ひとり山歩き479 : 黒滝山経由で大長山(1866)を目指しましたが、出発時間が遅かったので直下で時間切れとなってしまいました。黒滝山以降は藪の連続でしたが、かなりの部分で獣道を拾えました。
黒滝山(1754)〜大長山(1866)
2012年5月24日(木) 晴れ
1 行程  写真
ルートマップ(GPS)   ウォッちず : 黒滝山  西村山  大長山  黒滝山登山口
自宅(2:00) = 巻川林道口(3:40) = 巻川林道通行止め地点(3:50) = 木の俣巻川林道口(ニューコメヤ看板前)(4:15) = 木の俣巻川林道崩落地(4:40) = 黒滝山登山口(4:45/5:00) − 稜線出合(巻川林道分岐)(5:30) − 三石山(1257)(5:55/6:00) − サル山(1467)(6:40) −山藤山(1588)(7:20/7:25) − 河下山(8:05) − 黒滝山(1754)(8:15/8:35) − 西村山(1775)(9:20/9:25) − 西村山北西鞍部(9:50) − 退却地点(標高1800)(10:55/11:00) − 休憩(11:15/11:25) − 西村山(12:25/12:30) − 黒滝山(13:10/13:20) − 山藤山(13:55) − サル山(14:30) − 三石山(15:00) − 巻川林道分岐(15:20) − 百村山(15:25) − 巻川林道分岐15:30) − 黒滝山登山口(15:45/16:00) = 木の俣巻川林道口(16:20) = 自宅(18:10)

2 自宅 − 黒滝山登山口
 地形図に名称記載の栃木県の山で大佐飛山と小佐飛山は未だ無雪期に登ったことがない。自称藪屋にとってこの両座は無雪期に登っておかねばならない。無雪期の小佐飛山なら自分の藪耐性から判断してそれほど困難ではないだろう。大佐飛山については、塩那道路を歩いて瓢箪峠から登ることは可能だろう。塩那道路は一般の通行は禁じられているが、自己責任という名目でゲートをすり抜けて長者岳、鹿又岳や男鹿岳に登る人は少なくない。自分も塩原側から長者岳、板室側から鹿又岳と男鹿岳に禁を犯して登ったことがる。通行止めになっている林道の方が多いだろう。文字通り厳格に守っていたら、現在・過去に登られている山でもかなりの山が登れなくなってしまう。この程度の禁を犯すのに目くじらを立てる人は少ないであろう。そんな屁理屈を付けて、塩那道路を歩いて瓢箪峠から大佐飛山をと考えていた。
 ところが2010年10月に日留賀岳と男鹿岳に塩那道路から藪を刈り払って夏道を敷いたという情報を得た。これには我慢がならない。塩那道路を通行禁止にしておいて、そこから日留賀岳と男鹿岳に登山道を通すとはどんな考えなのか。この夏道は塩那道路を通らねばどこへ行くというのか。 こんな矛盾したことが平然と許される日本という国はどうなってしまうのか。全く解せないし、許すべからざることである。この夏道敷設に大いなる矛盾を感じてからは、塩那道路を歩いて瓢箪峠から大佐飛山には登るまいと決めた。
 残雪期に利用される黒滝山・西村山・大長山経由で大佐飛山は距離が長く、藪がひどく日帰りはとても無理と考えていた。最近、偶然にもこのルートで日帰りピストンに失敗したという記録をWebで発見した。驚異的な所要時間で大佐飛山を踏んで大長山まで戻り、日帰り確実と思われた。ところが藪でコンパスと腕時計を紛失し、どうしたわけか大長山から大佐飛山に戻ってしまい、ミスに気づいて大長山へ戻る途中で緊急ビバークした、という記録である。もうひとつはテント泊で同じルートで大佐飛山に登り瓢箪峠に下った記録である。その他には途中で引き返したという記録が何件か見つかった。これらの記録の所要時間を分析すると、体力と気力に翳りがみえる自分には、日帰りピストンはかなり難しそうである。大佐飛山の途中まで歩き、日帰りピストンの可能性を探っておくことにする。
 最近5ケ月は雪山歩きばかりしていて、藪山は半年ぶりとなる。一気に大佐飛山日帰りに挑戦しても失敗は目に見えているので、今日は大長山までを目標とする。木の俣巻川林道の黒滝山登山口からの夏道は通ったことがないので、今回は明るくなってから登山口をスタートし、途中の道筋をよく観察して、未明に黒滝山まで歩けるか調査しておくことにする。
 4月ころは百村の光徳寺側から巻川林道に入ると、途中にがけ崩れがあるという記録は知っていた。雪も融けたので崩落箇所は修復されているものと期待して、光徳寺側から巻川林道へと車を走らせた。巻川林道から木の俣巻川林道に変わると、前方に通行止めの柵が設置してあった。ここから歩いてもよいのだが、後日のことを考えて板室のニューコメヤ看板前から木の俣巻川林道に入ることにした。この林道は一部を除いて舗装してあるので走りやすいが、途中に山への取付き梯子が多数設置してある。すぐに分かるだろうと下調べを充分にして来なかったのでどれが黒滝山登山口の梯子かわからずに、崩落箇所まで行き過ぎてUターンする。そこからは梯子ごとに確認しながら戻ってゆく。黒滝山登山口の小さな標識とアルミ梯子を見つけて、近くの路肩に車を駐めて準備にかかる。廻り道をしてしまい、当初計画よりもスタート時間が小一時間遅れてしまった。
 以前は黒滝山へ行くのは光徳寺からが主流、その後ブラブラ梯子からスタートするようになった。08年3月末だったと記憶しているのだが、標高2000m超のピークを追い求めているHP「山頂渉猟を追って」の管理者・山頂渉猟さんが、大佐飛山に行く際、ブラブラ梯子(この時には名称だけが残り、梯子は固定されていた)がわからず、偶然に見つけたアルミ梯子をブラブラ梯子と解釈して急勾配の枝尾根を登って黒滝山への稜線に登りつめた。超ベテランの山頂渉猟さんは間違いにすぐに気づいたが、そのまま大佐飛山をピストンし、復路で百村山をちゃんと踏んで下山している。それ以降、登山口の標識が取り付けられて、少しでも時間短縮を求める登山者がこの登山口を利用するようになった。この二三年は残雪期に大佐飛山詣でにゆく人の大多数はここから登っているようである。自分も時間短縮のためにこのルートを利用してみることにした。今回の記録は、どうも前置きばかりがくどくど長すぎる。老人の世迷言とご容赦あれ。

