ひとり山歩き144 : 男鹿山塊の百村山・黒滝山・鴫内山を周回してきました。百村山から黒滝山はヤブ払いがなされているので、特別に困難はありません。黒滝山から鴫内山への稜線はチシマザサの難所です。この時期は稜線の半分くらいは残雪下にありますが、かなりのヤブこぎを強いられました。久しぶりに山歩きを堪能できました。
百村山(1085)〜黒滝山(1754)〜鴫内山(1413)の周回
2004年4月12日(月) 晴れ
1 行程
自宅(3:00) = 巻川橋(4:55/5:30) − 木ノ俣巻川林道出合(6:10) − 百村山(6:45/6:55) − 水準1257(三石山)(7:30) − 双子山(8:25/8:35) − 山藤山(9:20/9:25) − 河下山(10:10/10:15) − 黒滝山(10:30/11:00) − 1723ピーク(11:55) − 1650ピーク(12:25/12:30) − 1491ピーク(13:20/13:30) − 鴫内山(14:05/14:15) − 鉄塔22号(東電巡視路)(15:40/15:45) − 巻川橋(16:25/16:35) = 自宅(18:25)
2 自宅 − 巻川橋(百村本田から巻川林道へ)
 栃木の山273の山部さんが、黒滝山と鴫内山へ昨年登ったのを知り、いつかは登ってみたいと考えていた。その後、高原山探訪のYoshiさんが鴫内山〜黒滝山〜百村山と縦走しているのを知った。それ以来、この三山を日帰りで周回してみたいと考えていた。黒滝山と鴫内山の稜線はチシマザサが多いので、残雪のある今がチャンスと決行することにした。
 雪庇歩きと本格的なチシマザサのヤブこぎは経験がないので、万一を考慮しビバークの備えもして家を出た。少しでも時間を稼ぐために百村本田から巻川林道に入り、登山口は巻川橋付近の東電の巡視路を利用することにした。これだと鴫内山からの下山点のすぐ近くで、大好きな完全周回コースとなる。
 カーナビに任せて百村本田の光徳寺を目指す。光徳寺の100m位手前(南)の巻川林道に乗り入れる。約2kmで右側に送電線18号と19号への巡視路口を見て、更に400m先で巻川橋を渡り、広場に車を駐めた。
3 巻川橋 − 百村山  東電巡視路を登る 急勾配の尾根だが障害物はない
 車から見た巡視路口に400m程戻る。18号巡視路に進むと18号鉄塔あたりから尾根を進むことになる。この尾根は急勾配で踏跡は明瞭。鉄塔から十数分で木の俣巻川林道に出合う。大佐飛山を目指す人はここを登山口にしたら時間短縮が計れる。百村山と鴫内山付近の観察をして、ブラブラしている金属階段に取り付く。
 階段から10分あまりで稜線に達する。右(東)に鉄塔を見て反対の百村山を目指す。下生がミヤコザサの尾根を緩やかに登る。ダケカンバが目に付きだすと、すぐに百村山山頂に達する。山頂には三角点と山部さんの山名板ともう一枚が目についた。 
4 百村山ー 黒滝山  慣れない雪庇歩きに戸惑うが、時々那須岳方面の展望が得られる
 百村山を過ぎるとミヤコザサの道となり、残雪が断続的に現れる。雪の下には笹が隠れているようである。雪のないところは笹がかなり立っている。「平成椈(ブナ)」と名付けられた大木の前を通過する頃には笹は胸の高さになってきた。それでも道筋は刈り込んであるので歩行には全く支障がない。道筋に数株のカタクリを見た。南南西に雪庇(黒滝山の東鞍部付近)ふもとの百村方面が見えると、平坦部に達する。ここが三石山と呼ばれる水準点1257付近である。北東に大佐飛山方面の稜線が望める。
 三石山を過ぎると、残雪が連続的になってくる。途中で黒滝山3kの小さな標識を見るあたりは、残雪が切れて笹道が続いていた。右に白い那須岳と流石山から大倉山あたりの稜線を見ながらの歩きは疲れを和らげてくれる。双子山直下から残雪は連続的になり、ダケカンバ疎林の間からは南に鴫内山への稜線が眼に入る。少しでも情報を入れようと観察するのだが、なだらかな稜線からは残雪とヤブまでは把握できない。おとなしそうに見えるのが曲者、楽観は禁物と気持ちを引き締めながら登りつめると、平坦な笹原の双子山(サル山)山頂に達した。前方に山藤山と黒滝山を眺めながら、エネルギー補給する。
