ひとり山歩き248 : 初めての単独テント泊に出かけてきました。当初は、足尾銅親水公園から松木川両岸尾根を周回する予定でしたが、重荷に負けて松木川北岸(中禅寺湖南岸)尾根の途中から西ノ湖側にエスケープしました。千手ケ浜付近でテント泊を経験し、翌日は阿世潟峠から足尾に下りました。重荷を担いでの周回計画はかなり無理筋でした。
初めての単独テント泊
足尾-大平山-黒檜岳-シゲト山-1928P-西ノ湖-千手ケ浜-中禅寺湖南岸遊歩道-阿世潟峠-足尾
2006年7月31日(月)〜8月1日(火) 曇り
1 行程
ルートマップ 
第1日 : 自宅(1:15) = 足尾銅親水公園(3:00/3:15) − 安蘇沢林道終点=尾根取付き(5:20/5:30) − 標高1805(7:40/7:50) − 大平山(8:55/9:10) − 黒檜岳(10:15/10:25) − 1919ピーク(11:10) − シゲト山(11:55/12:05) − 1928ピーク(13:15/13:30) − 涸沢出合(15:30) − 西ノ湖(西ケ浜)(16:00) − 中禅寺湖千手ケ浜(黒檜岳登山口)(17:30着、就寝19:00)
第2日 : 千手ケ浜(起床4:10、5:20発) − 中禅寺湖南岸遊歩道 − 阿世潟(9:05/9:20) − 阿世潟峠(9:50/9:55) − 長手沢・久蔵沢林道(廃道)終点(10:40) − 銅親水公園(12:40/12:55) = 自宅(14:55)

2 自宅 − 足尾銅親水公園
 初めての単独テント泊を計画していていたが、梅雨で二日続きの好天が得られず延び延びになっていた。7月30日に梅雨明け宣言が発せられたが、もう二三日様子を見てと思っていたが、いつまで待ってもきりがないと急遽出かけることにした。大慌てで60リットルザックに荷物を詰める。テント泊の単独行は初めてなので、何を持ってよいやら分からず余分なものまで詰めて、16kgと通常の日帰りに比べて倍以上の重量になってっしまった。
 コース設定は、過去に二回に分割して歩いたことのある足尾から松木川両岸尾根を周回(大平山・黒檜岳・シゲト山・三俣山・国境平(泊)・皇海山・鋸山・庚申山・中倉山)である。テント泊の荷物を担いでのコースとしてはかなり無理筋である。第二日目に国境平から松木川へのエスケープを念頭に入れて家を出た。足尾銅親水公園の温度は16℃で、暑すぎることはない。曇り空だが、二日間は雨にならないこと祈りながら出発の準備をする。

3 銅親水公園 − 大平山 − 黒檜岳  日帰りの倍以上の荷物で藪漕ぎは思った折はハード
 このコースはひとり山歩き154(松木渓谷から三俣山〜大平山周回)で04年6月18日に逆周りに歩いているので参照願う。
 地形図では安蘇沢林道は標高1200で切れているが、実際は更に西の標高点1356先まで伸びている。林道はよく管理され特に危険箇所はなくて、夜間でも歩くには支障がない。最初の久蔵沢林道分岐で左へ、標高1040付近の淀沢林道分岐では右へ、そして標高1150付近の安蘇沢林道の分岐では左へ進む。後は道成に進めばよい。標高1200を越す頃になると展望はよくなるのだが、今日は辛うじて中倉山〜オロ山辺りが窺える。明日はあの尾根を無事に下れればよいが、と念じながら林道を詰める。尾根先端の法面にネットがかぶせてあり、尾根上に反射板が見える所が、安蘇沢林道終点手前で大平山への尾根取付きになる。