3 登山口 − 黒滝山  登山道はよく整備サれている黒滝山山頂
 アルミ梯子を登ると、登山道として立派に通用するような明瞭な踏跡がついている。難をいうと歩き始めとしては勾配がきつすぎるようである。途中にお助けのトラロープまで展張してある。一汗かいて百村山から黒滝山へと通じる稜線に登りつめると、巻川林道への方向を示す標示板まで立木に設置してあった。ここからは明瞭な登山道が続き、未明にヘッデン頼りで充分歩けると確信した。場所によってはと登山道の両サイドに背丈を超す笹が生えいるが、よく整備されていて道へのはみ出しはない。カタクリ群生地と平成椈と名付けられたブナの大木(04年4月に歩いた時には標示があったように記憶)を見る。急勾配部の途中に黒滝山3kmの小標識(以降も処々に同様標識あり)を見るとすぐに三石山の山頂に達した。ここからは鴫内山が辛うじて目に入る。
 三石山はピークと言うよりは尾根の一部で下ることもなく先に進む。途中にロープが二箇所に展張してあった(これからもピーク直下の急傾斜部にはロープが展張してあり、助けられる)。急勾配部を登りつめるとダケカンバが目に付くサル山に達した。この付近は、残雪期にはテントを見かけることが多い。サル山からわずかに下ってゆるやかに登り返して方向が北西から西に変わると、右手の樹木が切れて那須岳、旭山、大倉尾根が展望できる那須見台である。注意深く見ると大佐飛山の頭も目にすることができる。標高1500から1550にかけての急勾配部にはロープが三箇所ほど展張してある。残雪期にはピッケルの助けを借りていたので、それほどの急勾配を登った記憶はないが、今の時期はロープの助けを借りないと、とてもきつい。ダケカンバ主体の広葉樹に三本の針葉樹大木をみる。そこに標識類を見て山藤山と知る。黒滝山と大長山が枝越しに辛うじて視認できた。
 山藤山から一旦下って、登り返しになると連続して長いロープが展張してある。ここが今日一番の急勾配部である。ロープの助けを借りて登りつめると、方向が西から南西に変わって広葉樹から針葉樹に植生が変わる。この山域ではお馴染みのMWVの青い標識と河下山の標識を見る。河下山と名称は付いているが小さなコブという感じ。登山道を先に進むと、突然浅い涸沢(僅かに残雪あり)に出合う。ここはこの沢を左に遡るとすぐに明瞭な登山道歩きとなる。尾根の左(北)手を巻くように登ってゆくと、道筋がY字型になり、左に折れると10メートル先が黒滝山山頂である。山頂には山型の大きな山名板、山部3Dプレートと一部破損した栃木の山紀行のプレートを見る。当然ながらMWVの青色プレートも三枚。剣先から鴫内山稜線と、那須塩原方面が展望出来るだけ。ここまでは登山道はよく整備されているので、未明のヘッデン歩きに慣れた自分には問題ないであろう。

