ひとり山歩き288 : 岐阜県の新穂高温泉から槍平経由で槍ケ岳に日帰りをしてきました。槍ケ岳の穂先には思ったよりも簡単に登れました。山頂からの展望は抜群で9時間の登りの苦労も吹き飛んでしまうほどでした。往復16時間40分で、暗闇の出発ですが登山道がしっかりしているので特に問題はありませんでした。
新穂高温泉から槍ケ岳(3180)
2007年8月1日(水) 快晴
1 行程
新穂高温泉(0:00) − 穂高平小屋(0:50) − 白出小屋(奥穂高分岐)(1:35) − 滝谷小屋(滝谷沢渡渉)(3:00) − 槍平小屋(4:40/4:50) − 最終水場(5:35) − 千丈沢乗越分岐(6:35) − 飛騨乗越(8:25) − 槍ケ岳山荘(8:40/9:00) − 槍ケ岳(9:15/9:40) − 槍ケ岳山荘(9:55/10:25) − 飛騨乗越(10:35) − 千丈沢乗越分岐(11:15) − 最終水場(12:05/12:10) − 槍平小屋(12:55) − 滝谷渡渉(13:55) − 白出小屋(15:15) − 穂高平小屋(15:50) − 新穂高温泉(16:40/17:35) = ひらゆの森(18:10/18:45) = 途中のSAで仮眠(約2時間) = 自宅(8/2 2:35)

2 出発前
 昨年の9月に馬場島から早月尾根経由で剱岳を往復した時は17時間要した。今回の新穂高温泉から槍平小屋経由で槍ケ岳往復の所要時間を推測してみた。前者は標高差2240m、距離約7km、往復時間(休憩含み)は17時間。後者は標高差2080m、距離約12km・・・このデータと同じコースを往復した人とのデータから極めてラフな推測で、剱岳の所要時間とほぼ同等と答えが出た。明るいうちに新穂高温泉に戻るには剱岳の例に倣って早朝(通常の人にとっては深夜だが、自分にとっては早朝)の1時に出発することにした。
 昨日の17時頃に車内で夕食を摂って、横になっているといつの間にか寝てしまった。多分18時頃には眠りについたようで、駐車場に入ってくる車のライトで時々目が覚めたが、すぐに睡眠に戻った。目覚ましは24時にセットしておいたが、22時半頃に目が覚めてしまった。多少興奮しているせいか、完全に眠りからさめてしまった。車内で悶々しているよりは、出発した方が精神衛生上(?)よろしいと考え、区切りよく8月1日0時に登山指導センター前を出発することにして、早速支度にかかる。
 登山指導センターで登山届けを記入し、体調を整えて0時になるのを待つ。当然のことだがこの時間帯に行動している人はいない。