 法面を攀じ登って藪漕ぎに備えて雨具を着用していると、いつの間に来たのかアンテナを持った人が熊の行動を探っていた松木川南岸尾根(名倉山〜オロ山稜線)  (1805直下から)。「熊が出ているので注意してください!」との声を聞いて尾根を登り始める。尾根筋は下部にネットを被せたカラマツ林で林床は低いミヤコザサ。鹿道を追うと歩きやすいが、急勾配になると鹿道は消えてしまうから不思議だ。標高1600位になるとカラマツのネットがなくなり、幾分樹木が疎らになり中倉山稜線が左手に窺えるようになる。ダケカンバ疎林になると登りは緩やかになり、前方に1805地点が見え出す。中倉山をしばし眺めて鋭気を養い登りに備える。勾配はきつくなりミヤコザサも胸丈になりこの尾根一番の難所となる。普通なら大した藪ではないのだが、今日は笹が濡れているうえ、荷物の重みで、悪戦苦闘してしまった。こんな所で梃子摺っているようでは先が思いやられる。30分ほど苦闘すると台地上の標高1805に達した。既に下半身はずぶぬれで、防水性能の落ちた雨具を通してズボンが幾分濡れてしまった。ズボンから伝わって靴下まで濡れてしまい不快感が高まる。
 1805からは幾分方向を変えて北北西に進むようになる。笹は膝ないし腰程度で特に難儀するようなことはなくなった。尾根は細くなり膝程度の笹薮を漕いで登ると、大平山に向かう主稜線に辿りついた。主稜線にたどり着いたら右に折れて山頂を目指した。ところがどういう訳か東北東に向かうべきなのに西南西と逆に進んでいるのに数分して気がついた。どうやら主稜線上の小さなコブに登るときに無意識に反対側から登り、右と思って逆に進んでしまった(最初のミスで15分ロス)。元に戻って10分で大平山山頂に達した。ガスが多く付近は霞んでいて、展望どころではない。山名板は数枚で特に変わりないようであった。
 先ずは北東へ小ピーク(1950)と1954ピークを越すと社山への登山道(道標あり)に出合う。この間は膝程度の笹原を進まねばならないが、倒木が多いので注意が必要。前回(昨年11月)にはテープ類が多いと感じたが、今日はよそ見をする余裕がないのか、あまり目に付かなかった。登山道を北進するが目印は多いので間違うことはない。道標と複数の山名板が賑やかな黒檜岳の東峰(一般にはここを山頂とする人が多い)に達した。自分はここから数分の西峰を黒檜岳山頂と思っているので、ここは素通り。踏跡を西に進むと山部プレート、達筆プレートに最近設置されたらしい支柱付きの山名板を見る。最近はこちらまで足を伸ばす人が増えたのであろうか。

4 黒檜岳 − シゲト山 − 1928P  注意力散漫でルートミス頻発  計画よりドンドン遅れだす・・・エスケープを決心
 この稜線は過去三回通過しているので参照願う。ひとり山歩き99(03.6.14)同154(04.6.18)同162(04.8.16)黒檜岳山頂
 黒檜岳から最初の目標・1919ピークまではほぼ西へ下って小さなコブ(1910)を越し鞍部から登り返すと右(北)から枝尾根をあわせて、少しばかり南西に進むと石柱を見る。ここが1916ピークである。黒檜岳からの下りはシャクナゲが多いので、尾根の右(北)をまき気味に進むとよい。軽装時に比べて10%の時間を計画したが実際にはプラス20%で徐々に歩行ペースが遅くなっているのに気付いているがどうしようもない。
 1919ピークから南に少しばかり下って南西に向きを変えて下るのだが、またしてもまっすぐに下ってしまう。復するのに数分のロス(第二のミス)。笹の細尾根を進むときにはザックに横に括り付けたアルミシートが小枝に引っかかり歩きづらい。藪漕ぎには、ザックの天蓋やアルミシートのような出っ張りは非常に好ましくないことを再認識させたれる。シゲト山の山頂部は尾根の平坦部にあるので山名板がないと通り過ぎてししまいそう。ここで小休止を取ってエネルギーを補給する。
 今日はどこまでいけるかの計算が始まる。そんなことを考えていたら、またしてもルートミスで北西への尾根を見逃して南西に下ってしまった(時間的には三四分だが、第三のミス)。笹の目立つ1928ピークに辿りついたときには、計画より2時間半も遅れてしまった。このまま進むと国境平に着くのは楽観的に見積もっても18時を過ぎてしまう。それどころか三俣山かその先のカマ北コルでテント泊となりそうだ。うーん、どうするか!? しばし唸りながら考える。
