ひとり山歩き285 : 奥鬼怒林道トンネル入口からコザ池沢を登り、黒岩山に行きました。曇天で山頂からの展望は望めませんでした。赤岩沢の右岸尾根を下りましたが、ネマガリダケと灌木の密藪尾根で苦労しました。
コザ池沢ルートから黒岩山(2162)〜赤岩沢右岸尾根
2007年7月6日(木) 曇り
1 行程
ル−トマップ 
自宅(0:40) = 女夫渕温泉(3:00/3:20) − コザ池沢出合(4:15) − 奥鬼怒スーパー林道出合(5:05) − 奥鬼怒トンネル入口(6:10/6:20) − 鬼怒沼山北最低鞍部(7:30) − 水場(小松湿原口)(8:40/8:50) − 黒岩清水(9:15) − 尾瀬分岐(9:35/9:40) − 黒岩山取付き(9:50) − 黒岩山(10:10/10:30) − 黒岩山取付き(10:50) − 黒沼田代(11:00/11:05) − 2000ピーク(11:20) − 赤岩沢右岸尾根の標高1650付近(14:20/14:35) − 黒沢出合(16:30) − 黒沢林道出合(16:40) − 女夫渕温泉(17:35/17:55) = 自宅(20:05)

2 自宅 − 女夫渕温泉
 黒岩山〜台倉高山〜帝釈山の県境尾根に栃木側からアプローチしたことがない。ボチボチこの方面にも足を伸ばしたいと考えている。WEBで情報を得られるが、利用する林道の崩壊状態は自分の目で見ないと安心できない。林道の崩壊箇所を他の人が通れるからといって、高所恐怖症気味の自分には通れるとは限らない。先ずは、女夫渕温泉から黒沼林道や魚沢林道の偵察に行ってみようと朧気に考えていた。黒沢林道は特に問題がなさそうなので、第一段階としてこれを歩いてみようと思った。ただ歩くだけでは面白みがないので、黒岩山から赤岩沢右岸尾根を下ってみようと考えた。赤岩沢を遡って魚沢を下るのは、沢登りの定番だが、両沢に挟まれた尾根歩きの報告は見かけなかった。唯一の例外は、当掲示板でお馴染みの宇都宮さんである。その宇都宮さんも赤岩沢右岸尾根を登り、途中退却している。強烈な薮が予想されるが、下りなら何とかなるだろうと考えた。
 近々実行しようとしていたところ、栃木の山283+の山部さんが、コザ池沢筋の尾根を利用したり、奥鬼怒トンネルからコザ池沢を遡り、鬼怒沼北側の最低鞍部に登ったとの情報を得た。これを利用すれば、女夫渕温泉から鬼怒沼経由よりは時間短縮が図れる可能性があり、早速応用してみることにした。自分の山歩きの基本方針「明るくなったら登り、暗くなるまでに駐車地に戻る」を今回も実践、そのためには深夜の出発となる。途中で道路工事中のために若干の遅れはあったが、ほぼ予想通りに女夫渕温泉に到着した。平日ということもあり、駐車場には数台しか見かけなかった。

3 女夫渕温泉 − 奥鬼怒トンネル − 鬼怒沼山北鞍部  通常ルートに比べて時間短縮はあまりない 下山では時間短縮は期待できる
 女夫渕温泉から加仁湯方面に早朝に行くときは、安全を考えて奥鬼怒スーパー林道経由で行くことにしている。今日はコザ池沢出合から尾根に取付くので鬼怒川沿いの遊歩道を歩かねばならない。林道を15分ほど歩いて、仮設の遊歩道に入ったが、間違って工事用の踏跡に入り10分ほどロスしてしまった。正規のルートに奥鬼怒トンネルとゴザ池沢(左)戻ってからは特に問題なく遊歩道を進む。大きな橋を二つ連続して渡り、更に進むと右手から流れ込む沢に小さなコンクリートの橋が架かっている。ここがコザ池沢出合で、スーパー林道歩きを少なくするために、沢の右岸から北西に伸びる尾根に取付くことにした。
 薄い踏跡を追って尾根に登り始める。大岩の右下を巻いて進むと、踏跡は沢沿いに別れてゆく。仕方なしに地面の緩い急斜面を尾根上目指す。尾根は痩せて根が張り出したり、岩が露出しているが薮がなく、快適とはいえないが歩きづらいというほどではない。小ピークからはスズタケ薮を漕ぎ次の小ピークの先で奥鬼怒スーパー林道に出合う。
