた。
 登山道から続いた舗装道は約15分で切れて、ここから暫くは階段状あるいは石畳風に岩を敷き詰めた道が御浜小屋まで続く。進むに連れて天気が良くなるどころか益々ガスが濃くなってくる。周辺の景色が見えない。どうやら道筋は笹は見かけるが、樹林はないようである。道筋に岩がゴロゴロしだすと賽の河原である。岩敷き道を更に進むと、右に大平山荘口からの道を合わせ、すぐに鳥居が見えて御浜小屋が見える。ここで写真を撮っていたら、中年の登山者が音もなく近づき追い抜いていった。
 御浜小屋の公衆トイレを左下に見て岩道を進む。天気が良ければ鳥海湖が楽しめたのに残念!岩を越えると下りになり、岩敷き道がなくなり、やっと通常の登山道を歩く気分になる。このあたりはお花畑らしい。周りには樹林等風を遮るものがなく、風が冷たい。消耗を防ぐために、ここで防寒衣を着用する。御田ケ原を過ぎて石階段を下ってゆくと八丁坂に達する。このあたりもお花畑らしいのだがよくわからない。
 八丁坂のすぐ先の岩道で夫婦を追い越す。今までに三組5人を追い越して、1人に抜かれる。このあたりからは岩の凹みに粗目の氷が目に付きだす。岩道の急登となり右手にハイマツを見かけると、七五三掛で道が左右に分かれる。左の千蛇谷へ向かって下る。谷沿いのガレ道をやや進むと前方にほんの僅かとなった残雪を見かける。その手前でロープの案内に沿って谷を渡る。
 この辺りから粗目状の白いものが増えてきた。どうやら雪らしい。潅木には霧氷の花を咲かせていた。道はますます白くなる。踏跡が認められるので、昨晩積もったものではない。歩行の妨げにならないどころか、小岩が隠れていてむしろ歩きやすい。山頂まで500mの案内標識をみてひと登りで、大物忌神社にたどり着く。軒下まである防雪の石塀で囲まれた小屋が五つ六つ見える。  
4 新山ピストン  ガスと積雪で道をロス 山頂付近で岩穴に入りビバーク 翌朝自力で神社に下る
 神社鳥居前の新山方向標識を見てそのまま進む。踏跡を辿って山頂を目指す。ガスで霞み周辺の山は見えない。岩場を登っているうちに雪がちらつきだ新山山頂付近の岩峰す。山頂が間近となると踏跡が分らなくなる。一瞬引き換えそうかと振り返って見るとそばを通ってきた岩が見えるし、高度計から山頂もすぐ先と判断して山頂を目指した。山頂に着いた頃に雪とガスが酷くなり山頂周辺の岩が微かにしか見えない。
 長居は無用とすぐに下山にかかる。自分の踏跡を辿って下りるが、途中で踏跡が消えてしまった。かなり雪が積もり目印も踏跡も分らなくなってしまった。道を探すうちに、山小屋の案内標識を発見する。踏跡はなく、山小屋方向を目指しているつもりだが、道筋が判明しない。周りは似たような岩だらけで目印を定め難い。磁石は持っていても目印がないので使い物にならない。約一時間半道を探すも分らない。これ以上動きまわるととんでもない方向に行ってしまう可能性があることと、怪我や消耗してしまうことを心配して、活動を中止する。ガイドブックに載っていた大物忌神社(遊佐町内、電話連絡先で新山直下の神社ではない)に携帯電話を掛けてみる(12:10)。電話にでた宮司さんに状況を説明して、様子を聞くも自分の位置を説明できないので宮司さんも方向指示をすることができない。これからツエルトビバークすると伝えると共に、もし明日も悪天候が続くようなら捜索隊の手配をお願いする。次の連絡時間を打ち合わせて、様子を見るために岩陰でツエルトの中に入って待避する(12:30)。併せて自宅にも電話して状況を説明する。
 雪と風が益々強まる。これ以上待っても天気は回復しないと判断し、明ビバークした岩穴るいうちに本格ビバークをするための岩穴を探し、ツエルトにもぐってビバークに入る(15:30)。ここなら雪も吹き込まず、風も遮れる。所定の16時になったので、宮司さんに電話する。既に、遊佐町役場を通じて警察にも連絡して頂いた、ことを聞く。3人の警察官が今夜は御浜小屋で待機すること、県警のヘリを飛ばすことも連絡を受ける。こちらの状況を説明してビバークに入る。次の連絡は翌朝の6時とする。
 ツエルトに潜りこむと、自分の不注意から大変な面倒を掛けていることに自責の念を感じる。連絡せずに、事故を起こすよりはましと自分に言い訳をする。程なくヘリの音が聞こえたので、穴から飛び出してみるが、ヘリの音は聞こえるが姿は見えない。時々ほんの一瞬青空が見えることがあるので、天候は回復するだろうと信じて、再び岩穴に潜りこむ。