 @このまま先に進み、適当な所でテント泊、翌日は国境平から松木川にエスケープ。・・・水が乏しい。 A往路を引き返し途中でテント泊。翌日黒檜岳から千手ケ浜に下山。・・・水が乏しい。 B1928ピークから、北尾根経由でカクレ滝付近に下山。適当な所でテント泊。・・・一番楽だが、地形図を持っていない。10分ほど考えて出した結論はBの北尾根経由で、奥日光にエスケープとした。基本的には、どんな低い山でも地形図を持たずに歩かないことににしているが、日光稜線紀行のstarionさんがこの尾根を紹介している。紀行文を読んで大体が頭に入っている。危険箇所はなく、藪も少ないので問題なくエスケープ可能、と判断する。心がけることは@尾根が枝分かれしたら北東(西ノ湖方面)へと進む。A尾根の先端まで進み、途中で沢には絶対に降りない。

5 1928ピーク − 西ノ湖 − 千手ケ浜   無事にエスケープして初めてのテント泊を楽しむ
 カラマツを中心とした針葉樹林の北尾根は幅広で勾配もゆるく、枝が多少引っかかる程度で気分的にも体力的にも大部楽になった。100メートルも下るとカラマツが減ってシラビソが増える。林床のミヤコザサは踝程度で藪山という感じはしない。一時的にシラビソの幼木が増えたが、尾根の右手を歩くと低い笹で歩き易い。鞍部からほんの僅か登り返すと1800メートルの小ピークで相変わらず針葉樹と低いミヤコザサが続く。
 更に下り続け標高1650付近で広葉樹が主体となり、尾根は北東と北西に分かれる。ここは迷わず北東に進路をとる。1600付近に明瞭な踏跡があり、赤テープを見かけた。尾根の先端に下りるという考えをキープして踏跡は無視して尾根の中央を進む。標高1500付近からシャクナゲが繁茂していたが左右に避けて通る。カクレ滝方面に進むには尾根の先端で左(北西)に下りた方がよいが、容易な右(北東)側に下りた。下山地点は平坦で名称不明の涸沢に出合った。これで無事エスケープできた。後は水と適当なねぐらを探すだけだ。
 カクレ滝〜西ノ湖の道を探さないでも、この涸沢に沿って行けば西ノ湖に辿りつくのは間違いなし、と確信して北東に進む。付近一体はカラマツ林の平坦地で、何の障害もなく30分で西ノ湖(西ケ浜)に到着。今夜の幕場は千手ケ浜先の黒檜岳登山口付近と決めて、遊歩道を歩く。途中の柳沢川で4リットルの水をペットボットルに入れる。家から持参した残り2リットルの水は翌日の飲料用に別扱いとする。川の水は付近に鹿が多いので汚濁(無視小かもしれないが)を心配して、幕場で沸かして利用することにした。千1928P手ケ浜には数人が座って談笑していた(どこかの施設に宿泊?)。千手堂跡に入ると樹木で薄暗くなっていた。すぐ先の黒檜岳登山口に小高い平坦地を見つけて、宿営を急ぐ。
 ツェルト泊ができればテント泊は楽勝と、ツェルトを張り始めた。藪山での緊急ビバーク用に準備していた紐では樹間が広いので、役に立たずでツェルトを諦める。昨年末に購入して未使用のテント(パイネゴアライト、一人用)を張り、急いで夕食の支度にかかる。行動中にエネルギーは充分補給していたので、それ程の空腹感はない。残っている握り飯だけでは、炊事の練習にならないので、湯を沸かしカップヌードルと味噌汁を準備した。握り飯は食べやすいようにカップヌードルに混ぜて食べる。疲労しているときは、塩分の多いものがあると喉越しがよいようだ。アルファ米使用の混ぜご飯等は、水さえあればいつでも食べられるので、そのまま封を切らずに持ち帰る。容器が小さいので、翌日の飲料水を二度に分けて準備。付近は樹林の中で暗くなるのが早い!! 食事が終わって後始末を終えたときには19時前にもかかわらず暗くなってしまった。
 この頃になると、歌が浜方面から花火音が聞こえる。どうやら男体山登拝祭をやっているようだ。更に、付近で鹿が警戒音を発するようになった。WEBの紀行文によると国境平では鹿の鳴声がうるさかった、というのを見た記憶がある。今夜は悩まされるかな?? 起きていてもすることはない。テントに潜り込み、NHKのニュースを聞きながら横になる。ベッドは2mm厚の銀マット二枚折りに5mm厚の巻きマットでテント下の枯れ枝等の異物を感じなかった。緊急ビバーグ用に購入したシュラフ(150)でファスナー開で快適だった(朝4時にテント内の気温は23度)。荷物はすべて大きな透明ビニール袋に入れて、ザックと靴すべてをテント内に収納。それでも寝るスペースは充分確保できた。