 鞍部で黒滝山2Kの標示を見て緩やかな登りとなる。残雪は連続に近くなり、周りは笹が目立つ。標高1450付近で那須岳方面の展望が開ける。流石山から大倉山の白い稜線に見と黒滝山頂  (左上は山型の山名板)れる。先が長いのでゆっくりもできない。雑木疎林の急勾配の残雪の踏跡を追うが、慣れないこともあって時々スリップしては手をつく。思い出したようにキックスッテプで登るが、すぐに忘れてスリップを繰り返す。軽アイゼンは持っているが着ける気にはならない。このあたりはロープが張ってあるが雪の下で役に立たない。多少苦労したが、ダケカンバ疎林の山藤山にやっと着いた。時間的には遅れたが、余裕は充分にあるので焦りはない。山頂から大佐飛山の稜線と那須岳周辺の山が枝越しに眺められる。
 黒滝山に向かって進むと山頂の外れに青色の山名板を見つける。20年も前に取り付けたものだが、S59.8MWVとはっきり読み取れる、。何箇所かでこの青い山名板を今日は見た。これがHPの報告にちょくちょく出てくる明治大学ワンダーフォーゲル部の山名板と知る。残雪は連続となって、初めての雪庇歩きを経験する。左側が開けて鴫内山への稜線が眺められるのはいいのだが、慣れない雪庇に例の高所恐怖症で足がすくむ。歩いているうちに恐怖症も薄れ歩き方にもなれる。那須岳を眺める余裕もでてきた。疲れて立ち止まり振り返ると、山藤山と双子山が識別できた。コメツガが目立つとすぐに河下山の小ピークに辿り付く。黒滝山はもうすぐ先に見える。
 黒滝山直下では、雪を踏みしめる音を楽し見ながら登れるほどの余裕も出てきた。黒滝の頂上はコメツガ林の中で南側が開けているだけ。三角点と多種多様な山名板が賑わす。山の形をした板と明治大学の青いブリキ板が目に付く。当然山部さんのプレートもあった。 
5 黒滝山 − 鴫内山  残雪の踏み抜きとチシマザサのヤブこぎの連続
 黒滝山から鴫内山への稜線に乗るには、大佐飛山ルートの西村山(北西の1775P)を目指してコメツガ林を緩やかに下る。足跡を追うのだが、何度も足を踏み抜く。ヤブは残雪に隠れていて歩行の支障にはならない。鞍部近くになると左手に稜線が見え出した。Yoshiさんは一昨日この先へ進み大佐飛山を日帰りしたのだ、と羨ましく思いながら、大佐飛山ルートから分かれて左(西)の稜線を目指す。
 鴫内山への稜線に乗ると、雪は結構引き締まっていて黒滝山からの下りに比べれば踏み抜き少ない。足跡の全くないところを歩くのも気持ちがよいものだ、とこの辺りでは余裕綽々。今日のために購入したワカンは使わないで済みそうだ。ところが1720mの小ピークを越す頃になると踏み抜きが増えだす。このあたりは残雪の下に笹と石楠花が隠れているのだ。踏み抜きに堪らず、石楠花のヤブに逃げたり、残雪歩きを繰り返しているうちに1723ピークに辿り付いた。チシマザサ (1491ピーク付近)
 踏み抜きに堪らずワカンを着けようと考えたが、1723ピークからの下りは笹薮でワカンをつけずに笹に掴まって下る。また残雪で踏み抜きで労力を使う。残雪が所々で切れてヤブこぎになるので、ワカンの脱着はわずらしい。折角買ったワカンは試すことができなかった。踏み抜いた勢いで足が雪に隠れている枝に捉まり抜けなくなってしまった。長い時間(多分20秒位だあろうが、とにかく長く感じた)もがいているうちにやっと足が抜けた。このときは多少焦りを感じた。鞍部はダケカンバ疎林で残雪の両サイドには笹薮が茂っている。雪がなければこれを掻き分けて進まねばなない。踏み抜きに苦労はするが、雪の有り難味を知る。踏み抜きに疲れたらヤブに逃げるを繰り返しながら1650ピークに登りきる。このピークはシラビソとダケカンバの樹林の中でチシマザサが雪の下に隠れている。北西に日留賀岳から男鹿岳の稜線を目にする。ここにも青色のMWVの山名板を見つける。