 砂利道の林道はよく管理され歩き易いが展望はない。ライヤミ沢を渡って北に進み、林道が西に方向転換する地点からは、前(北)に黒岩山への稜線を間近に見る。振り返ると女峰山や太郎山が展望できた。ここからは直線的に西に進むことになり、黒岩山がだんだん遠のいて、前(ゴザ池沢の滝西)方には鬼怒沼山北鞍部から2070ピーク付近が窺える。方向転換から約15分で奥鬼怒トンネル入口に達する。トンネル内を覗き込みながら軽くエネルギー補給をする。04年6月に女夫渕温泉から林道歩きでここまで3時間15分で歩いた。今回は、遊歩道経由で2時間40分(10分のロスを差し引く)要した。ルートが異なるので正確な比較はできないが、尾根経由でショートカットしてもせいぜい20分の短縮にしかならない。自分は登りが苦手なのでその労力を考えたら、20分程度の差なら尾根は通らない方を選ぶ。
 トンネルの左手がコザ池沢でここから沢筋を辿って、鬼怒沼山北最低鞍部に登ることにする。伏流の沢を辿ると、すぐに砂防ダムが現れる。ダムを右から乗り越して沢に下りると、水が流れピンクのリボンが目に付きだす。沢筋には特に危険なところはなく、適当に足場を選んで遡ってゆく。標高1850付近で数メートルの滝が前方を塞ぐ。滝の右手を登ると、すぐに踏跡に出合った。以降はこの踏跡を追えばよい。踏跡を見失うことはないが、草が付き出して薮化の前兆は現れている。ネマガリダケ刈払い部の先で黒岩山に向かう稜線に飛び出す。ここは鬼怒沼山北側最低鞍部で、リボンを見かけるので見逃すことはないであろう。とは言うものの04年7月3日にここを通ったときには気付かなかった。その後04年8月にノラさん(気ままなノラの山歩き)はここから下山している。
 今回は女夫渕温泉からここまで4時間(10分のロス除く)。前回のメモを調べてみると、女夫渕温泉〜加仁湯は林道を歩き鬼怒沼経由でこの鞍部まで4時間45分要した。加仁湯まで鬼怒川沿いの遊歩道を前回も辿っていれば、少なく見積もっても15分は短縮しているはず。大雑把だが、通常ルート(鬼怒沼経由)に比べて今回のルートは30分程度の時間短縮にしかならない。この程度の差ならどうする・・・登りの苦手な自分は往路は鬼怒沼経由を辿る方が労力も少ないし、展望も楽しめる。復路で下山に今回のルートは時間短縮に有用であろう。

4 鬼怒沼山北鞍部 − 黒岩山  踏跡は明瞭でリボン類が多い 風倒木に多少悩まされる程度で歩き易い鬼怒沼山北鞍部  前方は黒岩山へ  右はゴザ池沢へ
 黒岩山へは、04年7月にひとり山歩き157で報告しているので参照願う。踏跡は明瞭で、リボンやテープが多いので迷うことはないであろう。薮も高低差もなくて歩きやすいが、唯一の障害物は風倒木。
 鞍部から最初のピーク(2070P)に登るときに後方に鬼怒沼山三座とトンガリ帽子の物見山が確認できた。以降は針葉樹林の尾根の左手をトラバースしながら時計回りで2069ピーク、2055ピークを通過しながら進む。2055ピークの左手を越して鞍部の少し手前で、M大の青色標示板「小松湿原」を見る。ここが小松湿原口で、標示板の左下を見ると小さな沢に水場を見る。
 この先の鞍部からは、反時計周りで尾根の右手をトラバースするようになる。2043ピーク先の鞍部から登り始めると、小広場と小さな沢を見る。標示はないがここが黒岩清水で、水流は少ない。ここから更に20分ほど緩やかに登ると尾瀬分岐で「尾瀬5時間 奥鬼怒3時間10分」の標示板を見かける。北西に進む尾瀬への道と別れて、右(東)へ踏跡を辿ると、やがて北向きになり、踏跡も消えて賑やかに案内してくれたピンクリボンが見えなくなる。左手を見るとピンクリボンが目に付く。ここが黒岩山取付きとなる。
 薄い踏跡を追うと、10分ほどで県境尾根に達する。この間もリボンが案内してくれるので間違いようがない。尾根上にも踏跡は通じているが、多少はシャクナゲや針葉樹を踏みこさねばならない。尾根上を十数分歩くと、360度全展望の黒岩山の山頂に辿りつく。燧ケ岳、日光連山や帝釈山方面が展望できるのだが、今日は残念ながら曇り空で遠方は霞んでいて写真撮影はできなかった。山頂には三角点と達筆、山部3D、栃木の山紀行の山名板ともう一枚小さなものを見かける。