4 黒滝山 − 大長山(手前300mで時間切れ)  藪はそれほど密ではなく、獣道を大部分で拾える  距離が長いのが難点
 山頂から10メートルばかり戻って先刻のY字型から西村山方面への踏跡を追うことにした。途中にはテープ類を多く見かける。特に目立ったのはヒラヒラリボンでこれを追ってゆくと、途中から西向きから北西に下るようになる。鞍部で少しばかり左(西)に外してしまい、沢筋に下ってしまった。この沢筋をたどると藪は少ないが、残雪が多少ありこれを踏み抜くのがいやらしく背丈を越す笹藪を漕いで尾根に復帰する。尾根上は藪は少なく薄い獣道も拾えた。ほぼ目標時間で低いシャクナゲ藪の西村山(1775)に達した。尾根筋を外さねばもう少しの時間短縮は可能であろう。MWVプレートと西村山の山名板を確認して先へと進む。
 西村山から先は尾根筋が明瞭で、尾根からそれる心配はない。針葉樹とシャクナゲの潅木藪更には笹藪と連続しているが、あまり密(自分の尺度で)ではなく、獣道を大部分で拾うことができる。とはいうものの藪に邪魔されて左へあるいは右へとルートを探すことになる。鞍部の少し手前で背丈の笹薮に突入するも下りては特に問題はない。途中で那須岳が目に入るも霞んでいいて残雪期のように感動するようなことはない。鞍部付近からは前方に大長山も目に入る。この程度の藪なら時間制限の11時には大長山には充分達すると期待できた。途中で藪のないオアシスも二三箇所あるも、潅木藪と笹薮(ルートマップには笹薮箇所のみ表示)が交互に現れる。
 鞍部からダラダラと緩やかに登ってゆく。藪密度は自分にとっては大したことはないのだが、いかんせん藪を漕ぐ距離が長いのに辟易する。その内に疲労がたまり進行速度が落ちてきたのがわかる。標高1790あたりからは背丈程度の笹薮が連続する。制限時間の11時が迫ってきた大長山までの残りは標高にして60メートル、距離にして300メートルの地点でとうとう11時になってしまった。黒滝山からは約2時間半が経過した。大長山までの目標時間は3時間でほぼ計画通りに歩いてはいる。黒滝山登山口までの1時間の時間ロスが痛かった。今日は偵察が主目的であるから、これ以上の無理はやめて退却(標高1800地点)することにした。

5 復路  黒滝山への復路はあまり時間短縮にはならない  巻川林道分岐から百村山へは10分で往復できるので立ち寄りを勧める
 復路は往路に比べて時間短縮が期待できたが、疲労と藪で思ったほどの短縮はならない。西村山からは尾根筋を外さにように獣道とテープを丹念に追いながら下ってゆく。途中でヒラヒラリボンが目につき、方向を南東から東に変える地点に達したが、大した藪でないのでこれを無視して適当に黒滝山の山頂に戻った。西村山から黒滝山間もほぼ往路の所要時間と同じ。黒滝山でエネルギーを補給して登山道下山に備える。
 黒滝山からの下山で注意すべきは、河下山と山藤山からの急斜面からの下りで展張ロープの利用を勧めたい。もうひとつはサル山からの下りで標高1360地点で直進せずに右に折れる(笹に隠れて見えづらい)ことである。明るいうちなら直進方向に「X コース外」の標識が目に付くが暗くなると、直進してしまうかもしれない。問題点ではないが、巻川林道分岐でそのまま登山口へ下ってしまわずに、百村山まで足を伸ばすことをお勧めしたい。写真を取る時間を入れても10分以内で百村山の山頂(付近はカタクリ群生地)を踏んで巻川林道分岐まで戻れるのだから(残雪期でも往復には15分もあれば充分)。大佐飛山だけが山ではない、百村山もお忘れなく。
 巻川林道分岐に戻って急斜面を注意しながら15分(往路の半分程度の時間)で無事に黒滝山登山口に下山できた。

6今日の反省と大佐飛山日帰りの可能性
 登山口に達するまでに1時間もロスしてしまった。この時間を考慮すればタイムリミットをもう少し伸ばして大長山まで行くべきだった。
 大長山から先の藪密度が上がる(Web記録による)ことを考えると、今日の退却地点から大佐飛山までの往復は8時間は見ておきたい。そうすると無雪期に黒滝山経由での大佐飛山日帰りピストンには18時間程度は要する。過去に18時間の歩きは経験しているが、その頃の体力と気力があれば到達の可能性は別にして、挑戦するかもしれない。現時点では、3:7で挑戦しない方に賭ける。今日のように気温20度(手持ちの温度計)では暑くて長時間歩きには堪えるが、4月下旬程度の気温ならよいのだが・・・。
 自分より歩行速度の上がる人には充分チャンスはあるだろう。 栃木百名山を踏破するのに楽なことばかり考える人が多いようだが、無雪期に塩那道路を歩いて瓢箪峠から登る人もいる。栃木百名山を目指している人は五万(多すぎる?)といる筈、無雪期に黒滝山経由で大佐飛山を踏破する剛の者はいないのか。そのくらい気概のある人なら五万の中に一人や二人いてもよさそうだが。百村山さえ割愛してしまうピークハンターが多い世の中だから、こんなことを期待するのはとても無理??
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