ひとり山歩き321 : 木曽駒ケ岳に行ってきました。千畳敷から乗越浄土までの雪渓には残雪が多く、軽アイゼンでは下りで恐怖を感じました。山頂からは360度の大パノラマが広がりますが、清澄度度が低く北アや南アはかすんでいました。
木曽駒ケ岳(2956) と 南アの黒檜山(偵察)
2008年6月14日(土)、15日(日) 両日とも晴れ
1 行程
ルートマップ(GPS) 
6月14日 :自宅(1:25) = 駒ケ根高原菅の台バスセンター(5:55/7:12) =(バス)= しらび平(7:45/8:00) =(ロープウェイ)= 千畳敷(8:07/8:35) − 乗越浄土(9:10/9:20) − 中岳(9:45) − 木曽駒ケ岳(10:15/10:45) − 乗越浄土(11:25/11:35) − 千畳敷(12:25/12:40) = しらび平(12:47/13:10) = 菅の台(13:35/14:50) = 三峰川林道大曲ゲート(17:40、車内泊)
6月15日 : 大曲駐車場(2:00) − 巫女渕の霊泉(2:20) − 塩見新道口(2:45) − 小熊沢取水堰(4:10) − 三峰川渡渉地点(熊沢出合すぐ先)(4:25/4:55) − 尾根偵察後退却(5:30) − 三峰川渡渉地点(6:05/6:35) − 大曲駐車場(8:45/9:05) = 駒ケ根でタイヤ交換(11:00/11:35) = 佐久IC(14:10) = 自宅(16:20)

2 自宅 − 駒ケ根高原菅の台バスセンター − しらび平 − 千畳敷
 梅雨の中休みを見つけて、南アの黒檜山(くろべいやま)に行くことにした。林道歩きが長いので、いつものように早朝に家を出て日帰りというわけには行かず、どうしても前泊が必要となる。前日に時間調整と身体の鈍り解消をかねて、近場の木曽駒ケ岳に登ることにし、一番楽な千畳敷から駒ケ岳山頂を目指すことにした。そのためには駒ケ根高原の菅の台バスセンターでバスに乗り換えてしらび平に行き、そこからロープウェイで千畳敷まで行かねばならない。自宅から伊勢崎ICに行き駒ケ根ICまで高速を乗り継ぐと320km、5650円(夜間割引3400円)で所要時間は約4時間30分。佐久ICで下りて一般道を通ると270km、4時間40分で2550円(1550円)という推算になる。早朝だから一般道でも渋滞はない。万一多少の渋滞に巻き込まれても、時間的な余裕は充分あるので当然のことながら後者を選ぶ。
 菅の台から7時始発のバスに乗れるように見計らって家を出る。一般道・北関東道・関越道・上信越道を乗り継ぎ佐久ICで下りて、一般道で駒ケ根高原菅の台バスセンターまでの実績は4時間30分でほぼ推測どおりで1800円の節約(これで栃木の山行一回分となる・・・これでどこへ行こうかな!!)。バスセンターに隣接する駐車場にはすでに10台位が駐まっていて、それぞれ準備をしている。準備を整えて(登山靴を履くだけ)バス停のベンチに一番乗りし、約一時間の時間調整。
 その後どんどん自動車が駐車場に入り、いつの間にかバス停に長い列ができる。7:12の始発には案の定、乗り切れない人が20人位いたようだ。バスは谷間を通るので展望はまったくない。約30分の乗車でしらび平に到着。15分待ちでロープウェイで出発、途中で展望はあるが山頂で見れるとばかりガイドの説明は聞き流し。7分で千畳敷に到着。登山届けを記入してロープウェイ駅から外に出ると、千畳敷カールの残雪は予想していたよりははるかに多い。ピッケルを持参している人が多いのが頷けた。