5 下山(黒沼田代・赤岩沢右岸尾根経由)  ネマガリダケと灌木の強烈な薮の連続 過去に経験した最高難度薮漕ぎ  近寄らないのが賢明
 ほぼ予定通りの時刻に山頂に達したことと、今日は思ったよりは涼しく体力の消耗が少ないので計画通り赤岩沢右岸尾根を下ることにした。問題は狭い黒沼田代が見つかるかどうかで、見つからなかったら退き返して鬼怒沼経由で戻ることにした。 
 黒岩山取付きまでは往路を辿り、そこからはコンパスを設定して山腹を下り始める。薮はなくて歩くには障害はないが目標物がないので、黒沼田代を捕らえられるか確信はない。樹木の隙間から偶然湿原の一部が見えたので、そちらへ向かうと奥行きが200mもない湿原で、ここを黒沼田代と断定黒沼田代する。500mほど東に位置する2000ピークにコンパスを設定して緩やかに下り始めるが一部に背丈を越すネマガリダケが現れるが、総じて薮は少ない。浅い鞍部から少しばかり登り返すと台地状の2000ピークに達した。
 掲示板でお馴染みの宇都宮さんの情報によると、この先は激薮が予想される。戻るか進むかしばし考える。地形図で見ると尾根筋は明瞭に確認できるのだが、尾根は狭くて低いので見通しが利かないと外しやすく苦労しそう。2000ピークまでは順調に下れたし、時間はタップリあるので先に進むことにした。下り始めると背丈をはるかに越すネマリダケ薮に突入して前方は全く見えない。「しまった!!」と後悔するも、もう後戻りはできない突撃あるのみ。大概の尾根は激薮があってもどこかで緩むことがあるのだが、この尾根は薮が緩むことがない。激薮が連続する点では過去に経験した薮漕ぎでは最高難度であろう。飯盛山と鬼面山の鞍部のネマガリダケが強烈だったが、同程度のネマガリダケが標高1650付近まで続き延々3時間もネマガリダケの薮の中を通過せざるを得なかった。3時間の内で頭が薮の上に出たのは少ない。
 尾根が狭くて樹木を避けると、尾根上に復帰するのに一苦労。コンパスを見ながら常に尾根上目指して方向修正の連続。急勾配が止む標高1750付近までは、2000ピークから約1.5時間で先ず先ずのペース。標高1750から標高1650付近までは勾配が緩み尾根筋が広く、ネマガリダケが深いだろうと予想はしてたが、予想以上(3m級のネマガリダケ)で暫くは思ったようには方向がとれずひとりでに南側に引きずられ常に方向修正の連続。再び尾根筋が狭くなり急勾配になりだした。宇都宮さんが黒沢から登ってきて退却したのがこのあたりで、標高1650付とマークしてエネルギー補給の小休止。100m下るのに1.5時間も要した。宇都宮さんは黒沢からここまで2.5時間で登っているので、2時間程度で下れそうで元気回復。
 標高1650付近からは灌木薮が混ざりだし、すぐにシャクナゲと針葉樹の薮に変わった。尾根が狭いので樹木を避けると復帰に手間取り苦労する。薮で尾根筋は見えないので、方向取りが難しい。宇都宮さんの情報どおりに大木の古株や赤ペンキが確認できて心強かった。標高1450付近からは方向を気にしながら薮の少ない山腹をドンドン下る。沢音も聞こえて足取りも軽く、というよりは勾配がきついのでブレーキが利かない。樹木の合間から黒沢の巨大ダムが見えたので方向を再修正して、黒沢にやっとの思いで下ることができた。ちょうどダムのバックウォーターがなくなった地点に下山できたのは幸いだった。
 黒沢を渉り黒沢林道目指して歩くと途中で踏跡に出合い、すぐ先で黒沢林道に辿りついた。黒沢林道は二三箇所で落石があったが、勾配はは緩やかで快適に歩くことができた。激薮を歩いたが下りだったこともあって、疲労感はない。激薮の尾根を歩いた至福感はなく、こんな薮尾根は歩くべきでないという意識の方が強かった。 
HOME
inserted by FC2 system