 ツエルトの中は思ったより暖かく、それほど寒いという感じはしない。下が岩だから多少熱を奪われるのか、眠ると寒くなり目がさめる。身体を動かし温まると眠るの繰り返し。暗くなってからは半分ウトウト眠り、半分は起きていた感じがする。夜中に温度を測ってみるとツエルトの中は約16度であった。ちょっと悩まされたのは、ツエルトの中が湿気で水滴が付着したことであった。ゴアテックスの防寒衣であるから表面が濡れても内部にはしみ込まなかった。ディバッグの中身とカメラ類がビショビショになってしまった。食料と水は翌日分も大丈夫なくらい持っていたので心配しなかった。消耗を防ぐために時々飴玉をしゃぶる。ひもじいという感じは全然なかった。寝台は比較的平らとはいえ岩なので体が痛くなる。ほんの僅かしか寝返りが打てない。この際贅沢はいえない。思ったよりよい場所を見つけたものと感心する。夜半になると風の音が聞こえなくなったので、天気が回復したのだなと安心する。
 翌朝ツエルトから這い出してみると、快晴である(5:30)。活動に備えて、軽い朝食を摂る。所定の6時に大物忌神社の宮司さんに電話をして、自分で道を探すので、次は8時に再電話する旨伝える。周辺の外輪山が見えるので、地形図とガイドブックの地図を用いて方向を確認する。ほぼ真南に進めばよいと判断して、凍結した岩場を慎重に下りはじめる(6:10)。約10分下ると左下(南南東)に大物忌神社を見つける。ここで宮司さんに電話して、神社に着いたら再電話すると伝えて下りにかかる。無事神社に下って再電話する(6:40)。
 下山をどうす行者岳のピークの間に見える月山(中央) (大物忌神社から)るか問われたので、自力で下山する旨返答する。昨晩は眠れず疲れているだろうから、山形県警のヘリで下山してはという意見があるがどうか、と聞かれる。再度、問題を起こすと更に迷惑を掛けることになると考え、ヘリの手配をお願いする。 
 余裕が出てきて外輪山を眺めていると、行者岳のピークの間に本来なら本日登る予定にしていた月山が見えた。なんという皮肉か。記念に写真を撮ったがカメラが湿っていてピントが定まらない。
5 下山  山形県警のヘリで下山
 ヘリの音が行者岳の方から聞こえたと思ったら、すぐにその姿をあらわした(8:25)。事前に打ち合わせておいた黄色の布を振って合図を送ると上空を旋回しながら下りて来た。ホーバリングしながら吊り上げてもらう。内部で簡単な状況説明しているうちに、大平山荘の駐車場に着陸した。
 鉾立まで遊佐警察署のパトカーで送ってもらい、遊佐警察署で警察と役場に状況説明するためパトカーの後を追う。関係者に謝罪とお礼を述べると、関係者は無事の帰還を喜んでくれる。簡単な状況説明で帰路につく。
 関係者の皆様には大変なご迷惑とご心配をおかけし真に申し訳ありませんでした。特に、いろいろ手配してくださった大物忌神社のI宮司さん、遊佐役場の安全環境課のT係長さんにお礼申し上げます。また、救援活動をしてくださった山形県警のAIR RESCUE隊の方々、遊佐警察署の方々にお礼申し上げます。
 
6 反省  いかに目的地が近くても引き返す勇気を持つこと  
 途中で引き返す勇気をもたなかったことが最大の問題点。今後の山行で肝に銘じて守る。それと登山カードは必ず提出すること今まで時々しか出さなかった)。
 よかった点は、無理をせずに天候の回復を待ったこと。食料も水も充分持っていたこと。ツエルトと防寒衣兼用の雨具を持参していたこと(どんな低い山に行く場合もこれは守っている)。携帯電話の持参(携帯電話がきらいで通常は山に行くときしか持つことがない)。
7 帰路
 酒田市を走行中、鳥海山が見える。快晴なのに、山頂部はガスがかかってしまっている。2時間前にはガスもなく素晴らしい天気だったのに。山の変化に今更ながら驚く。
 山形道に入ると、夜間ほどではないが交通量は少ない。片側一車線のため、時々ノロノロ車に数台の行列ができる程度。沿道の紅葉はまだまだである(昨年は10月27日に山形道を通行したが、その時は丁度見頃であった)。途中で月山が見えたが矢張り山頂部はガスがかりであった。月山は来年もっと気候の良い時に登ることにして、素通りする。
 東北道は特別混雑しているところはなかった。那須周辺の紅葉は盛りの筈だが、帰路のラッシュ前のせいかな。
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