3 千畳敷 − 乗越浄土 − 駒ケ岳山頂  千畳敷カールは残雪がいっぱい  ピッケルを持ってくるべきだった 千畳敷の雪渓
 装備は6本爪の軽アイゼンとシングルストック、半数以上は12本爪アイゼンとピッケルを装備している。12本爪アイゼンとストックの人もいる。自分のような軽アイゼンとストックの組み合わせは少数派。事前の調査不足で観光気分で来たのを悔いてもどうしようもない。カールの上部は勾配がきつそうで、しばらくは逡巡する。ストックで出かける人が見えたので、意を決して残雪に足を踏み込む(家に帰って調べなおすと、6月13日時点で積雪は1.5メートルで気温は9℃程度。雪面は融雪により滑りやすいので冬山装備で出かけることとあった)。雪面は確かに融けかけて滑りやすいが、前者のステップを追えば特に問題はなかった。標高2750付近からは勾配はかなり増して足取りが遅くなる。途中で気づいたのだが、登りの踏駒ケ岳山頂跡はあるが下りの踏跡は全然見当たらない。その時点では、平日の登山者が少なく消えてしまったのだろうと深くは考えなかった。乗越浄土の直下で夏道が現れたので、アイゼンを外しながらロープウェイ駅の方を見下ろすとかなりの勾配で、下山時の不安がよぎる。途中で戻る人がいないのだから大丈夫なのだろうと、夏道を3分ほど登ると稜線に到達して道標で乗越浄土に達したことを知る。
 右手に伊奈前岳を見ながら左手の宝剣山荘に向かう。数分で残雪の山荘前に到着。テントを張っているのを横目に、山荘の左から裏を回って進むとすぐ先に天狗荘が見えてくる。残雪はなく岩道歩きとなる。わずかに登ると岩峰の中岳山頂で、前方に駒ケ岳山頂、後方には宝剣岳と空木岳が展望できる。駒ケ岳山頂での展望を期待して、頂上山荘を見ながら鞍部に下り、部分的に残雪を踏みながら約100メートル登り返すと駒ケ岳山頂に達した。乗越浄土からは途中で風の強い箇所もあったが、カールの残雪歩きとは異なりハイキング気分で歩けた。
 山頂からは360度の大パノラマが広がるのだが、御嶽山と乗鞍山は山頂部がガスがかかっている。北アルプスはかすんでいて見えない。南アルプスは甲斐駒ケ岳は認識できるが他はかすんでいる。八ヶ岳は見えない。はっきり見えるのは空木岳方面だけ。晴れてはいるのだが、今日は展望には恵まれない。大勢いた登山者もいつの間にか自分を含めて三人になってしまった。特に急ぐ訳ではないが下山にかかる。

4 下山  残雪の多いときに軽装備(軽アイゼンとストック)で雪渓を下るは恐ろしい宝剣岳(手前) 空木岳(後方)  (中岳から)
 往路を戻る途中で多数の登山者に出遭う。中岳巻き道は積雪期通行止めという標示を見中岳山頂経由で宝剣山荘に戻る。宝剣岳に大勢が取り付いているのを見ながら、岩場は嫌いなので寄らず乗越浄土に進む。あれだけ大勢いた登山者が乗越浄土から見下ろしても下る人は見かけない(登ってくる人は見かける)。たまたま下山者が途切れたものと解して、わずかに夏道をジグザグに下り、アイゼンを装着する。
 夏道の先端から雪渓に踏み込み下りだす。往路でも気付いていたのだが、やはり下りの足跡が全然見当たらない。しばらくはシングルストックを頼りに登りのステップに合わせていたが、弾力性の落ちた膝に負担がかかり、30メートル下ると急に恐怖心が湧いてきた。岩場とかやせ尾根等の開放された高所が苦手の自分には、ピッケルなしでは無理なのだと思うと足が進まなくなってしまった。前方にも後方にも下山者はいない。この時点で大勢が宝剣岳に向かった意味がわかった。宝剣岳から極楽平経由で千畳敷へ戻るらしい(家に帰ってWebで調べてみると6月上旬の残雪が多いときに宝剣岳・極楽平経由で戻ったという報告を見つけた)。左手(東側)の岩稜の裾に夏道の一部が現れているので、20メートルばかり横歩きし、雪上に現れた夏道の上でエネルギーを補給しながら考える(これだけ困っているのに食欲は衰えないのだから体重が減らないはずだ!!)。このまま慎重に雪渓を下るか。登り直して宝剣岳・極楽平経由にするか。あと50メートルも下れば勾配は急激に緩む。雪渓を観察すると自分のいるところからは岩沿いに伝い歩きができそうだ。たまたま通りかかった登山者に様子を聞くと、勾配が緩む地点までは岩場が続いているようだ。その人が通り過ぎると下には登山者はいないので、小さな岩が崩れ落ちても大丈夫。意を決して岩の上や岩を伝って下り始める。この付近に夏道が埋まっているようで、ロープやポールが時々雪上に見える。「スケート場の手摺り掃除屋」と同じで、藪屋の自分には手に触るものがあると安心感が宿る。岩場切れるとハイマツ地帯となり、標高が2750で勾配が緩んだので踏跡に戻った。そこからは今までの苦労が嘘のような快適な歩きとなる。振り返っても下山者は見当たらない。どこへ行ってしまったのだろう?? 千畳敷に着いたら朝とは異なり、観光客が大勢たむろしていた。 ロープウェイに乗るまでしばらくは雪渓を見上げていたが、下山者は見かけなかった(約1時間・・・たまたま途切れたものだろうか??)

