ひとり山歩き360 : 栃福県境尾根・大川峠〜大峠の細切れ歩きの最終として、深山湖から大峠、流石山、大倉山、標高点1624と周回してきました。大倉山北西の三角点ピーク(三ノ倉)から1624までは密藪の連続でしたが、展望を楽しむことも出来ました。
栃福県境尾根・大川峠〜大峠(その5、最終回)
深山湖から大峠〜大倉山〜1624周回
2009年5月26日(火) 晴れ
1 行程   
ルートマップ(GPS)   ウォッちず : 深山湖 大峠 大倉山 標高点1624
自宅(0:15) = 深山湖・大川林道ゲート(2:05/2:10) − 三斗小屋宿跡(3:25) − 三斗小屋温泉分岐(4:35/4:45) − 赤岩沢(5:15) − 中ノ沢(5:25) − 峠沢(5:40) − 大峠(6:10/6:15) − 流石山(7:25/7:30) − 大倉山(8:35/8:40) − 三ノ倉・三角点1854.0(9:05/9:20) − 標高点1697(10:25/10:30) − 標高点1616(11:25/11:30) − 番屋コル・標高点1489(12:45/13:00) − 標高点1624・反射板跡(14:25/14:40) − 腰丈灌木帯(15:10) − 尾根分岐(16:20) − 下山地点・小淵沢林道出合(17:25/17:30) − 大川林道出合(17:55) − 大川林道ゲート(18:20/18:30) = 自宅(20:30)

2 自宅 − 深山湖
 栃木福島県境の大川峠から大峠までの尾根を細切れに歩いてきたが、今回はその5回目で残った大峠〜大倉山〜標高点1624間を完了させたい。この間は県境尾根への出入りも含めると15時間以上要することは確実で多少の躊躇はあったが、06年5月21日に掲示板でお馴染みの@宇都宮さんが深山湖から大峠〜大倉山〜1624を周回しているので、この記録を参考にほぼ同じコースを辿ることにした。
 目覚ましを23時にセットして19時に床に入った。寝起きがよいので目覚ましでセット時間に起きらないということはまずなかった。ところが今回はどうしたことか、目が覚めたのは24時直前。二つの目覚ましがリセットされていた・・・無意識にリセットしたようだ。通常なら出発前に軽食とコーヒーを摂るのだが、着替えを済ませて即出発。コンビニでパンと握り飯を調達して、通いなれた深山湖北西端の大川林道ゲートへ一直線。事前計画の2時に遅れること5分で胸をなでおろす。

3 深山湖 − 大峠 − 三ノ倉(大倉山の北西峰)  大倉尾根からの展望は素晴らしい
 この区間でまだ歩いたことのないのは、三斗小屋温泉分岐から大峠の間だけである。深山湖〜三斗小屋温泉分岐までは、09年5月19日ひとり山歩き359を参照願う。大峠から流石山、大倉山、三ノ倉は03年7月3日ひとり山歩き103を参照願う。
 深山湖から三斗小屋宿跡そして三斗小屋温泉分岐までは丁度一週間前に歩いて道筋を覚えているし、途中に危険箇所はないのでヘッデン頼りに黙々と歩く。三斗小屋宿跡の先からは林道から登山道に変わり道筋は細くなるが、障害物は全くなし。熊の出没に関する注意書きがあるので、まだ起きだして活動することはないだろうが、時々下手な歌を口ずさみながら歩く。4時直前に小沢を渡渉してヘッデンを消す。その先で木橋を渡ってジグザグに急登すると計画よりやや短い時間で三斗小屋温泉分岐(山小屋まではここから1分程度)に達した。
 分岐でヘッデンを格納し、エネルギーを補給して大峠に向かう。この区間は初めて(先週ごく僅かな区間だけ偵察行したが)の歩き。隠居倉から派生す流石山から沼ッ原、西ボッチ、深山湖る西尾根を北西に少しばかり登り、北東に下って行く。大峠を見ながら小さなガレ沢を下って赤岩沢を飛び石を伝って難なく渡渉。尾根を乗り越して中ノ沢を渡渉する。飛び石にコケが付いていて滑り易いので多少の注意が必要。次の尾根を乗越している途中で今年初めてのシャクナゲの花を見る。三つ目の峠沢を渡渉して少しばかり案じていた渡渉も無事完了。登山道は赤岩沢の少し手前から地形図の破線よりも西側を通っていることを事前調査で知っていたが、帰宅後にGPS軌跡を見て間違いのないことを知る。峠沢以降はほぼ地形図通りとなる。登山道への藪のはみだしは殆どないが、両サイドの笹が高くなってきた。この笹地帯を通過すると目の前が開けて、見覚えのある大峠に達した。峠の三本槍側に五体の石像(うち四体は首なし)と反対の流石山側には一体の石像をみる。
