ひとり山歩き195 : 萩平から小佐飛山〜長者岳を日帰りピストンしてきました。積雪は多からず少なからずで、ヤブは雪に隠れていました。晴天で気温も零℃程度で長時間歩くには最高のコンディションでした。緊張する場所は少なく、ルーファンは比較的容易で、好展望もあり充実した山行でした。
萩平から小佐飛山(1429.0)〜長者岳(1640.2)
2005年4月1日(金) 晴れ
1 行程
ルートマップ (地形図 : 日留賀岳、板室、塩原、関谷) 
自宅(1:10) = 萩平(3:00/3:10) − 登山口(3:25) − 案内板(4:00) − 尾根取付き(4:05) − 大岩(4:55) − 1110ピーク(5:10) − 1275ピーク(6:05) − 反射板(6:15) − 小佐飛山(6:50/7:20) − 1409ピーク(8:10) − 標高点1354(8:50) − 1453ピーク(9:40) − 長者岳(11:10/11:30) − 1453ピーク(12:30) − 標高点1354(13:00) − 1409ピーク(13:45/13:55) − 小佐飛山(14:40/14:50) − 反射板(15:15) − 1275ピーク(15:25) − 1110ピーク(16:15) − 大岩(16:25) − 尾根取付き点(16:55) − 案内板(17:00) − 登山口(小蛇尾川出合)(17:25) − 萩平(17:45/17:55) = 自宅(19:50)

2 自宅 − 萩平 
 昨年の4月1日に萩平から小佐飛山に登った時に、長者岳まで尾根を歩いてみたい、とその時の自分にとっては夢みたいなことを考えた。その後、9月1日に塩那道路から長者岳に登り、益々小佐飛山〜長者岳を歩きたいという願望が強まった。遠い夢の夢の話と思っていたが、Web情報を調べているうちに、うまく時期を選べば萩平から小佐飛山〜長者岳を日帰りピストンできる可能性があることを知った。時期が早すぎると積雪で歩行速度が遅くなる。反対に時期が遅すぎると雪に隠れていたヤブが姿を現し歩行の妨げになることが把握できた。本来ならば一泊でゆとりを持ってピストンするべきだが、自分にはその装備(緊急のビバーク対策程度はあるが)がなく、更にテントを張ったり仕舞ったり、食事の支度をしたり細細したことをできる性格ではない。早朝出勤(?)は全然苦にならず、自分のペースなら15時間程度の長時間歩行は何回も経験している。ここは時期を選んで日帰りピストンしかないと決断する。
 Web情報に基づき選んだ時期は4月1日前後である。幸い毎日が日曜日の自分には天気を選んで山へ行ける利点がある。天気予報を確認して選んだのが、奇しくも昨年の小佐飛山山行日と同じ4月1日である。若干の心配は今年は積雪量が多いことである。二・三回の挑戦で成功すればよい、と気軽に考えて早朝(深夜?)に家を出てカーナビに任せて萩平に向かった。萩平は二度目なので全然まごつくこともなく、大蛇尾川と小蛇尾川合流点の萩平駐車地に到着した。月明かりの下でスパッツと登山靴を着用して出発する。この時点で気温は5℃で暖かいので防寒着は着用せず。

3 萩平 − 小佐飛山  最初の2時間はヘッドランプ点灯 ヤブはなく、雪も締まっていて快調
 蛇尾川を暗闇で渡渉するのは避けて、駐車地の目前にある頭首工の鉄橋を渡る(立ち入り禁止、ゴメンナサイ)。足場の悪い右岸を少しばかり辿ると作業道に出合う。この道を辿りグレーチングの鉄橋を渡って小蛇尾川の左岸を3分ほど進むと右手に折り返すように踏跡がついている。ここが登山口で最初は戻るように斜面を登り、直ぐに小蛇尾川と大蛇尾川に挟まれた尾根上に出る。