 1650ピークからの下りになると残雪は少なく断続的になる。そうすると踏み抜きはなくなったが、チシマザサのヤブこぎに労力を使うようになった。まだチシマザサは下に向かって寝ているので、それ程の労力は必要としない。悩まされたことが二つある。一つは寝ている笹を踏むと足首に絡みつき、それを振り鴫内山頂  (右上は中央の山名板)解くのに労力を要した。無理に力を入れて脛に擦過傷をつけてしまう。もう一つは寝ている笹に足が載るとすべることである。何度尻餅をついたか数え切れない。何度も繰り返すので、臀部は下着まで濡れてしまった。それでも登りの労力(小佐飛山で多少経験)に比べれば楽なものだ。鞍部付近で八汐ダムと小佐飛山らしい山が瞬時望めた。鞍部からの登りになると殆ど雪はなくなり、笹、石楠花とツツジのヤブこぎとなる。薄い踏跡も見えてヤブこぎの労力は大部小さくなった。左に那須岳の稜線を見ながら笹薮をほんの僅か登ると1491ピークに達した。このピークの笹薮は背の高さだが密度は1650ピークの下りに比べればどうということはない。ヤブこぎの峠は越したようだ。
 1491ピークの直下では背丈を越えたチシマザサも段々低くなり脛くらいまでになる。地形図では1491ピークから鴫内山にかけては下る一方である。地形図に表れない登りになると笹の背丈は胸から顔にまで達するようになった。そうなると、鴫内山の三角点と山名板を見過ごす心配が出てきた。キョロキョロしながら進むと、ラッキーにもダケカンバに取り付けられた例の青色プレートが目に入った。傍に行ってみると山部さんの山名板もあり、目の前の1u程度の空地に三角点を見つけ、鴫内山に着いたことを確認できた。これで念願の百村山・黒滝山・鴫内山の周回もほぼ達成と思わず万歳!山頂(というよりは水準点部)からはヤブと樹木の間から百村山と黒滝山がかすかに認められる程度の展望しかない。 
6 下山  ヤブも少ないし踏跡は明瞭 鴫内山直下だけルート分かりづらい
 22号鉄塔目指して下る尾根を見つけねばならない。少し下り左手の針葉樹林へ入ればよい、と事前に情報を得ていたので、注意しながら緩やかに南東へ下ってゆく。5分程で左に針葉樹林を見た。念のためにあたりを探鴫内山(中央部)と下山の尾根(左側:左上から右下に下る)   (木の俣巻川林道出合から)すと、テープ標示があり針葉樹林に薄い踏跡が誘ってくれる。事前に教わった地点はここと判断し、針葉樹林に突入する。困ったことに斜面は残雪で踏跡は消えてしまった。方向を間違えなければ尾根に乗るはずと、コンパスを設定して滑らないよう注意しながら北東に下る。
 100mほど下ると雑木林となり尾根も明瞭となる。更に赤テープも見つけ一安心。この尾根はツツジとミヤコザサのヤブだが、今まで歩いてきた所に比べれば天国を歩いているような感じ。おまけに那須岳や百村山から鴫内山の稜線も眺められる。テープも思ったよりは多く、それを追ってゆく。下りにしては速度が上がらないのは、残雪歩きとヤブこぎの疲労のせいで仕方ない。
 やがて標高1150m以下になると向きが東に変わる。このあたりは踏跡もありテープ標示もあるので迷うことはない。鉄塔を右手に見て今まで下ってきた尾根からそれて、踏跡を追って鉄塔に向かう。22号鉄塔(名称はないが往路の19号鉄塔から逆算)からは那須岳が伺える。付近にはカタクリが花を開いていた。
 22号鉄塔からは東電の巡視路を下る。よく整備された道でヤブの心配もなく気持ちよく下れる。途中で21号鉄塔の脇を通り、都合三回網戸を潜り抜ける。すぐ先の20号鉄塔で作業道に出合い、あとは道なりに進むとすぐに巻川林道に出合った。そこから僅かで巻川橋袂の駐車地に無事戻れた。  
7 あとがき
 今日のルートをミスなく周回できたのは、ノラさんとYoshiさんの的確な助言に負うところ大である。コース取りも途中の様子も情報どおりであり、先に不安を感じることは全くなかった。雪庇歩きとか本格的なチシマザサのヤブこぎ等初めての経験だったが、無事乗り切った喜びと自信は言葉に表せないほどおおきい。
 最後にノラさんとYoshiさんにお礼申しあげます。有り難うございました。
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