 NHKニュースは途中までしか記憶していない。多分テントに入ったらバタンキューだったのだろう。夜中に時々目が覚めてラジオが断片的に聞こえた。疲れているせいもあり、快眠をむさぼり、翌朝3時過ぎに目を覚まし(家にいるときと同じ)暫くはラジオに耳を傾ける。

6 千手ケ浜 − 阿世潟 − 足尾  阿世潟峠から廃林道出合までは一部に不明瞭箇所がある
 4時のニュースを聞いてテント内で荷造りを開始。先ずはシュラフを袋に押し込むことから始めて、マット類を始末し、荷物をすべてテント外に持ち出す。4時半になっても樹林の中でまだ暗いのは計算違いだった。ヘッドランプをつけて湯を沸かし、昨晩と同じメニュー(普段から質より量重視だから、旨いものをなんていう考えは全くない)でカップヌードルと残りの握り飯を混ぜて食べる。今日の行動食(家から持参)はアンパン1個と大福2個が残っている。不足なら途中で混ぜご飯が充分残っている。水は飲料用に3リットル残す。朝食後、荷物をザックに詰めるのだが、透明のビニール袋に入っているので中味が見えて荷造りが容易。起床して1時間強で出発の用意が整った。初めてにしては手際よしとしよう。
 先ずは中禅寺湖南岸遊歩道を阿世潟まで歩く。01年9月にスカイライン入口から黒檜岳登山口まで歩いたことあり、そのときは阿世潟から長手沢林道終点付近登山口まで2時間30分で歩いたが、今日は重い荷物ということもあり、3時間45分も要した。南岸遊歩道は数メートルのアップダウンが多く、根の張り出しや小岩の露出等でかなりハードな歩きが要求される。一番困ったのは大枝が遊歩道にはみ出していることで、潜るのに難儀をする。途中の要所に奥日光に関する説明板があり楽しめる。三箇所ほど展望所があったが、この時期は葉が茂っていて展望は期待できない。大日崎そして上野島を越すと道筋は平坦になり歩きやすくなった。人の声が聞こえだす阿世潟であった。阿世潟峠を目指す4人グループが50メートルほど先を行く。先方もこちらに気付いたようだ。
 登山道をユックリ登ってゆくと、今年の2月10日社山へのスノーハイクで道筋が分からなくなってしまった倒木のゲートと木橋のところに着いた。左手の尾根の末端に土留めの丸太階段がある。前回はこれが雪で埋もれていたのだ。その先は丸太階段や安全柵等が設置してあり迷うことはない。30分で150メートルほと登ったところが阿世潟峠で、この先は足尾までは下るだけ。今日の山は越した、と安堵感がただよう。
 阿世潟峠から足尾に下る踏跡は大部分は明瞭だが、一部に崩壊地と沢の渡渉部に不明瞭な箇所があるので注意が必要。標高1280付近で沢が合流し左岸へ。次に標高1240位で右岸へ。右岸へ渡ると道筋が崩壊しているので注意が必要。更に標高1190位の砂防ダムの下で左岸に渡ると、長手沢林道(名称は不明)の終点である。この先は一部に崩壊している所もあるが、迷ったり危険な箇所はない。ただし廃林道には落石が多いので注意は必要。ステンレスのカーブミラーは輝きを残し、一般道のものより真新しい感じ。古い廃林道とはチグハグな感じ。
 途中に標高970位の長手沢右岸に「西利根遊歩道入口」なる小さな標識と踏跡を見た。WEBで検索してみたが不明だった。標高940の沈潜橋で手や顔を洗い、行動食の大福をほおばる。これで力をつけて一気に銅親水公園に戻る。

7 今後へのフィードバックと反省
@荷物は登山道歩きなのか藪漕ぎなのか目的に合わせて厳選すること。 A日帰りに比べて行程時間は充分に余裕をとること(今後更にデータを積み増す)。 B予想外のエスケープを考えて周辺の地形図を持参すること。 
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