5 翌日に備えての移
 林道の途中でフラットタイヤ  翌日の黒檜山は登山は中止して取り付きの偵察に決める
 ロープウェイに乗り込んでも観光客ばかりで登山者らしい人は見当たらなかった。しらび平でバスに乗り継ぎ菅の台バスセンターに戻る。近くの「こまくさの湯」で汗を流し、頭を切り替え翌日の行動に備える。
 翌日の食料を近くのコンビニで調達して、まずは長谷村の道の駅「南アルプスむら長谷」に立ち寄って、ザックの内容物を詰めなおす。甲斐駒ケ岳や仙丈ケ岳に登る際の駐車地の仙流荘にわずかな横道をする。今年は北沢峠行きは7月1日かららしく(Web調べ)駐車台数は少なかった。そのままUターンして三峰川林道を目指す。仙流荘口から4kmほど先で国道152号から左折してさらに2kmほど進むと三峰川林道口で全面通行禁止と工事期間H19.1.27-H20.4.10の看板があり移動柵のゲートは開になっていた。その先約4kmで舗装からダート道となり管理状態は概してよいが、処々に小さな落石を見る。ダート道になる直前で前方に黒檜山(くろべいやま)と稜線が見えた。ダートになって1km先にゲートを見るも開放されていた。途中で釣り人らしい車と数台すれ違う。走行状態がおかしいので下りて調べると、右後輪がフラットになっていた。大曲のゲート(駐車場)までは近いのだが、予備タイヤに交換する。タイヤの交換は毎年2回は自分でやっているので、一輪交換するのはわけなかったが、トランクの荷物の出し入れの方がよほど面倒かった。(フラットタイヤは落石に乗り上げたときに発生したものと思われる。ちなみに走行距離は約12,000kmで実質1年しか使用していない。)
 タイヤを交換しながら考える。このまま街に戻って修理は時間的に遅すぎる。翌日に黒檜山に登ってから街に戻りタイヤ修理では今日と同じで遅すぎる。予備タイヤで家まで300km戻るのは不安。困った困った!! 取りあえずは大曲ゲート下の駐車場に行って考えよう。タイヤ交換から10分も走ると大曲ゲートで下の駐車場に2台の車が見える。 自転車で戻って来た釣り人に熊沢付近の様子を聞くと、雪は皆無で三峰川は膝程度でわたれるだろうとのこと。コンビニ弁当を食しながら出した結論は、翌早朝に三峰川林道を歩き黒檜山の取り付き地点を偵察しても戻ることにした。弁当を食べている最中に、品川ナンバーの主は釣りから戻ってきて、車に乗って帰て行った。
 やることがないので、座席を倒してラジオを聴きながら横になる。相変わらずの寝つきで19時半頃には寝てしまったようだ夜半に肌寒くなり持参のタオルケットを被って再び眠りにつく。