 多少の凹凸はあるが明瞭な道を大蛇尾川側あるいは小蛇尾川側とジグザグに登って行く。標高740付近の分岐点に小蛇尾川上流は左を示す案内板を見て、道を左に進むと直ぐに尾根の左手(小蛇尾川側)に出る。案内板から5分程の所が標高点805の左にある尾根取付きで、ここから植林の中へ踏み込む。下生えはミヤコザサで多少の間伐材があるが、踏跡の有無にかかわらずドンドン北上する。やがて尾根筋が明瞭になり左端に踏跡が現れる。やや急だが暗くても問題なく登れる。10分程で植林から自然林になるが薄い踏跡は続く。踏跡から外れても尾根の左手へ寄ると踏跡に戻れるので、ヘッドランプの明りで全然問題なく登れた。キラキラリボンも結構付いている。昨年は登りは東側のジグザグルートを辿り、復路では今回登っているルートを辿ったが、このルートの方が単純明快で始めての人には馴染みやすいように考える。大岩(それ程大物ではない)に着いた頃にはランプも不要になり、斜面には残雪も認められるようになった小佐飛山山頂にて(左は今回、右は昨年)。(注:東側のジグザグルートを辿るとこの大岩を右から巻くように通過する)
 大岩の直ぐ先から残雪は尾根筋を除いては殆ど連続的にあった(昨年は1275ピークを過ぎてから連続的になった)。雑木の1110ピークにたどり着いたときには風も強く、汗もひいたので消耗を避けるために防寒着の上だけ着用した。右手の鴫内山稜線の南斜面は昨年は雪が残っていなかったが、今年はまだ真っ白である。今年は積雪量が多いことを改めて実感した。古いワカンの跡も残っているが、雪は締まっていて、サクサクと気持ちよく登れた。ブナが目立つ台地状の標高1230付近では気温は零下3℃で、締まった雪の上を気持ちよく歩く。多少のアップダウンを繰り返すと1275ピークでミヤコザサが少しばかり浮き出ていた。ここからは左手に弥太郎山から安戸山あたりが伺える。中間には八汐ダムも歩きながら確認できた。
 やがてネマガリダケの多い反射板だが今年は全く頭を出していない。左手は好展望で写真を二・三枚撮って先へ進む。尾根上には雪が所々消えるが全くヤブに邪魔されず快調に歩く。ブナに混ざってダケカンバが増えた尾根を気持ちよく歩くと前方に小佐飛山が見えだし、やがて高原山や日光の山々(太郎山を男体山と勘違いしやすい、男体山は女峰山の陰)を見ながら歩くと見覚えのある小佐飛山山頂に到着した。山頂には三角点が頭を出していたが、笹は未だ雪の下(昨年は三角点付近は笹が現れていた)に隠れていた。山部さんの山名板は行方不明だが、黒羽山の会のプレートは残っている。ザックを三脚代りに記念撮影して、長者岳への準備に入る。
 風は強く氷点下3度なので防寒着の下も着用し、雪の締まり具合からワカンでなく6本爪アイゼンを着用することにした。指先が悴んでアイゼンを取り付けるのに苦労した。

4 小佐飛山 − 長者岳  最深鞍部で痩せ尾根の雪庇をヒヤヒヤしながらトラバース その他は快調
 風が強く未経験の地吹雪になったらどうしようと、多少の躊躇もあったが地吹雪は新雪だから起きるもの(新雪歩きをしたことがないので推測)と勝手な解釈をして、念願の長者岳への尾根に踏み出した。ブナやリョウブの尾根を鞍部まで150メートルの急降下。下る途中では風が強かったが鞍部では風も弱まり気温も零℃まで上がった。寒くも暑くもなし歩くには一番楽なコンディションとなった。心配した風も弱まり、右50度に見えるピークは黒滝山(1754.1)でなく西村山(1775)などと考える余裕もできた。昨年の4月に一抹の不安を抱えながら大佐飛山へ向かう途中の西村山でアイゼンを取り付けたことを思い出す。ほどなく思ったより間単に1409ピークに到着した。稜線の延長線に長者岳が見える。明るいうち長者岳直下のスロープに登山口に戻るには退却のタイムリミットは12時と決めてきたので、ここで再確認して先に進む。