3 新穂高 − 槍平小屋  登山道がしっかりしているので危険な所はない  暗闇では滝谷の渡渉は要注意
 0時に用意ドンで、蒲田川右俣林道へ進む。林道は最初の1kmくらいで舗装から砂利道となる。一部で工事中だが、白出小屋先の終点までよく管理された林道で非常に歩きやすかった。約15分歩くと橋の手前にゲートがあり、横をすり抜けて進む。出発して約20分すると道路の右手に穂高平への近道の小さな標示を見て、山道のショートカットを利用する。林道に再び出合う地点に穂高平避難小屋(素泊まりの営業あり?)を横目に先へ。林道は樹林の中を通っているが、荒れたとこ滝谷にかかる木橋ろが全くないのでヘッデンの弱い灯でも安心して歩ける。栃木の林道を早朝に歩くのに比べたら高速道路を歩いている感じ。突然右手に奥穂高への分岐を見る。ここが白出小屋(奥穂高分岐)で「白出沢ルートはスノーブリッジ危険につき通行止め」の標示があった。更に数分林道を進むと終点広場となる。
 林道終点から白出沢に下りて渡渉するのだが、通常は涸れているので問題なく渉れる。沢の中は岩が多くて暗闇では踏跡が分からない。直角に進むと対岸の岩壁に○と←が見え、容易に登山道に入ることができた。復路で確認するとピンクリボンが取り付けてあり、明るい時には間違いようがない。白出沢を渉ると登山道歩きとなるが、道筋は明瞭でヘッデン頼りでも迷うことはない。これから先ずっと続くのだが小岩がゴツゴツして笠ケ岳と残月いて歩き易い道ではない。最初は緩やかにアップダウンして高度がなかなか上がらない。勾配が幾分上がると、ブドー谷の小標識を見て、幅1mもないような沢を跨ぐ。次に出合う沢はチビ谷でここも直角に横切ればどうということはない。左下に蒲田川右俣谷の沢音を聞きながら進むと、登山道は滝谷避難小屋(復路で確認)の手前で滝谷に下る。この沢は水が流れていて30cm幅の板橋が架かっている。恐々渡ると、岩が多くて踏跡が分からなくなってしまった。適度にピンクリボンがついているのだが、ヘッデンの照明では次のリボンが見えない。沢音を聞きながら、幾分北東に進むと右俣谷の左岸に登山道が見つかった。明るい時ならリボンも見えるし全然問題ないのだが、暗闇の歩行ではここが今日一の難関であった。
 滝谷を渡り右俣谷の左岸に復帰すると、ほどなくこの沢を最初に遡ったという藤木久三氏のレリーフを見る。その前の水場で喉を潤す。事前の調査(早朝出発者の報告)ではこの沢を越してしまうとルーファン上の難所はない、と安心したのが大間違いで思わぬ落し穴が待っていた。問題の水の流れる沢に出合った。○に従って渡渉するも大きな岩がゴツゴツしていて踏跡が分からなくなる。途中の○の地点で薄い踏跡が上流に向かっていた。これを追うとすぐに消えてしまった。これで元の位置が分からなくなってしまった。時計を見ると4時チョッと前、暫く待てば明るくなると気持ちを落ち着かせ、地形図を取り出して調べると南沢ということが分かった。早朝出発者は自分より健脚者ばかりで、明るい時間帯にここを渡っているようで、特記がなかったので注意マークをしていなかったのだ。転倒に気をつけながら沢の対岸寄りを下ると、登山道入口の○を発見して事なきを得る。約20分ロスしてしまった。この沢も直角に渡ればなんでもなかったのだ。今日のコースでは沢は直角に渡ることが肝要!! 但し、滝谷沢だけは例外。
 登山道に戻れば問題はない。勾配が緩くなり、人工的に石を敷いたと思われる地点を過ぎて、小さな沢を渡ると槍平小屋にたどり着いた。ここでザックをおろしてヘッデンをしまって軽くエネルギー補給。小屋の外には人の気配はまだない。ここまでは計画では4時間30分を計画していた。途中の20分ロスがあったが、挽回すべく焦る必要はない。変動範囲内と自分に言い聞かせて、腰を上げる。

4 槍平小屋 − 槍ケ岳  槍穂先へは思ったよりは簡単   山頂からの展望はすばらしく筆舌尽くしがたし
 小屋の先にキャンプ場があり、二張のテントを横目に先に進む。樹林の中の登りが始まると、標高2000mの小標識を見る。以後3000mまで100mごとに設置してあるので現在位置を見るには好都合。標高2150付近で大喰沢を渡る時に右上に大喰岳付近が見えて、北アルプスに来たのだっと実感す笠ケ岳方面と槍ケ岳山荘  (槍ケ岳山頂から)る。標高2000m付近で相次いで二人に追い越される。最終水場の標識のある沢で水を補給。今日は2リットルの水を背負って出発して、まだ500mlも飲んでいないが、念のために補給しておく。
 最終水場を越すと登り勾配は一層きつくなる。後方(南西)には笠ケ岳が見えるようになり、その左上に残月を見る。ほどなく樹林の切れ目から視界が広がり始めた。標高2450mを過ぎると樹林限界を超し西鎌尾根から飛騨乗越あたりを眺めながらのきつい登りになる。槍ケ岳山荘は見え隠れする。登山道の両サイドはお花畑だが、花には関心がないのでいつになっても名称を覚えられない。登山道は大部分が岩がゴツゴツしている。部分的に砂礫の所もあり、急勾配と相まって歩行速度がグッと落ちる。歩を休めて振り返るたびに、笠ケ岳が手前の稜線より高くなっている。救急箱が設置してある千丈沢乗越分に達した穂高方面 右奥は乗鞍岳  (槍ケ岳山頂から)。遠方より人声が聞こえるようになり、千丈沢乗越付近に2名の姿を確認する。ほどなく飛騨乗越方面からは下山してくる人とすれ違うようになる。
 千丈沢分岐から飛騨乗越までは450mも登らねばならない。常日頃は薮山ばかりでブラインド歩きに慣れているので、先が見通せるのも楽ではない。450mの登りに1時間50分要してやっと飛騨乗越に登りつめた。ここから目の前に槍の穂先を見て元気が回復。乗越から更に登り、キャンプ場を通り過ぎると槍ケ岳山荘は目の前だった。小屋前には数人が憩っていた。槍の穂先を見て、高所恐怖症の自分に登れるか不安になる。槍に登る前にエネルギ−を補給しながら身体を休める。小屋前からは富士山が見えているが景色には目が向かず、どうしても槍に向く。槍に取り付いている人の様子を窺う。小屋から見て左側を登り、右側を下るようになっていらしい。
 ここまで来て穂先に登らずに帰ったら笑い者になる。ザックをデポしてカメラと水筒をたすき掛けにして、風が強いので念のために雨具の上を着用して槍に向かう。標示に従って登って行くのだが、岩には手がかりが多く予想以上に登りやすい。途中からは鉄梯子を利用したりであっけなく槍ケ岳山頂に達した。手がかりは多く、岩壁を見ながらの登りで周りの景色が目に入らないから恐怖感は全く生じなかった。親子三人組と入れ違いで、山頂を独り占めとなった。360度の大パノラマで筆舌に尽くしがたい。ユックリと山座同定をしている時間がないので後日写真に頼ることにした。下手な文書で槍ケ岳がつまらない所と思われてはいけないので、敢えて書かないことにする。どうしても読みたい方は他の報告を参照願う。9時間もかけて登って来た価値はある。単独行の女性が登って来たのと入れ違いに満足しながら下山にかかる。

