ひとり山歩き519 : 黒滝山新登山口から大佐飛山を往復してきました。残雪は少しありましたが、尾根通しに歩いて殆ど踏むことはありませんでした。
藪を漕いで黒滝山(1754)経由で大佐飛山(1908)
2013年5月23日(木) 晴れ
1 行程
@所要時間 : 自宅(23:00) = 木の俣巻川林道の黒滝山新登山口(0:55/1:05) − 百村山分岐(1:40) − 三石山(2:10) : サル山(2:50) − 山藤山(3:40) − 黒滝山(4:35/4:45) − 西村山(5:25) − 西村山北西鞍部(5:45) − 標高1800(6:45) − 大長山(7:35/7:45) − 標高点1813(9:40) − 大佐飛山(11:00/11:20) − 標高点1813(12:20) − 大長山(13:55/14:05) − 標高1800(14:35) − 西村山北西鞍部(15:35) − 西村山(16:00) − 黒滝山(16:55/17:05) − 山藤山(17:45) − サル山(18:10) − 三石山(18:55) − 百村山分岐(19:20) − 黒滝山新登山口(19:55/20:05) = 自宅(22:00)
Aルートマップ
Bウォッちず : 大佐飛山  黒滝山  黒滝山新登山口
C写真集

2 自宅 ー 登山口
 大佐飛山は栃木県で最も遠い山と言われているが、ここ数年は残雪期に大勢の人が山頂を踏んでいる。残雪期には天候に恵まれれば、決して難しくはなく、もっとも遠い山ではなくなったように思う。藪を漕いで行くなら依然として最も遠い山といえるだろう。藪を漕いで行く方法は二通り(沢遡行を除いて)ある。ひとつは塩那道路を歩いて瓢箪峠から登る方法。もう一つは残雪期のルートと同じく、黒滝山を経由する方法である。後者は藪を漕ぐ区間が前者よりも長く、より遠い山といえるのではなかろうか。残雪期には大佐飛山には、黒滝山経由で3回、横川から瓢箪峠経由で1回登っている。この際、もっとも遠い山・大佐飛山を黒滝山経由で藪を漕いで挑戦することにした。
 昨年の5月24日(ひとり山歩き479)に大長山手前まで偵察行を行った。Webで記録を検索すると4件ほど検出できた。これらの記録を研究したり、掲示板を通じてタカハシさん、雪田爺さん、Yoshiさんとノラさんから励ましとアドバイスを頂いた。これらの情報から木の俣巻川林道の黒滝山新登山口から黒滝山経由で大佐飛山は往路は10時間、復路は8時間と見積もった。現時点では、19時過ぎまでは明るいので、1時にスタートすることにした。山では何が起こるかわからないので、万一のビバークに備えて、水と食料は通常の日帰りよりも多くした。体力的には、過去三回の山行は12時間超歩いているのであまり心配はしていない。山へ行く時は最低でも5時間位は睡眠をとっているが、今回は3時間しかとれなかったのが心配のタネである。23時頃に出発すると、まだトラックを中心に車の通行は多い。さすがにさくら市の乙畑から関谷方面に向かうと、通行量はグッと少なくなる。百村本田の光徳寺付近から木の俣林道に入り、木の俣巻川林道へと進み、左手のアルミ梯子を目印に林道を進むと、黒滝山新登山口にあっさり到着。満月に近い月明かりのもと市街地の灯りを見ながら登山準備を整えた。(車載温度計で14度・・・外気温は10位)

3 往路  計画通り10時間で大佐飛山に到達  尾根通しに歩き残雪を踏んだのは10m幅で数回 激藪ではないが漕ぐ区間がながいので労力大
 駐車地で準備中は満月で明るかったが、登山口のアルミ梯子を登り植林に入るとヘッデンだけが便り。踏跡は年々明瞭になり、地肌が露出していてこれを外す様なことはない。目は覚めていても身体はまだ半眠りで、なんとも傾斜がきつい。途中で長いトラロープ地帯を通過し、松葉が目立つようになり、最終的に低い笹が目につくようになると、主稜線の百村山分岐に達した。スタート時は10度程度で大汗をかくかと思ったが、汗が滲んだ程度。登山道周辺は低い笹が生えているが、たいしたはみだしはなく道筋を外すようなことはない。なんの目的か知らないが、平坦地に反射灯付きのロープが張ってあり、ついでカタクリ群生地を通過すると勾配は増して三石山に達する。ここからの市街地の灯りは素晴らしい。
 進むに連れて風が強くなり、夏姿では寒い位。左手の樹間に市街地の灯りを感じながら進み。勾配が増すとトラロープを二箇所通過しダケカンバの目立つサル山に達した。標識を見かけなかったので、方向が変わる地点をもってサル山とした。北西から西に変わったので、そろそろ那須見台と思ったら、すぐに標識が目に入った。残雪期に何度も通っているので、現地を歩くと先々の地形を思い出す。短いロープそして長いロープ地帯を登りつめると針葉樹の黒滝山1kmの小標識を見て山藤山に達したことを知る。山名板は高所に取り付けてあったので、この時は目に入らなかった(復路で確認。
 山藤山から僅かにに下って、登り返しになり傾斜のきつい部分に長いロープが張ってあった。3月22日(ひとり山歩き511)の残雪歩きで利用したロープと同じ場所(家でGPSで確認)だが、残雪時には雪の下になってしまうような気がする。冬用のロープもあるのかな? ロープ上端で方向を西から南西に転じて河下山に達する。夏道は山頂部の下を巻いて通過する。ここでヘッデンを格納する。風がますます強くなり、先が心配になってきた。夏シャツは薄いから風が肌にしみるが、軍手の中の指先は、冷たさを感じないから気温は低くはないのだろう。浅い涸沢に入るとロープ規制に従って左に折れて登ってゆくと、すぐに通常の道筋になった。この先は尾根の右(北)側をトラバースしながら登って行き、左手へ道筋がわかれる。左手に黒滝山山頂が見えているので、寄ってエネルギーを補給する。ここまでは暗闇でもヘッデンだけで登ってこれるが、この先は明るくなければ歩けないので、4時半到着を目指していたがほぼ予定通り。