 1409ピークからは暫くは緩やかにアップダウン。ブナやリョウブにコメツガが混ざりだし、小枝が少しばかり煩い。万一に備えてゴアのシュラフカバー、フリースと下着等を持参したので普段使用している30リットルのデイバッグでは容量不足で、上部にプラス数リットルの袋のついたザックを背負ってきた。この上部の袋がヤブ歩きする際、枝に引っ掛り不快なことこの上なし。特に最近は柔軟性もなくなり身体を曲げたつもりだが、思ったほど曲がらず袋にひっかるのである。万一のことがあるので緊急用品を省くわけには行かず。この程度は我慢我慢!! 長者岳から高原山を望む広い1380ピークから最深鞍部に下る。この尾根筋の鞍部は全体に痩せていて、右手(北)の大蛇尾川側が切れ落ちているが、不安を感じるほどではい。ところが鞍部の標高点1354を過ぎると痩せ尾根の雪庇の幅が狭く部分的にナイフエッジのようになっている。右側は切れ落ちていて通過不可能。左手(南)斜面も急傾斜で、一番苦手な場所に出合ってしまった。高所恐怖症の気があるので雪庇の上の上は脚が震えて歩けないだろう。アイゼンを効かしながら南斜面を何とかトラバースした。難所を通過するとまた余裕ができて右に弥太郎山付近、高原山と女峰山を楽しみながらの登りとなる。登りになる長者岳から大佐飛山の南斜面を望むと再びブナ、ダケカンバの疎林となりヤブなしで安心して歩いていると、日当たりの良い所では踏み抜きが増えだした。雪下でネマガリダケの周りが気温上昇で融け出しているのだ。登りきると1453ピークで長者岳は目前に迫っている。
 残り200メートルほどの登りだから1時間もすれば長者岳の山頂と考えたが、勾配がゆるくなりなかなか届かない。しかし、ここまで来れば制限時間の12時には余裕持ってクリアできるので焦りはない。ダケカンバやコメツガ疎林のスロープを高原山や日光連山、反対側に大佐飛山付近を見ながらのひとり旅を楽しむ。やがて左下に塩那道路が急反転する1524ピークのアンテナ塔が見え、前方には塩那道路沿いの尾根筋も見え出した。進行方向が北東から西になり、なだらかな広い尾根を気持ちよく登りきると、念願の長者岳山頂にたどり着いた。昨年の9月1日に登った時は、笹薮ばかりが目に付いたが、全く別世界の感じがする。高原山方面の展望が素晴らしい。日光連山は樹木に一部邪魔される。樹間には大佐飛山の南斜面を間近にする。タイムリミットは充分クリアしたが、ノンビリしている閑はない。急いで昼食を摂って帰り支度にかかる。

5 下山  気温が上がり踏み抜きが増える
 明るいうちに萩平に戻れると確信しつつ往路を戻る。最深鞍部(標高点1354付近)の南斜面をトラバースする際、雪が緩んでいるのでアイゼンは効果がない。体重をかけると足元が30cm位スリップするので、足元が落ち着くのを待って体重を移すので往路よりは通過に時間はかかったが、緊張はしたが不思議に恐怖心は起きなかった。
 復路は気温が若干高まっている(日蔭で零℃、日向で3℃位)ので往路よりは踏み抜きが多かったが我慢できる範囲。最後の難関は1409ピークから130メートル下って小佐飛山への150メートルの登りで、大部時間を要したかに感じた。ラップタイムを見ると往路と殆ど変わりなかった。
 小佐飛山からは下るだけで、特に問題となるようなところはない。1110ピーク手前でアイゼンを外した。大岩からは往路をそのまま戻ったが、勾配が急なので疲労した脚には苦痛だった。最後に植林を下りきって尾根取付き点で作業道に出合った時にはホットした。脚がかなり疲労しているので、転倒しないようゆっくり戻る。蛇尾川の浅瀬を渡渉しようとしたが、下流に釣り人がいたので、再び頭首工の鉄橋を渡って萩平駐車地に戻った。   
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