5 下山  槍平泊まりの登山者多い いよいよ夏山シーズン来る
 槍からの下りも梯子あり鎖ありで標示に従ってトントン拍子。高所恐怖症の自分に登下降できるのだから誰にでもできる。槍ケ岳山荘まで登れるかは別問題だが。山荘でエネルギーを補給し、荷物をまとめて下山にかかる。上高地・槍沢ルートで登ってくる人が増えだしたようだ。飛騨乗越から千丈沢分岐を通過する際は、多数の登山者と出逢う。上高地ルートに比べたら、このルートは少ないと書いてあったが、登る人はけっこう多いのだと感心。急勾配だから下りは速い!! 槍ケ岳山荘から槍平小屋の間は往路は4時間要したが復路の下りは2時間半。槍平からは勾配が緩むのと、疲労が相まって足運びが思うようにできず。往路4時間40分に対して復路3時間45分。
 往路でロスした南沢も直角に渡れば何の問題もない。滝谷も明るければリボンを難なく追えるので問題ない。滝谷を過ぎると登山者が増えだした。20名以上の団体が三組もあった。この人たちは多分槍平小屋に泊まるのであろう。槍平小屋のHPを事前に見たら8月1日は混雑日になっていたのが頷ける。小屋の定員は80名とある。百数十人が泊まるらしい。最盛期にはもっと混雑するのだろうか。これを見たら山小屋泊まりが益々嫌になってしまった。
 白出沢を渡って林道歩きなると、もう登山者に出逢うことはなくなった。白出小屋は奥穂高道に少し入った所に確認できた(無人の避難小屋?)。穂高平避難小屋(素泊まり営業中)からショートカットを取らずに林道を歩いたが、途中に工事中の箇所もあったりでかなりの遠回りになってしまった。新穂高温泉登山指導センターに戻り、下山届けを提出して、無事に槍ケ岳日帰りピストンが完了。

6 帰宅

 無料駐車場に戻って荷物をトランクに収めて、登山指導センター前の無料温泉に向かう。なんと温泉は16時までなのだ。下山時調べておけばよかった!!  村営で無料ときている登山者の都合でなく従業員の都合で時間を設定しているのに気付かないとは、薮山歩きばかりで世間の常識は忘れてしまったようだ!? 当初計画通りひらゆの森に向かう。途中で日帰り歓迎の看板を見てよってみると18時までと断られてしまった。
 ひらゆの森で温泉に浸かり、158号を旧道を経由で中の湯温泉に向かう。安房トンネルを通る有料道に向かってしまうのか、中の湯温泉まで通行する車は一台もなし。焼岳の新中の湯温泉登山口に二台止まっていた。場合によっては焼岳もと考えていたが、疲労と食料品調達の都合で諦めて松本ICに向かう。長野道に乗るとすぐにSAがあったので約2時間車中で仮眠をとる。これは居眠り防止とETCの時間割引を利用するため。伊勢崎ICで高速道を降りると急に眠気がもよおしてきた。小休止を何度も重ねて、普段なら起床してウォーキングに出かける時刻の2:35分に無事家に戻る。荷物はそのままに蒲団の中へ一直線。 
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