                                                黒滝山山頂。 鴫内山稜線。 日の出。  (黒滝山山頂から) (写真のキャプションは左から、以下同じ)

 ここから西村山へは今日のコースで随一のルーファンの難しい箇所で、残雪時はトレースを利用しているのでさして困難はないが、今の時期は踏跡はすぐに消えてしまい、テープ類も多いのでルートが定まらない。しばし下って、雪の残る沢で方向を修正して尾根に取り付くと方向がやっと定まった。笹尾根を外さないように登ってゆく。密な笹ヤブを少しばかり漕ぐと、今度は灌木藪で方向を北西から西に修正すると西村山の山頂に達した。ノラさんは黒滝山と西村山の間を20分で歩いているが、その倍の40分も要してしまった(これも想定内ではあるが)。
 山名板を撮影して、コンパスを合わせて先へと進む。尾根筋は明瞭で迷うような場所はない。灌木藪が多少うるさいが、尾根の左(西)側に薄い踏跡も拾える。鞍部付近は笹藪が深いが、ガマンの範囲。胸丈の笹があったかと思うと、地肌が見えるオアシス状の場所もある。この尾根筋は笹藪が中心で灌木藪はあまりない。尾根の左(西)側は幾分かは藪が薄く獣道が拾える。標高1800(昨年の偵察行での撤退場所付近)で南西方向にに長者岳から日留賀岳が樹間に展望できた。少し上に行くと高原山方面も展望できた。標高1800から大長山までは30分程度と推測していたが、思ったよりも笹が深く50分も要した。山頂部には山名板とM大の青プレート三枚が地面に落ちていた。針葉樹林の真ん中で展望は全くない。今日は気温上昇と、万一の保険で水を3.5リットル背負って来たが、西村山以降は風が弱まったとは相変わらずの神風状態で、ここまで水の消費は0.5リットル以下である。ここでペットボトル2本(1リットル)をデポしし荷を軽くした。

                                                長者岳(中央)と日留賀岳(右奥)(標高800から)。 高原山(奥中央)弥太郎山(中央)小佐飛山から長者岳稜線(前列) (標高1810から)。


                                                 灌木藪。 笹藪。 (いずれも標高1810付近) 大長山山頂。

 山頂部から少し北に進む那須岳とと残雪歩きで見慣れた大雪堤部に残雪が認められる。未だ時期的に早すぎたかと一瞬思ったが、気を取り直して往路は尾根上を通り、極力残雪歩きをしない。復路では場合によっては残雪を利用と決めて先に進むことにした。コメツガ林の尾根上には残雪はなく、腰下の笹が続く程度で、残雪を右手に見ながら下って、次の1850級ピークでコンパスを見ると方向がずれているので軌道修正した。更に次の1840級ピークでは針葉樹の枝が進行を邪魔するようになった。笹は腰下で全然問題ないが、針葉樹藪に顔を叩かれたりしながら藪を漕いででゆく。大長山から先は藪が深くなるとはWeb情報で知っていたが、過去に栃木の藪尾根で出遭った激藪に比べたら、空中戦や水中戦がないだけ益しだ。問題は大長山と大佐飛山の距離が約3kmと長いのでスタミナが保つかである。灌木藪の中から北東に小ピークが見え、方向が北から北西に変わり標高点1813を通過したことを知る。

                                                大長山の北側から見る残雪(断続で藪に遮られる)。 1840級ピークから見る那須岳。


                                                1840級ピーク付近の藪。 1813南の灌木藪。  (藪の写真は比較するものがないと濃淡はよくわからない)