 大佐飛山と旭岳を眺めてひと息ついて登りにかかる。ガレた登山道の急登となるが、お花の季節には少しばかり早くまだ膝丈の笹や灌木藪の緑一辺倒。高度を上げると土道に変わり、後方には隠居倉の右上に茶臼岳の頭が見え出す。ぼちぼち疲れが出てきたが、風が強く体感温度が低くて助かる。標高1750からは勾配が緩みひと息つけたが、風当たりは益々強くなる。尾根筋は痩せてはいないが裸同然で三ノ倉からの藪尾根下りが多少心配になる。勾配が緩むと前方にいくつものピークが見え出すが、高低差が少なく特徴がなくてどれが流石山でどれが大倉山か見分けが付かない。この大倉尾根は展望の良さでは足尾の中倉山尾根と栃木では双璧であろう。優しさの大倉尾根と荒々しさの中倉山尾根というところか。景色が素晴らしく立ち止まって写真撮影をしたいところだが、今日の行程は長いので先を急ぐ。三角点1812.5峰に流石山の標柱が立っていた。地形図ではあいまいで三角点峰の西隣りの標高点1822とも読み取れる。この辺りをさして流石山と言うのであろう。先週歩いた沼ッ原の貯水槽や西ボッチそして深山湖も見えている。那須岳や大佐飛山、旭岳と素晴らしい展望に先へ行くのを忘れてしまいそう。
 流石山を過ぎると向きが変わり、大倉尾根の展望も変わってくる。大倉山から三倉山そしてその中間に三角点峰の三ノ倉も確認できるようになった。登山道両サイドの藪は腰程度であるが、段々灌木が多くなり厳しさを増してきたようである。風は多少弱まって、裸尾根歩きの影響は少なくなったが、直射日光を受けて体感温度が上がってきた。遠方から大倉尾根を眺めていると、短時間で歩けそうに見えるが、実際に歩いて見ると、小ピークが多く思ったよりはアップダウンが多い。展望の良さが相変わらずで、位置変化に伴いごく僅か姿を変えるので見飽きない。標高点1831の手前で小さな池塘そして僅かな残雪を見る。地形図では標高点1831に大倉山と記入してあるが、その西の標高点1865に大倉山の標柱が立っている。
 大倉山を過ぎると今までの尾根筋とは異なり荒々しい三倉山が目に付き出す。その手前に小さく盛りがった三角点峰(三ノ倉という人もいる)が近づき、いままで四回に亘って歩いてきた大川峠までの尾根筋が見え出した。そうすると気になるのが藪。背丈は低いが笹に混ざってハイマツや石楠花の混合藪で手ごわそう。1624への尾根筋を観察して、三角点峰の三ノ倉に登って、エネルギーを補給しながら小休憩。深山湖からここまで7.5時間を計画していたが約7時間。三斗小屋温泉分岐まで先週歩いていたことと暗いうちの歩きで集中出来たことが寄与している。

4 三ノ倉 − 1624  笹を中心とした混合藪の連続で思ったよりは手ごわかった 展望は楽しめる(余裕はなかったが)
 ザックを背負って三倉山と中腹まで白い会津駒ケ岳に一瞥をくれてわずかばかり来た道を戻る。適当な場所から1624への西南西尾根に取り付く。最初に出迎えてくれたのがハイマツの混合藪である。今までにかなりの藪漕ぎをしてきたがハイマツの藪は初めてである。乗り越しながら進んでいたが手ごわい。弾みで背負い投げを食らい背中からドスン。学生時代以来の背負い投げには参った。極力ハイマツのない地帯を選んで進むが、そうするとシャクナゲが邪魔をしてくれる。藪丈は腰程度だがこの調子では1時間で次のチェックポイントの1697に着くか不安になる。下り初めて30分過ぎて標高1740辺りで灌木が少なくなり、笹の中に獣道が拾えるようになった。標高1700付近で背丈ほどの笹藪になったがなんなく突破して、計画5分遅れで標高点1697に達した。ここからはいま下ってきた尾根筋もこれから進む尾根筋も確認できる。こんな密藪など想像三ノ倉直下から1624への尾根筋も出来ないほど温和な姿を呈しているのだが、それが曲者なのだ。この尾根筋には喬木がないので展望はすこぶる良い(背丈を超す藪に入っていない限りは)。駒ケ岳、男鹿岳、大佐飛山、白笹山、深山湖が見える。
 大倉尾根で感じた風はなく、日光をさえぎる物はなくしかも笹藪の照り返しで体感温度がグッと上がってきた。標高点1697を過ぎると笹藪は深くなり、獣道も途絶えがちとなる。全体としては腰丈の笹を主とするハイマツや石楠花の混合藪歩きだが、下りに助けられ標高点1616までのこの区間もほぼ計画通りに歩けた。大倉山は遠くなり、大佐飛山に近づいてきた感じ。白笹山と沼ッ原の貯水池が辛うじて展望できる。