6 黒檜山偵察行  尾根取り付き部はなんとかなりそう黒檜山の取り付き(後方)
 翌朝1時に目を覚ますと、星空で今日も好天となりそうだ。相変わらず天気の読みはうまく当たる。軽く朝食を取り、前日に詰めたザックを担いで2時に駐車場を出発する。林道は広く管理も行き届いている。巫女渕の霊そして塩見岳新道口まで三峰川の左岸を歩く。新道口には物置程度の小屋があり、傍に登山道崩落のため通行不可の看板を見る。
 新道口で橋を渡り右岸歩きとなる。林道の管理状態は大曲ゲートまでよりはよいくらいで、ヘッデンで歩くには全然問題なし。交通事故の心配がないだけ自宅付近の早朝ウォーキングよりははるかに安全。小熊沢取水堰を通過する頃には、かなり明るくなる。左手に小さな小屋を見たので目的地は近い。熊沢出合の先で適当な場所を見つけて三峰川に下りる。持参した履き古しの運動靴に履き変え、ズボンを腿までまくり上げて、ストックで探りながら渡渉する。膝の深さで渡れたが、たったの10数秒でも痛いほど冷たい。
 取り付き点を確認して戻るつもりだったが、尾根先端の急斜面の様子を探ることにした。灌木が少なく地面のやわい急斜面を適当に南東に登ってゆく。「山頂渉猟を追って」の管理者氏の報告にある巻き道らしい踏跡を辿る。途中から尾根筋を直登し始める。雰囲気からしてひとつ手前(北側)の小尾根を登っていうようだ。戻ってやり直そうとしたが、今日は偵察に来たのだからとそのまま直登すると大岩につき当たってしまった。高度から判断してもうすぐ尾根上に届きそう。でも周囲の雰囲気が悪いので、あっさりあきらめて退却にかかる。この程度の尾根筋なら数十メートルの登りでもなんとかなりそう。灌木につかまりながらさしたる危険を感じずに下れた。次回に来るときはもっと熊沢側に進んで尾根に取り付くべし。
 三峰川に戻り運動靴に履き変えて渡渉する。一番心配した尾根取り付き部は何とかなりそう。問題はリベンジの意欲が湧くかどうかだ。復路では写真を撮りながら戻る。大曲の駐車場には5台の車が止まり、川原で釣りをしている人も見える。帰り支度中に来た車の主はザックを背負って(ダブルストックが見えたから山行であろう。塩見岳にでも行くのかしら。

6 帰路
 街に戻ってタイヤの修理をせねばならないので、ノンビリしてはおれない。国道152号に戻った地点でカーナビでガソリンスタンドを検索して最寄のスタンドに急ぐ。どこをどう走っているのか知れないが、山道を抜けるとすぐに目的のスタンドに着いた。ところが閉鎖の札とロープが張ってある。再検索すると200メートル先にスタンドがあり、飛び込んで修理を依頼する。ソフトドリンクを飲みながら待っていると、側面がバーストしているので修理は不可能といわれる。その店には同じサイズのタイヤがないので交換もでできないといわれた。近くに最近できたばかりのオートアールズを紹介してもらう。4本セットを購入する持ち合わせもないので、弱った旨伝えると、1本でも売ってくれるとの答えに地獄のどん底から娑婆に戻った気持ち。
 オートアールズで事情を話すと、いとも簡単に答えを出してくれた。一番安いので8,700円のものあり、諸費用込みで10,200円。30分ほどで交換を終えて帰路につく。少しでもタイヤ費用を回収のために駒ケ根から高速に乗らずに、往路と同様に佐久まで一般道を走り、高速に乗る。最初は高速道で慎重に運転していたが、性格どおり(想像にお任せ)の運転で自宅に戻る。今後は遠征時にはクレジットカードを持参せねばなるまい。 

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