                                               1813付近から大佐飛山。1870ピーク(中央、名無山稜線)、その左が日留賀岳、左奥に女峰山か。

 標高点1813を過ぎると尾根筋は明瞭となり、灌木藪は少なくなり、笹薮が中心となって今までの藪漕ぎに比べると楽になる。尾根上にも時々残雪地帯が現れるが、せいぜい10メートル幅で横断できる。ときどき笹薮が深くなったり灌木藪に見舞われるが、スタミナ温存のために必死になって藪を漕ぐようなことはせず、休み休み登ってゆく。やがてダケカンバがチラつくと大佐飛山に山頂に達した。残念ながら山頂部には雪が多少残っているが、一番高い場所には残雪はない。すぐに三角点を探してみたが見つけられなかった。山名板を中心に撮影して、エネルギーを補給する。山名板の高さは山部3Dプレートが最も低く、2.2メートル位の高さ。過去の残雪期の写真と比較してみると、位置が異なっている。山頂からの展望は枝越しに高原山が見えるだけ。
 往路の所要時間は目標の10時間より5分短かった。山行前にチェックポイントを決めて、その間の目標時間を決めて歩くことにしているので、大幅に狂うことは少ない。山行歴12年、回数519日位にもなると栃木の山なら大体読めるようになった(自分の過去の記録と、Webの山行録も参考にしている)。

                                               尾根上の残雪(1813の北、尾根幅最も狭まる地点)。 標高1850かr見る大長山。大佐飛山山頂部。


                                               山頂の山名板、一番低い山部3Dプレートで約2.2m高さ。


                                             今年の3月22日の山頂(参考)

4 復路
 栃木で一番遠い山に来れた喜びに浸っている時間はない。復路の目標時間は8時間でこれを過ぎると登山口着が暗くなってしまう。復路は時間稼ぎで残雪を利用することにした。左下に残雪部を見て下って見ると、残雪は断続していて、藪に遮られその都度尾根上に復帰するのに時間と労力を要し効率的でない。それはわかっても、次の残雪部は長く続くかもしれないと、歩いてみてその短さにガックリする。ルートマップを見ると復路(青線)の方が東側に位置していて、しかもよろよろしているのは残雪を利用しては尾根に戻りの証。標高点1813までの下りは楽で時間も往路より当然短縮している。 1813から大長山までは標高差は小さいが登りで、往路よりも時間がかかるかと思ったが、断続する残雪部を歩いた効果あったようだ。残雪が途切れて尾根上に復帰するときに体力は消耗しているので、後半に響かねば良いがと心配になる。大長山でデポしておいた水を回収した。今日は思ったよりも涼しく、発汗は少なく水の消費も少なく、まだ1リットルも消費していない。水を少し減らそうかとも思ったが、万一を考えて背負おって歩くことにした(最終的に1.5リットルの消費で済んだ)。

                                            1813から見る残雪(大長山で期待したが実際は断続)。 1840級ピーク付近から那須岳。 1840級ピーク付近の残雪

 大長山からの下りは笹尾根で残雪は利用できないが、体力的には楽だが、思ったほどは速度が上がっていない。西村山北西鞍部付近の笹ヤブを漕ぐのがきつい。登り返しはきついが薄い踏跡を探しながら藪を避けて登る。西村山に到着して、所要時間を計画と比べると、30分は遅れている。明るいうちに下山完了は少し怪しくなってきた。黒滝山から先は登山道歩きで特に危険箇所もないので焦ることはいと自分に言い聞かせる。 今日のルーファンで一番むずかしい黒滝山への戻りになった。順調に尾根筋を下り、登り返しも順調で往路とは異なっているがテープを頼っているうちに西に寄り過ぎたようで少しばかり遠回りしてしまった。黒滝山山頂から市街地を眺めながら最後のエネルギーを補給する。
 これから先は登山道歩きで危険な場所はない。途中経過は省略する。百村山分岐で19時20分、ここまでは照明なしで歩いてきたが、この先は植林となるのでヘッデンを点灯した。下り方向ではヘッデンだけでは踏跡をとらえるには充分では。ペンライトを片手に、もう一方はストックを使って急斜面を下りてゆく。踏跡部は地肌が露出しているから充分見分けられた。慎重に下ってゆくとアルミ梯子が見えて、後戻りで下って登山口に無事帰還。復路は疲労のせいか脚が伸びず計画よりも1時間ほど長くなり、暗くなっての下山完了となってしまった。519回の山行で暗くなってからの下山完了はこれで三回目。自主規制を破ることになってしまったが、最初からある程度は予想していたのでよしとしよう。
 これで栃木で一番遠い山(実際の所要時間も最長)に日帰りできた。誰にでも勧めるわけではないが、藪漕ぎの経験と体力、気力のある人なら無雪期の日帰り往復は充分可能。さて次の残された課題は、三回だけ挑戦してよいという山が残っている。すでに二回挑戦しているので、今度が最後になるだろう。
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