 1616からは獣道が拾えたと喜んだのもつかの間、2分経たないうちに背丈を超す笹藪に飲み込まれてしまった。番屋コルまで下りが続くので計画の1時間では歩けるだろうと思ったのは大間違い。標高1520辺りで小指級のネマガリダケに飲み込まれ栃木側に流されてしまった。経験者ならお分かりいただけると思うが、モンスター級のネマガリダケも目(順目、逆目にかかわらず)に沿って歩けば、努力しただけ歩行は進む。しかし、方向修正をしようと目に逆らってネマガリダケの底部を踏み越しながらトラバースするのは容易なことではない(@宇都宮さんもここでは方向修正に梃子摺ったようだ)。こんなことをしていたら暑さと疲労で消耗し切ってしまいそう。休み休みトラバースを続けて、どうにか尾根上に復帰できた。藪で様子がハッキリしないが、やや登り勾配になった地点を標高点1489・番屋コルとして小休憩をとった。
 大川峠から大峠までを歩く動機付けになった「関東ぐるり一周山歩き」(白山書房)の上野信弥氏が歩かれた93年10月頃には標高点1624の直下には東電反射板があって番屋コルへと巡視路があったが、その後反射板は撤去され巡視路も消えてしまったようで、期待に反してそれらしい踏跡は見つからず相変わらずの藪漕ぎが続く。番屋コルから約40分標高1530付近で背丈を超す笹藪から腰丈の藪に変わり、獣道を拾えるようになった。標高点1624の直下で数メートル径で地面の一部が露出した場所に到達した。ここが地形図に標示してある反射板の位置と思われる。標高点1616から番屋コルそして反射板の区間で計画の2時間が3時間となってしまった。茶臼岳を眺めながら最後の休憩をとる。

5 下山  幅広の尾根筋は宝庫が取りづらい  ネマガリダケのトラバースにひと苦労
 標高点1624から南尾根を下って小淵沢林道に下るのだが、この尾根は4月20に登ってひとり山歩き356で報告しているので参照願う。
 標高点1624までは僅かな距離だが、藪を嫌って反射板からトラバース気味に南尾根に直接出ることを考えた。平坦地はすぐに消えてモンスター級のネマガリダケを踏み越えてのトラバースとなってしまった。この苦労は先刻経験済みだが、短時間の我慢と懸命に藪を漕ぐ。30分の奮闘で腰丈灌木帯に出1624南の灌木地帯から茶臼岳ることができた。この灌木地帯を越すと樹林の中で幅広の尾根筋は見通しが利かなくなる。その先に見えている尾根筋を観察して下りにかかる。灌木地帯はすぐに終わって樹林の中に突入してしまった。傾斜と磁石を見ながら経験と勘に頼りながら下って行く。標高1500から1450への下りは尾根幅が広く、背丈を超すネマガリだけの順目に沿って下ったためにいくぶ東よりになってしまった。GPSで確認すると南西に修正するように指示していた。そのまま下ると@宇津宮さんが下った尾根筋を下ることになってしまう。時間的に余裕がないので、前回登った尾根筋を下ることにして、今日三度目のネマガリダケの踏み越えトラバースとなってしまった。直射日光の影響がなくなって暑さを感じなくなって体力が回復していたが、容易なことではなかった。逆目に沿って登り返して何度か軌道修正しながらトラバースを終えて背丈以上の笹藪を突破すると低い笹地帯の尾根分岐に達した。
 この先は尾根筋は明瞭となり、いままでのようなブラインド歩行は少なくなるので、時々コンパスを修正しながらドンドン下って行く。登るときにはきつい藪と思っていた地点も下りでは大したこともなく、最後の末端の笹の密藪突破を考える余裕も出来た。気ままなノラの山歩きのノラさんが尾根先端の西側は比較的藪密度が低いと報告していたので、今回は反対の東側に下ってみることにした。ネマガリダケ藪は深く登りには適していないが、下りでは問題なく斜面を笹に掴まりながら10分ほど下り続けると無事に小淵沢林道に下山できた。
 小淵沢(地形図ではコブキ沢となっている)林道を下り、大川林道に出合って50分で大川林道ゲートをすり抜けて駐車地に戻ることが出来た。計画に対して1時間遅れで無事完了。これで5回にわたる山行で大川峠から大峠まで歩き通すことができた。県境尾根の標高が上がるにつれて藪密度は高くなるようである。テント泊を混ぜれば県境への出入りが少なくなり楽にはなるが、反面大きな荷を担いでの藪漕ぎは体力的に苦しい。自分の体力から見てテント泊の大きな荷物を担いでの藪漕ぎは無理であろう。すべの区間を無雪の時期に歩きたかったが、1624〜赤柴山〜1504の間だけは無雪期には時間的に難しいと判断して県境尾根に雪の残る時期とせざるを得なかった。
 前出の上野信哉氏のように関東一周(その後に関東各県境一周)のような超人的なことをするだけの技術も体力も気力もないが、その一部だけでも辿ることが出来たのは冥土への良い土産となろう(こんなことをいうのはまだ10年以上?早いかな)。
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